【セックス＆マジック】 魔法の発達した未開拓惑星に到着しました！スキル【魅了】で女の子たちをくわしく調査♡します

第三章「魔法学園の劣等生 魔法技術大会編」

第142.5話 005「暴走 ⑤」

　ダクール学園長とタニアが対峙する。
　二人の間には四歩分の距離しかない――タニアにはあまりにも近く、ダクール学園長にはあまりにも遠い距離だ。

「お前は……何も考えていないだけの魔法オタクだと思っていたんだがな」

　皮肉げに一言。
　だがタニアは平然としている。
　
「ボクが何も考えていない……は酷いんだな。ボクはいつでも世界の平和の為に頑張っているんだよ」

「馬鹿な……これのどこが平和だ！」

　サラクニークルスが叫んだ。
　彼女の魔法で周囲は完全に混乱の境地に達している。

「もっと大きな視野で物事を見ようよお姫様」

　タニアがダクール学園長を無視してサラクニークルスを睨みつける。隙だらけだったがそれがかえって恐ろしい。
　その時だった。

　ガシン！

　空気が揺れた。衝撃は窓へと伝わりガラスが外に向かって砕け散る。
　常人であれば肉片になっているだろう。

「いや……だから、平和的な解決をしようよ」

　魔獣人化したバージル卿――LV125の拳をタニアは片手で平然と受け流す。

「バージル卿の攻撃を――！」

　周囲がざわめく。
　タニアはバージル卿の渾身の一撃を片手で弾いたのだ。

「誰もボクを止められないよ……一人を除いてはね」

「お前に勝てる程のヤツとは……？」

　冷や汗を流しながらバージル卿。すでに力量差は明確。勝敗は決していた。　
　バージル卿は己の敗北を悟った。

「ふふん。知りたいかい？」

　タニアはバージル卿に攻撃しようとはせず――それどころかむしろ聞いてくれといわんばかりに周囲を見渡す。

「ボクは求めているのさ！　世界を救うに足る人物の登場を！」

「そんなヤツの登場を待つ必要などないだろう。お前が世界を救えばいい」

　ダクール学園長がタニアを睨みつける。
　彼女の気分次第でこの場にいる全員が一瞬にして命を落とすだろう。彼は己の力の無さを痛感していた。

「ボクじゃ役不足だよ」

　とても残念そうにタニアは肩を落とした。

「残念ながら……ボクは……じゃないから無理だ」

　タニアの声は小さく。何を呟いたのかは誰にも聞こえなかった。

「お前は……何を求めている」

「破滅に対抗する力……何ものにも屈しない強き者さ！」

　タニアは瞳をキラキラと三ながら叫んだ。まるで夢見る少女だ。

「そんな者が……この世界にいるとでも？」

　そんな英雄的な者がいるのであれば、人魔大戦など起こるはずもない。平和を望むというのであればそもそも戦争など起こさなければいいのだ。　　

「価値観の相違だね」

「価値観……だと？」

　ダクール学園長が眉をひそめた。

「どこかの世界の言葉に……人の命は星よりも重い……なんて言葉があるんだよ」

「ふん。何を言う！　そんな考えが広がれば世界中が不満で溢れかえるぞ」

　犯罪者と一般人、老人と子供……数え上げればきりがない。

「まあね。ボク的にはどっちでもいいんだけどさ」

　タニアは部屋にいる者達を値踏みするように見渡す。その視線がある一点で止まった。

「命にはね……優先順位があるんだよ」

　タニアはアメリアを指差した。

「アメリア先生……残念だけどあなたには犠牲になってもらいます」

　それは明らかな死刑宣告だった。