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第三章「魔法学園の劣等生 魔法技術大会編」

 第142.5話 001「暴走 ①」

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 火炎演武(フイアンマ)をアルシアータ国の第三皇女、サラクニークルス・ディ・アルシアータはアメリアと共に観戦していた。
 その隣には、各学園の学園長、領主と国府付の魔法使い、研究者などがそれぞれに観戦している。
 来賓の部屋には巨大な白い石板が設置され光魔法で競技会場の情景が映し出されている。

「さて……今年こそはクリアする者が出ると信じているぞ」

 サラクニークルスは満面の笑みでソファーに腰掛けている。もちろん隣にはアメリアがいた。彼女の腕にしがみつき姫様はご機嫌だった。

「長年クリアした者の現れなかったこの火炎演武(フイアンマ)ですが、我が学園がクリアして見せましょうぞ」

 ユーク魔法学園のドメイス学園長は竜人族――赤竜族だ。彼女は赤い髪と赤い一本の角、鋭く赤い瞳が特徴的だった。
 ユーク魔法学園の選手はソドムとゴモラの双人族だった。

「へぇ……双人族か……久しく見かけなかったわね」

「知っておるのか?」

 姫の言葉にアメリアは頷く。

「魔法力に関してはエルフよりも上よ。でも、彼らは体が弱いから……」

「なにか問題でもあるのか?」

「そもそもが森の奥の集落で暮らすおとなしい種族なの……空気や水が汚れているだけでも身体を壊してしまうのよ」

 浄化の魔法を使えば生活する分にはなんとかなるが、それを常時発動させ続けるというには無理があった。

「結果として、余程のことでもない限り外界には出てこないはずなんだけど……」

 アメリアはドメイス学園長を見る。

「何だ? 私が無理やり連れてきたとでも言うつもりか?」

「いえ、そんなつもりはないわ。ただ、珍しいと思ってね」

「ふん。双人族の族長が知り合いでの……何年か前に村のことで相談に来た時に一人でいいからよこせと言っただけのこと」

「それだけ?」

 たたみかけるように質問するとドメイス学園長はバツが悪そうにそっぽを向いた。

「もし誰も来なかったら私が直々にスカウトに行ってやろうと言ったらえらく慌てられてな」

 おかしそうにクククと笑う。

「一ヶ月もしないうちにあの二人を寄越してくれたわ」

 それはそうだろう。赤竜族といえば属性は火。その気になれば森を焼き尽くすことができる。そんな竜人族がわざわざ「お願い」に来るのだ。これは明らかな脅しだった。

「あの二人は素質がある」

「そのようだな」

 ドメイス学園長の言葉にサラクニークルスは頷いた。彼女の目から見ても双人族の二人には大きな魔法力を感じることができた。

「双人族は二人で一つの魂を共有していると言われています。それ故に片割れが死ぬともう一人もしばらくの後命を落としてしまうとか……」

「そうなのか……それで……二人一緒に出場しているのだな」

 サラクニークルスは納得したように頷いた。
 やがて競技が始まる。
 二人の詠唱に合わせて魔力の渦が練り上がっていく。
 巨大な炎の渦が上がった。

「何という火力だ!」

 炎が鉄の板を包み込んだ。風魔法と火魔法の合成魔法が炸裂する。
 みるみる間に鉄が溶け出した。
 
「双人族……奴らは今後の未来を担う大きな力になるやも知れんぞ」

 ドメイス学園長は嬉しそうに呟いた。
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