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第二章「魔法学園の劣等生 入学編」
第90話「魔術技術大会説明 ②」
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「さて、次の氷結演武ですけど……これは私が説明しましよう」
メリッタ先生が全員を見渡す。といってもほとんどオレの周りにいるのですが。
マヤはメリッタ先生のひざに座り、アープルはシスティーナのひざに座っている。ミーシャとアンナが両後ろに控えている。
オレの部屋は自慢ではないがかなり広い。なのに……なのに……だ。オレの周りだけ人口密度がやけに高いのはなぜだ。
「説明にもある通り、会場は湖となります」
氷結演武(ペークシス)。
ならば、水属性の魔法を使える者が必要となる。まあ、いなくても風魔法で何とかなりそうなのだが。
「各種目につき各学園五名までの参加が認められていますので、水魔法の選手は既にこちらで確保しています」
「オレが……出ることも可能なのか?」
取り合えず聞いてみる。
メリッタ先生はメモを取りながら頷いてくれた。
「ノゾミさんは……風魔法ですね。大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。秘策はある」
自信満々のオレの答えにメリッタ先生は満足したようだった。
メリッタ先生は羊皮紙にオレの名前を書き込んでいく。
しかし、湖が競技会場とは生態系を壊したりはしないのだろうか。聞いてみるとこの魔術競技大会は毎年開催されておりその心配はないとの事だった。
というか、毎年やってるんだこの大会。
ちなみに、学園祭では主に先生方の研究発表が主だということだった。生徒も参加するのだが実際の話、先生の補助的なことしかできない。
生徒の実力を推し量るためには魔術競技大会がうってつけということだった。
「でも、湖をただ凍らせるだけなんて単純な競技ですね」
ミーシャがオレの耳元でささやく。気のせいか唇が耳たぶに触れています。
ねえ、ささやく意味ある?
「そうですね。これだけだと何をさせたいのかさっぱりです」
アンナもほほをすり寄せてきた。
ねぇ、ほおずりする意味ある?
ことあるごとに密着するのはやめてもらいたい。
オレの膝の上のアメリアお嬢ちゃまが大変ご立腹です。
もう、可愛いんだからこのお子様は!
とりあえず、話しを進めよう。
「魔術競技大会は、そもそも人魔大戦に向けたの戦闘訓練及び軍事力強化が目的で創立された大会だ」
システィーナが背中に胸を押し当ててきた。ねぇ、胸を押し当てる……もういい。
「競技の他にも目的はあるってことね」
ミーシャも納得したようだ。
各競技が魔法属性に特化した協議内容だということも納得できた。
「じゃあ、この火炎演武ってのは?」
「これは単純明快。鉄の板に穴をあける簡単なもので、火力を競うものですね」
事も無げにメリッタ先生は言うが、鉄の板なんてどれくらいの厚みがあるんだ?
「そうですね……これくらいかな……」
メリッタ先生が手で幅を作る。約三〇cm程……って、できるかそんなもん!
火魔法でそれだけの高温を発生させるとか……ないわー!
鉄の融解温度は一五三八度、これを魔法の力だけで溶かせるものなのか。
聞けば火炎演武はどれだけ派手な魔法かが評価対象となっているらしい。実際に穴をあけることができた魔法使いは今までの大会の中で一人もいないとのことだった。
そうだろう。地球の科学力でも大きな鉄の板を溶かすのにはかなりのエネルギーを必要とする。
「この中で火魔法を使えるのは?」
「私です!」
ミーシャが手を上げる。ミーシャの胸がオレの頭に当たっている気がするのだが……気のせいだ。
「それでは、火炎演武にはミーシャさんですね」
「大丈夫なのか?」
見た目の派手さが大事なのであればそれなりに対策はとれるだろう。
「はい。もちろんノゾミも手伝ってくれますよね」
ミーシャがオレの手をとる。
「大丈夫だ。安心しろ」
ミーシャは「やったぁ!」と大喜びだ。
「じゃあ、お礼は……」
ミーシャにはお世話になっている。お礼などもらえるはずがない。オレは紳士なのだ。見くびってもらっては困る。
「身体でお支払いしますね♡」
素晴らしい。是非そうしてもらいたい。やはり労働に対してはそれなりに対価が必要となるのだ。それは資本主義社会において大切なことであり、労働に対する等しい対価は信頼の証でもある。なんなら、今すぐにでもお支払いをして欲しいくらいだ。
「できれば前払いで!」
オレの言葉にミーシャは「じゃあ、これから毎晩でも!」と言質を取ったとばかりに発言し、周りから「ミーシャだけズルい」と非難されていた。
なんだかんだでオレと一緒にいたいみんなの気持ちが伝わってくる。
「まあ、その辺はみんなで決めてください」
メリッタ先生はいたってクールだ。
彼女とはこれから大会まで何度も顔を合わせることになる。その都度【実験】と称して様々な要求をしてくるはずだ。もちろんオレは協力を惜しまない。オレの命を賭して彼女の実験を手伝うつもりだ。邪な気持ちなどない。純粋にこの科学の進歩に貢献できることにオレは使命感を持って対応しているだけなのだ!
メリッタ先生は選手を決めているというよりも、各選手の特徴を再確認しているようだった。
単純な話、こんなことをしなくとも生徒のリストと簡単な面接で選手は決まられるはずだ。
それをしないのは何かしらの理由があるからなのか?
何かしらかの考えがあるのだろう。しばらくは様子を見よう。
結果、選手決めは次の通りとなった。
――――――――――
・風魔法の部 飛行レース(フリーゲン)
マヤ
・水魔法の部 氷結演武(ペークシス)
メリッタ先生推薦の選手
ノゾミ
・火魔法の部 火炎演武(フイアンマ)
ミーシャ
・土魔法の部 障壁構築(テララ)
アープル
・無差別 対人戦闘(コンバーテ)
ノゾミ・アメリア・アンナ・システィーナ・ミーシャ
・無差別 魔獣戦闘(ヤークト)
ノゾミ・アイザック・アンナ・システィーナ・ミーシャ
――――――――――
「このアイザックって誰だ?」
初めて聞く名だ。
「入学式当日にノゾミ様に決闘を申し込んだ愚か者です」
憎々し気にアンナがうめいた。そんな名前だったか?
「そうです。私とお兄さんとの出会いのきっかけを作って下さったキューピッドですわ」
アープルがほほを朱に染める。
人それぞれに受け取り方はあるようだ。
これで、選手決めは終わった。
後は、大会に向けて準備をしていくだけだ。
「各競技の残りの選手はこちらで声掛けしていくよ」
メリッタは羊皮紙をまとめ鞄にしまった。
「では……大会までに約一カ月くらいあるから準備は念入りに行うようにして下さいね」
それぞれが頷く。
大会まで約一カ月……長いようで短い準備期間だ。
メリッタ先生が全員を見渡す。といってもほとんどオレの周りにいるのですが。
マヤはメリッタ先生のひざに座り、アープルはシスティーナのひざに座っている。ミーシャとアンナが両後ろに控えている。
オレの部屋は自慢ではないがかなり広い。なのに……なのに……だ。オレの周りだけ人口密度がやけに高いのはなぜだ。
「説明にもある通り、会場は湖となります」
氷結演武(ペークシス)。
ならば、水属性の魔法を使える者が必要となる。まあ、いなくても風魔法で何とかなりそうなのだが。
「各種目につき各学園五名までの参加が認められていますので、水魔法の選手は既にこちらで確保しています」
「オレが……出ることも可能なのか?」
取り合えず聞いてみる。
メリッタ先生はメモを取りながら頷いてくれた。
「ノゾミさんは……風魔法ですね。大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。秘策はある」
自信満々のオレの答えにメリッタ先生は満足したようだった。
メリッタ先生は羊皮紙にオレの名前を書き込んでいく。
しかし、湖が競技会場とは生態系を壊したりはしないのだろうか。聞いてみるとこの魔術競技大会は毎年開催されておりその心配はないとの事だった。
というか、毎年やってるんだこの大会。
ちなみに、学園祭では主に先生方の研究発表が主だということだった。生徒も参加するのだが実際の話、先生の補助的なことしかできない。
生徒の実力を推し量るためには魔術競技大会がうってつけということだった。
「でも、湖をただ凍らせるだけなんて単純な競技ですね」
ミーシャがオレの耳元でささやく。気のせいか唇が耳たぶに触れています。
ねえ、ささやく意味ある?
「そうですね。これだけだと何をさせたいのかさっぱりです」
アンナもほほをすり寄せてきた。
ねぇ、ほおずりする意味ある?
ことあるごとに密着するのはやめてもらいたい。
オレの膝の上のアメリアお嬢ちゃまが大変ご立腹です。
もう、可愛いんだからこのお子様は!
とりあえず、話しを進めよう。
「魔術競技大会は、そもそも人魔大戦に向けたの戦闘訓練及び軍事力強化が目的で創立された大会だ」
システィーナが背中に胸を押し当ててきた。ねぇ、胸を押し当てる……もういい。
「競技の他にも目的はあるってことね」
ミーシャも納得したようだ。
各競技が魔法属性に特化した協議内容だということも納得できた。
「じゃあ、この火炎演武ってのは?」
「これは単純明快。鉄の板に穴をあける簡単なもので、火力を競うものですね」
事も無げにメリッタ先生は言うが、鉄の板なんてどれくらいの厚みがあるんだ?
「そうですね……これくらいかな……」
メリッタ先生が手で幅を作る。約三〇cm程……って、できるかそんなもん!
火魔法でそれだけの高温を発生させるとか……ないわー!
鉄の融解温度は一五三八度、これを魔法の力だけで溶かせるものなのか。
聞けば火炎演武はどれだけ派手な魔法かが評価対象となっているらしい。実際に穴をあけることができた魔法使いは今までの大会の中で一人もいないとのことだった。
そうだろう。地球の科学力でも大きな鉄の板を溶かすのにはかなりのエネルギーを必要とする。
「この中で火魔法を使えるのは?」
「私です!」
ミーシャが手を上げる。ミーシャの胸がオレの頭に当たっている気がするのだが……気のせいだ。
「それでは、火炎演武にはミーシャさんですね」
「大丈夫なのか?」
見た目の派手さが大事なのであればそれなりに対策はとれるだろう。
「はい。もちろんノゾミも手伝ってくれますよね」
ミーシャがオレの手をとる。
「大丈夫だ。安心しろ」
ミーシャは「やったぁ!」と大喜びだ。
「じゃあ、お礼は……」
ミーシャにはお世話になっている。お礼などもらえるはずがない。オレは紳士なのだ。見くびってもらっては困る。
「身体でお支払いしますね♡」
素晴らしい。是非そうしてもらいたい。やはり労働に対してはそれなりに対価が必要となるのだ。それは資本主義社会において大切なことであり、労働に対する等しい対価は信頼の証でもある。なんなら、今すぐにでもお支払いをして欲しいくらいだ。
「できれば前払いで!」
オレの言葉にミーシャは「じゃあ、これから毎晩でも!」と言質を取ったとばかりに発言し、周りから「ミーシャだけズルい」と非難されていた。
なんだかんだでオレと一緒にいたいみんなの気持ちが伝わってくる。
「まあ、その辺はみんなで決めてください」
メリッタ先生はいたってクールだ。
彼女とはこれから大会まで何度も顔を合わせることになる。その都度【実験】と称して様々な要求をしてくるはずだ。もちろんオレは協力を惜しまない。オレの命を賭して彼女の実験を手伝うつもりだ。邪な気持ちなどない。純粋にこの科学の進歩に貢献できることにオレは使命感を持って対応しているだけなのだ!
メリッタ先生は選手を決めているというよりも、各選手の特徴を再確認しているようだった。
単純な話、こんなことをしなくとも生徒のリストと簡単な面接で選手は決まられるはずだ。
それをしないのは何かしらの理由があるからなのか?
何かしらかの考えがあるのだろう。しばらくは様子を見よう。
結果、選手決めは次の通りとなった。
――――――――――
・風魔法の部 飛行レース(フリーゲン)
マヤ
・水魔法の部 氷結演武(ペークシス)
メリッタ先生推薦の選手
ノゾミ
・火魔法の部 火炎演武(フイアンマ)
ミーシャ
・土魔法の部 障壁構築(テララ)
アープル
・無差別 対人戦闘(コンバーテ)
ノゾミ・アメリア・アンナ・システィーナ・ミーシャ
・無差別 魔獣戦闘(ヤークト)
ノゾミ・アイザック・アンナ・システィーナ・ミーシャ
――――――――――
「このアイザックって誰だ?」
初めて聞く名だ。
「入学式当日にノゾミ様に決闘を申し込んだ愚か者です」
憎々し気にアンナがうめいた。そんな名前だったか?
「そうです。私とお兄さんとの出会いのきっかけを作って下さったキューピッドですわ」
アープルがほほを朱に染める。
人それぞれに受け取り方はあるようだ。
これで、選手決めは終わった。
後は、大会に向けて準備をしていくだけだ。
「各競技の残りの選手はこちらで声掛けしていくよ」
メリッタは羊皮紙をまとめ鞄にしまった。
「では……大会までに約一カ月くらいあるから準備は念入りに行うようにして下さいね」
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