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最弱勇者と水の賢者編【世界軸α:バルサイド国 海辺の街】

閑話 あなたにはこの剣がぴったりなのです!

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「お客さんにはこの剣がぴったりだと思います」

 カリンの勧める剣を手に取ると男は暫くの間動かなかった。
 周囲の弟子たちはことの成り行きをかたずを飲んで見守る。

「いい剣だ。誰も傷つけず、そして派手だ」

「ご満足いただけましたか?」

 カリンの言葉に男は「ああ」と頷いた。

「それでは剣に【名付け】を行いましょう」

「おい、そんな事までしなくても…」

 カリンの言葉に弟子たちがざわついた。
 名付けは剣に力を与える行為。持ち主との繋がりを作り出す儀式だ。しかし、刃のない剣に【名付け】を行ったところでほとんど効力はないだろう。
 それでもカリンはそうすべきだと考えた。

「これは私にとっての大切なお客様なんだから、それに…」

 カリンは男の真剣な表情を改めて思い出す。
 それは決して冷やかしなどではない真剣な眼差し。
 仲間を守るための【力】を求めている表情だった。

「おい兄ちゃん、その剣で一体何と戦おうっていうんだい?」

 弟子の何気ない一言にカリンは凍りついた。
 冒険者であれ誰であれ、客のプライベートを聞くことはタブーとされているからだ。

「ちょっとそんなこと聞いちゃ失礼でしょ!」

 カリンがたしなめたが、弟子たちの好奇の目は男に注がれたままだ。

「そうだな…ちょっと戦うことになってしまってね」

 男の言葉にカリンは目を見開く。

 まさか、決闘?

 そんな大事にこの派手なばかりの剣を使うというのか。
 しかし、相手を殺さないというのであればそれも納得いくが…それにしてもいまいち目的がわからなかった。

「戦うって一体どこの誰と?」

 町内での私闘は禁じられていた。それは郊外といえども例外ではない。
 決闘などを行う場合は、必ずギルドを通じて行わなければならないのだ。

「…ええっと」

 男は小さくため息をついた。

「賢者セリウスとだ」
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