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第1巻第2章 マッシュの家族救出作戦
魔物の群れ
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「ここか!」
オリガにお姫様抱っこされたままマッシュを追いかけるマヤの視界の先で、マッシュが前足を振るって壁を破壊する。
「あーもう……流石にあれは誤魔化せませんよ?」
「おー盛大に壁をぶち抜いてるねえ」
「なんでちょっと楽しそうなんですか……」
冷や汗をかいているオリガの腕の中で、ぱちぱちぱちと楽しそうに拍手しているマヤを見て、オリガは呆れてしまう。
「だってなんかすごいじゃん? あんなに立派な建物の、あんなに立派な壁が壊れるところなんてそうそう見れないよ?」
「たしかにそうかもしれませんけど」
マヤの言う通り、ちょっとした城壁くらいの幅と高さがあるレンガ作りの壁が一気に崩れる様は壮観ではあったのだが、そのおかげでオリガの魔法では誤魔化しきれなくなってしまったのだ。
そのあたりのことをマヤはわかっているのだろうか?
「ん? ねえオリガ、今マッシュが壊した壁の向こうに何かいない?」
立ち上る土煙の中に、黒い靄を認めたマヤは、目を凝らす。
どうやらその靄は土煙の向こうから発生しているらしい。
「何かいない? って言われても、土煙しか見えないですけど、マヤさんは何か見えてるんですか?」
「私も何かが見えてるってわけじゃないんだけど、何か土煙に混じって黒い靄?みたいなのが見えるから、向こうに何かいるのかなって」
「黒い靄ですか? 私には何も見えませんけど……」
「あれ? そうなんだ。じゃあ何なんだろうね、あれ」
「さあ?」
マヤとオリガがのんきに話していると、カンカンカンカンという鐘の音ともに、周囲が一気に騒がしくなった。
「やっぱりバレちゃったみたいですね」
「まー、そうだよねー」
自分たちはまだ透過を静寂の中にいる2人は、落ち着いてそんなことを話している。
館のそこかしこから現れた兵士たちが、オリガとマヤを素通りして、マッシュが壁をぶち抜いた建物に殺到する。
「で、どうしよ? このまま隠れててもいいけど、それだと流石にマッシュがやばいよね?」
「でしょうね。かと言ってこの兵の数は、マヤさんの強化をもらった私でも厳しいですし」
街の無法者どもと違い、ここにいるのは訓練を積んだ兵士たちだ。
強化状態のオリガがいかに強いと言っても限度がある。
「でもオリガさ、今は魔法使えるわけじゃん? それでどうにかならないの?」
「うーん、そうですね……」
オリガは空中を見つめて考え込む。
やがて何か思いついた様子だったが、すぐさま首を横に振った。
「多分無理です。マヤさんとマッシュさんを魔法で保護しながら、この館を消し飛ばすことならできそうですが、それをした場合……」
「マッシュの家族も一緒に消し飛ばしちゃう、か」
「そうなりますね」
何やらオリガがさらっと恐ろしいことを言った気がするが、とりあえずマヤは考えないことにした。
「くそっ! これでは埒が明かん!」
未だに土煙に遮られ様子の伺えない建物の中から、マッシュの声が聞こえて、2人は顔を見合わせる。
「とりあえずマッシュのところに行こう!」
「でも、それだと多分私達も見つかっちゃいますよ?」
「そうだけど、マッシュは私の仲間だもん、助けに行かないと。それに、たぶんなんとかなるでしょ」
何を根拠にそんなに自信満々なんだろう、と思ったオリガだったが、マヤのその笑顔を見ていると、なんだかどうにかなる気がしてくるから不思議だ。
「わかりました。じゃあ、しっかり掴まってて下さいね?」
「うん!」
相変わらずオリガにお姫様されたままのマヤが元気よくうなずくと、オリガはマッシュのいる建物の中に向かって駆け出した。
あっという間に土煙に飛び込んだ2人は、すぐに建物の中の様子を確認すると、その光景に息を飲んだ。
「なに、これ……」
マヤとオリガの前に広がっていたのは、魔物魔物魔物魔物、果てしない数の魔物たちだった。
見たことのある狼の魔物や狐の魔物はもちろん、見たことのない熊や虎などの魔物もいる。
その中心にはこれまた見たことのない巨大な魔石があり、その近くでマッシュが次々と魔物たちに襲われていた。
「マッシュ!」
「マヤ! 遅いぞ、何をしていたのだ!」
「いや、マッシュが勝手に突っ走ったんでしょうに……」
待ってに突っ走って勝手にピンチになったくせに、なぜ私が怒られるんだろう、とマヤは釈然としない気持ちになる。
「あの、マヤさん、とりあえずマッシュさんを強化してあげた方が……」
「それもそうだね強化!」
マヤの手から迸った光の粒子が、マッシュに一直線に向かうと、その体に溶けるように吸い込まれていく。
「よし! これでもうお前らの攻撃を避ける必要はない!」
今まで防戦一方だったマッシュが、マヤの強化を受け攻撃に転じる。
これでどうにかなったと思ったのもつかの間、マヤとオリガの背後から無数の足音が聞こえた。
「貴様ら何者だ! ここがヘンダーソン家の屋敷だとわかっているのだろうな!」
足音ともに後ろに現れたのは、この屋敷にいたヘンダーソン家の兵士たちだった。
先程まで土煙のせいで建物内に入れずに立ち往生していたのだが、ようやく乗り込んで来たのだろう。
マヤとオリガを怒鳴りつけた先頭の男はそれは豪華な軍服に身を包んでいたが、その表情は少しこわばっている。
ヘンダーソン家はこの国の王家なので、おそらく彼らは近衛兵かなにかで実戦経験は乏しいのか、素人目にわかるほど緊張した様子だ。
とはいえ、マヤとオリガが魔物と兵士に挟まれてしまったことに変わりはない。
ちなみに、オリガの魔法は建物に入った時点で解除している。
どちらにせよマッシュと話したりすればバレてしまうからだ。
「これってもしかして、ピンチかも?」
頑張って笑顔でそう言ったマヤだったが、その頬には冷や汗が流れていた。
オリガにお姫様抱っこされたままマッシュを追いかけるマヤの視界の先で、マッシュが前足を振るって壁を破壊する。
「あーもう……流石にあれは誤魔化せませんよ?」
「おー盛大に壁をぶち抜いてるねえ」
「なんでちょっと楽しそうなんですか……」
冷や汗をかいているオリガの腕の中で、ぱちぱちぱちと楽しそうに拍手しているマヤを見て、オリガは呆れてしまう。
「だってなんかすごいじゃん? あんなに立派な建物の、あんなに立派な壁が壊れるところなんてそうそう見れないよ?」
「たしかにそうかもしれませんけど」
マヤの言う通り、ちょっとした城壁くらいの幅と高さがあるレンガ作りの壁が一気に崩れる様は壮観ではあったのだが、そのおかげでオリガの魔法では誤魔化しきれなくなってしまったのだ。
そのあたりのことをマヤはわかっているのだろうか?
「ん? ねえオリガ、今マッシュが壊した壁の向こうに何かいない?」
立ち上る土煙の中に、黒い靄を認めたマヤは、目を凝らす。
どうやらその靄は土煙の向こうから発生しているらしい。
「何かいない? って言われても、土煙しか見えないですけど、マヤさんは何か見えてるんですか?」
「私も何かが見えてるってわけじゃないんだけど、何か土煙に混じって黒い靄?みたいなのが見えるから、向こうに何かいるのかなって」
「黒い靄ですか? 私には何も見えませんけど……」
「あれ? そうなんだ。じゃあ何なんだろうね、あれ」
「さあ?」
マヤとオリガがのんきに話していると、カンカンカンカンという鐘の音ともに、周囲が一気に騒がしくなった。
「やっぱりバレちゃったみたいですね」
「まー、そうだよねー」
自分たちはまだ透過を静寂の中にいる2人は、落ち着いてそんなことを話している。
館のそこかしこから現れた兵士たちが、オリガとマヤを素通りして、マッシュが壁をぶち抜いた建物に殺到する。
「で、どうしよ? このまま隠れててもいいけど、それだと流石にマッシュがやばいよね?」
「でしょうね。かと言ってこの兵の数は、マヤさんの強化をもらった私でも厳しいですし」
街の無法者どもと違い、ここにいるのは訓練を積んだ兵士たちだ。
強化状態のオリガがいかに強いと言っても限度がある。
「でもオリガさ、今は魔法使えるわけじゃん? それでどうにかならないの?」
「うーん、そうですね……」
オリガは空中を見つめて考え込む。
やがて何か思いついた様子だったが、すぐさま首を横に振った。
「多分無理です。マヤさんとマッシュさんを魔法で保護しながら、この館を消し飛ばすことならできそうですが、それをした場合……」
「マッシュの家族も一緒に消し飛ばしちゃう、か」
「そうなりますね」
何やらオリガがさらっと恐ろしいことを言った気がするが、とりあえずマヤは考えないことにした。
「くそっ! これでは埒が明かん!」
未だに土煙に遮られ様子の伺えない建物の中から、マッシュの声が聞こえて、2人は顔を見合わせる。
「とりあえずマッシュのところに行こう!」
「でも、それだと多分私達も見つかっちゃいますよ?」
「そうだけど、マッシュは私の仲間だもん、助けに行かないと。それに、たぶんなんとかなるでしょ」
何を根拠にそんなに自信満々なんだろう、と思ったオリガだったが、マヤのその笑顔を見ていると、なんだかどうにかなる気がしてくるから不思議だ。
「わかりました。じゃあ、しっかり掴まってて下さいね?」
「うん!」
相変わらずオリガにお姫様されたままのマヤが元気よくうなずくと、オリガはマッシュのいる建物の中に向かって駆け出した。
あっという間に土煙に飛び込んだ2人は、すぐに建物の中の様子を確認すると、その光景に息を飲んだ。
「なに、これ……」
マヤとオリガの前に広がっていたのは、魔物魔物魔物魔物、果てしない数の魔物たちだった。
見たことのある狼の魔物や狐の魔物はもちろん、見たことのない熊や虎などの魔物もいる。
その中心にはこれまた見たことのない巨大な魔石があり、その近くでマッシュが次々と魔物たちに襲われていた。
「マッシュ!」
「マヤ! 遅いぞ、何をしていたのだ!」
「いや、マッシュが勝手に突っ走ったんでしょうに……」
待ってに突っ走って勝手にピンチになったくせに、なぜ私が怒られるんだろう、とマヤは釈然としない気持ちになる。
「あの、マヤさん、とりあえずマッシュさんを強化してあげた方が……」
「それもそうだね強化!」
マヤの手から迸った光の粒子が、マッシュに一直線に向かうと、その体に溶けるように吸い込まれていく。
「よし! これでもうお前らの攻撃を避ける必要はない!」
今まで防戦一方だったマッシュが、マヤの強化を受け攻撃に転じる。
これでどうにかなったと思ったのもつかの間、マヤとオリガの背後から無数の足音が聞こえた。
「貴様ら何者だ! ここがヘンダーソン家の屋敷だとわかっているのだろうな!」
足音ともに後ろに現れたのは、この屋敷にいたヘンダーソン家の兵士たちだった。
先程まで土煙のせいで建物内に入れずに立ち往生していたのだが、ようやく乗り込んで来たのだろう。
マヤとオリガを怒鳴りつけた先頭の男はそれは豪華な軍服に身を包んでいたが、その表情は少しこわばっている。
ヘンダーソン家はこの国の王家なので、おそらく彼らは近衛兵かなにかで実戦経験は乏しいのか、素人目にわかるほど緊張した様子だ。
とはいえ、マヤとオリガが魔物と兵士に挟まれてしまったことに変わりはない。
ちなみに、オリガの魔法は建物に入った時点で解除している。
どちらにせよマッシュと話したりすればバレてしまうからだ。
「これってもしかして、ピンチかも?」
頑張って笑顔でそう言ったマヤだったが、その頬には冷や汗が流れていた。
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