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第1章

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「早く見せなさい!すぐに治療を」

    その時、彼女の首元から亀裂が走り、大量の血が吹き出し崩れるように倒れ込む。

「七瀬さん!!」

    俺は彼女の首元を手で圧迫し、止血を試みるが、それでも血はゆっくりと流れ続ける。

「くそ…くそ…どうしてよりにもよって」

    僕は悔しさではらわたが煮え繰り返りそうだった。
    だがそんな僕の頬を彼女は意識の掠れていく中、撫でるように優しく触れ、何かを呟いた後、息を引き取った。
    俺は瞳孔の開いた彼女のまぶたを手のひらでおろし、坂岸が投げ捨てた斧を拾う。
    その斧は火陽が持つには重く、引きずりながら天使の足元へ近付き、睨みつける

「次は俺の番って訳だ」

    天使に向かって呟く。それに呼応するように天使は地面に突き刺さった大剣を抜く。引き抜いた場所は大きな溝が出来ていた。

「来いよ!クソったれ天使!!」

    俺は大声で挑発するように言った。
だが天使はしばらく動かず何かを待っているような素振りを見せた。
    やがて諦めたのか大剣を天高く上げ火陽の頭上に大剣を留める。

「ごめん、親父……」

    俺はその一言を呟いた。それを待っていたかのように天使は大剣を振り下ろす。俺は歯を剥き出しにして笑った。


『運なんてものは俺が現実逃避から生んだ勘違い』だと。


    大剣が徐々に近付くにつれその巨大さが身に染みて感じさせた。
俺は死を覚悟した……その時。

『ピロン』

というゲームによくある効果音と共に、黒い翼の形をした画面が俺の前に現れた。

「なんだ……これ?」

    すると、先程まで迫っていた大剣が俺の頭を潰すギリギリの所でピタリと止まっていた。

『×€$\€%°たか』

    天使がまた訳の分からない言語で喋っている、しかし最初の時よりもその言語が分かるようになってきていた。

『運×€\$がある者よ』

    次第にその天使の言葉が理解できるようになる。

『ようやく我の言葉が理解出来るようになったか?人間よ』

「!!」

    どういう事だ…さっきまで何を言っているのか分からなかった声が、今では日本語のように聞きとれる。
    天使は大剣の刃先を天に掲げる、すると大剣は何も無い空間へと吸い込まれていき、消えていった。

『貴様には見えているだろう?』

    透き通った声で俺に問いかける天使。         こいつが言っている通り、俺の目の前にはこいつの翼のような黒い画面が見えている、その画面には文字が刻まれていた。


『貴方は幸運により、『天使の代行者』への転職がはたせます』


    若い女性の声が耳から聞こえる、しかしその声は混乱した俺の頭を優しく包み込むような……落ち着くような声だった。

「天使の……代行者?」

    俺は訳も分からずその言葉を口に出した。

『ようやく…ようやくだ…』

    そう呟く天使を俺は正気に戻って荒らげた声を出しながら睨みつける。

「お前!一体何が目的なんだ!!僕の体に何をした!」

『我は『堕天王ルシフェル』今はそれだけを知っていれば良い』

    堕天王?意味がわからない、何故そんな天使がこの遺跡にいるんだ。

『今は時間が無い……詳しい事は『ソイツ』に聞け』

    天使はそう言うと身体が歪み始め、今にも歪みの中に消えていくような気配を出していた。

「まて!!」

    俺は斧を引きずりながら走る、だが身体が思うように動かない。

    次第に僕は気付く、歪んでいるのは天使じゃない、俺なんだ。

    火陽はその場で倒れ込み、歪む天使を睨みつけることしか出来なかった。
俺は、目の前がかすみ、目の前が真っ暗になった。
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