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第8話 母とセバスの秘密話

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     時はティアベルが部屋に1人で戻ったところに遡る。
「リセラ様・・・どうしてティア1人で帰らせたのですか?」
    当然の疑問だった。いつものリセラならば一緒に帰ることが当たり前、その後一緒のベッドで寝るのだから。
    私はリセラ様に言った。するとリセラ様は私に不安そうな顔を見せ、手に巻き付けた私のハンカチを取る。
「!!」
   するとそこには先程までに付けた包丁の傷。普通はそこで驚くことは無いでしょうが、彼女の能力『不死身』を知っているからこそだ。
「どうして傷があるのです・・・リセラ様は不死身の能力を持つお方、あらゆる傷や病気を治す力があるはず・・・」
「そうなの、私も驚いたわ」
   真剣な眼差しで私を見つめるリセラ様は言葉を続ける。
「もしかすると、ティアに能力が『継承』されたかもしれないわ・・・」
「・・・!そんな・・・」
    能力が開花するのは生まれて19という歳月を経て初めて花開く。それが殊能力のルールだ。
    その中でもごく稀に自分の能力を引き継ぐ子が生まれることがある。
    彼女、ティアはそのごく稀に当たった子なのだ。
「私の不死身の能力がティアに継承されているとしか考えられない・・・普通だったらこんな傷ものの数秒で治るはずなのに・・・」
「ティアが引き継いだのなら・・・リセラ様と同じ道を辿ることになるのですか・・・」
   慨する表情でリセラを見つめるセバス。
「私はまだ数十年しか体験していないけど・・・ティアの場合どうなるか・・・何百年、何千年と自分一人だけになってしまうかもしれない・・・」
    リセラは顎に手を当て考え込んでしまった、こんなリセラの姿を見たのは初めてだと目を見開くセバス。
「・・・それになんだか変なの・・・」
「変?とは・・・」
「分からない・・・けど、自分の身体が何かおかしいような・・・そんな気がするの」
    訳の分からない胸をざわめかせる感覚に襲われるリセラ。それが何を指すのか、今現在の二人に分かるわけもない。
「・・・伝えるべきではありませんか?ティアに・・・」
「・・・えぇ、そうかもしれない。本当は言いたくないのだけれど・・・」
「今日はもう遅いですし・・・明日の夜にしましょう・・・お部屋までお送りします」
    セバスはリセラをエスコートするように前に出て調理場を後にする。そんな彼を追いながら私は部屋へと戻る。

    そして、母が亡くなるまで・・・残り1日を過ぎてしまった。
     母は私にとってかけがえのない人・・・失いたくなかった・・・
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