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第4話 初めて母と夜の散歩 No.2
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私は初めて母と一緒に屋敷の外へと出た。
辺りは暗い、しかし空に浮かぶ星と月で辺りが柔らかく照らされている。鳥や虫の音色が流れ、木々が風で揺れる音が聞こえてとても安心する。
「かあさま。どうして今日はお外に行くのです?」
私が不思議そうに言うと母は。
「あなたに見せたいものがあったの。こっちよ」
そう言って母は私の小さな手を握って歩き出す。
屋敷のすぐ近くにある森へ入り、丁寧に整地された一本道を進むこと数分、森の奥に一筋の月明かりが見えた。
その先へ進むと。
「ここよ、これをティアに見せたかったの」
「わあ・・・・」
私はその景色を見て高ぶった。
それはただの湖なのだが、よく見ると中央には大きな大木があり、その周りには様々な色の花が咲き乱れている。
赤、青、緑、黄、その他にも沢山の色をした花が咲いていた。
更に一筋の月明かりが大木を照らし出し、神秘さが一層に増している。
まるで私と母を祝福してくれているかのようだった。
「すごい・・・」
「そうでしょう。私がまだ小さかった頃に見つけた場所なの、ここを知ってるのは私とあなたの2人だけ。だからこの場所は2人だけの秘密ね?」
「うんうん!!秘密にする!」
私は嬉しかった。私と母だけしか知らない秘密の場所を知れたから。
「それと、これを受け取って」
母は左手薬指に付けた指輪を外し、指を通す穴に黒い紐を通して私の首に付けてくれた。
私は首にかけられた指輪をまじまじと見つめた。
2匹の鷲が互いに寄り添った絵が掘られてあり、その2匹の鷲の中央には赤くゆらゆらと炎のように蠢く宝石が埋め込まれていた指輪だった。
「これは・・・?」
「それは私があなたと同じ歳の時に母から貰ったものなの。その指輪は、いつか大事な人と一緒にいたいと思った時に渡しなさい」
「かあさまはおとうさまにこの指輪を渡さなかったの?大事な人じゃなかったの?」
純粋な気持ちで母に言った。思えば失言だったと後悔する。
「あの人に渡そうとしたけど断られちゃったの『いつか君の1番大切な者に渡しなさい』って言われちゃったの。私はあの人が1番大事な人で大切だったのだけれど・・・でもあの時何であの人がそういったのか・・・今ならはっきり分かるわ」
母はそう言うと私の目線まで腰を下ろし、頭を優しく撫でる。
「あなたの為にこの指輪を残してくれたって気付いたから」
母は穏やかな表情をしながら私に言う。
「おとうさまは今何をしているの?」
そう言うと母は少し困ったような表情を見せていた。
あまり言いたくなさげな顔をした母だが、意を決して言った。
「あの人は少し遠くの場所で仕事をしているわ」
「会える?おとうさまに・・・」
「そのうち会えるわ・・・だから心配しないで」
幼い私は母の言う事を信じ、にこやかな表情を浮かべる。
父はもう数年前原因不明で亡くなったことを知るのは、母が亡くなってから聞かされる。
「かあさまかあさま!あの大きな木の場所に行くにはどうしたらいいの?」
目を輝かせながら私は指さして言った。
「そうねぇ、あなたがもう少し大人になったら教えてあげるわ」
「大人になるまでどのくらいかかるの?」
「うーん、あなたの誕生日パーティを13回したらすぐ大人になるわ」
子供の私に分かりやすく言ってくれたのだろう、私はすぐに納得し首を上下に振る。
「わかった!大人になるまで我慢する!」
母は大らかな表情で私を見つめる。
「そろそろ屋敷へ戻りましょうか」
「うん!」
母は私の手を握りながらその場所から去り、屋敷へ戻って寝室で一緒に眠った。
母が死ぬまで・・・残り2日をきる。
辺りは暗い、しかし空に浮かぶ星と月で辺りが柔らかく照らされている。鳥や虫の音色が流れ、木々が風で揺れる音が聞こえてとても安心する。
「かあさま。どうして今日はお外に行くのです?」
私が不思議そうに言うと母は。
「あなたに見せたいものがあったの。こっちよ」
そう言って母は私の小さな手を握って歩き出す。
屋敷のすぐ近くにある森へ入り、丁寧に整地された一本道を進むこと数分、森の奥に一筋の月明かりが見えた。
その先へ進むと。
「ここよ、これをティアに見せたかったの」
「わあ・・・・」
私はその景色を見て高ぶった。
それはただの湖なのだが、よく見ると中央には大きな大木があり、その周りには様々な色の花が咲き乱れている。
赤、青、緑、黄、その他にも沢山の色をした花が咲いていた。
更に一筋の月明かりが大木を照らし出し、神秘さが一層に増している。
まるで私と母を祝福してくれているかのようだった。
「すごい・・・」
「そうでしょう。私がまだ小さかった頃に見つけた場所なの、ここを知ってるのは私とあなたの2人だけ。だからこの場所は2人だけの秘密ね?」
「うんうん!!秘密にする!」
私は嬉しかった。私と母だけしか知らない秘密の場所を知れたから。
「それと、これを受け取って」
母は左手薬指に付けた指輪を外し、指を通す穴に黒い紐を通して私の首に付けてくれた。
私は首にかけられた指輪をまじまじと見つめた。
2匹の鷲が互いに寄り添った絵が掘られてあり、その2匹の鷲の中央には赤くゆらゆらと炎のように蠢く宝石が埋め込まれていた指輪だった。
「これは・・・?」
「それは私があなたと同じ歳の時に母から貰ったものなの。その指輪は、いつか大事な人と一緒にいたいと思った時に渡しなさい」
「かあさまはおとうさまにこの指輪を渡さなかったの?大事な人じゃなかったの?」
純粋な気持ちで母に言った。思えば失言だったと後悔する。
「あの人に渡そうとしたけど断られちゃったの『いつか君の1番大切な者に渡しなさい』って言われちゃったの。私はあの人が1番大事な人で大切だったのだけれど・・・でもあの時何であの人がそういったのか・・・今ならはっきり分かるわ」
母はそう言うと私の目線まで腰を下ろし、頭を優しく撫でる。
「あなたの為にこの指輪を残してくれたって気付いたから」
母は穏やかな表情をしながら私に言う。
「おとうさまは今何をしているの?」
そう言うと母は少し困ったような表情を見せていた。
あまり言いたくなさげな顔をした母だが、意を決して言った。
「あの人は少し遠くの場所で仕事をしているわ」
「会える?おとうさまに・・・」
「そのうち会えるわ・・・だから心配しないで」
幼い私は母の言う事を信じ、にこやかな表情を浮かべる。
父はもう数年前原因不明で亡くなったことを知るのは、母が亡くなってから聞かされる。
「かあさまかあさま!あの大きな木の場所に行くにはどうしたらいいの?」
目を輝かせながら私は指さして言った。
「そうねぇ、あなたがもう少し大人になったら教えてあげるわ」
「大人になるまでどのくらいかかるの?」
「うーん、あなたの誕生日パーティを13回したらすぐ大人になるわ」
子供の私に分かりやすく言ってくれたのだろう、私はすぐに納得し首を上下に振る。
「わかった!大人になるまで我慢する!」
母は大らかな表情で私を見つめる。
「そろそろ屋敷へ戻りましょうか」
「うん!」
母は私の手を握りながらその場所から去り、屋敷へ戻って寝室で一緒に眠った。
母が死ぬまで・・・残り2日をきる。
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