上 下
2 / 7
第1章

第1話 私を嘲笑う為に来たのなら帰れ!!

しおりを挟む
   ハネス家の所有する屋敷の大広間。そこで私はある方と婚約をする事になっている。
「皆の者!よく集まってくれた!今日は私の娘ヴァルシアの記念すべき婚約式!どうかお祝いの喝采を!!」
    我がクソ親父が大声で言っている。いつ誰が会ったこともないのに男爵と結婚したいなんて言ったよ・・・。
    そんなことを考えている間に周りからは大きな拍手喝采が響き渡る。
    本当は祝いたくはないのだがハネス家の当主の頼みで嫌々ながらも集まった貴族たちはパチパチと作り笑顔で祝っている。
    私の方じゃなくてクソ親父に向けて・・・。
    眉間に皺を寄せる私の後ろから聞き慣れた声が掛けられる。
「良かったわねヴァルシア、あなたにも良い男爵様に出会えて」
   クスクスと笑いながら私に近付くのは次女のネルソン。いつもいつも私を馬鹿にする最悪の性悪女だ。
「あなたってぇ、うちの家系では
お・ち・こ・ぼ・れの部類に入っていたのに、よく婚約してくれる相手がいたものだわ」
「そうですわね」
   こいつに何を言っても馬の耳に念仏・・・なので私は、いつもネルソンをボコボコにする事を毎度毎度会う度に想像している、もちろん今でも。
「でもぉ、相手は1度もあったことの無い男爵様よねぇ~、可哀想にぃ、一体どんなお方が現れるのかしら?楽しみでしょうがないわ」
    クスクスと上品に笑うネルソン。本当に勘弁して欲しい・・・どうしてこんな奴の姉なのだろうかと考えさせられる。
「ネルソン、そこにいたのか。探したぞ?」
    優雅にこちらへ歩いてくるイケメン男爵が次女の名前を呼んでいる。
「あらあらあら、セイソ。私を見つけてくれたのね」
    ネルソンは私に見せつけるようにイケメン男のセイソの首に手を回し、身を委ねながら舐めまわすように接吻をする。
    ほんと、他所でやってくれ・・・
「ん、ネルソン、今日はスキンシップが激しいね?どうしたの?」
「えぇ、あなたに会えた喜びが強くて・・・」
    わざとらしく顔を赤らめる私の次女。
    じゃあ何故こうして私に見せつけるようにするか・・・お答えしましょう。

    ネルソンの婚約者セイソ・ダナンは私が狙っていた男だからだ。
   彼の誠実さと謙虚さに心惹かれた私は、彼の心を掴む為、ありとあらゆる事をした。エステでボディケアやヘアケア、メイクテクニック・・・なんだってした。
    そしてついに告白しようと心を躍らせて私は彼を呼んだ。
    しばらくするとセイソが現れて私の心は昂りだした。それと同時に私は絶望した。
    次女ネルソンがセイソの隣で肩を抱き寄せながらこちらに歩いてきたのだ。
「あら?誰かと思えば落ちこぼれの姉さんじゃない?ねぇセイソ?どうして彼女がこんな所で突っ立っているのかしら?」
    わざとらしい口調で言ったよこの女・・・
「え、えっと・・・・どうしてだろうね」
「・・・!」
「あら?セイソも知らないの?それじゃあ姉さんの邪魔にならないように私達はあっちの茂みに行きましょうか」
    おい待て、あっちの茂みで一体何をするんだ!おい!!
    私は心の中で呟く。口には出さなかった自分を褒めたい。
「ごめん・・・ヴァルシア・・・」
   彼はそう耳元で囁いて通り過ぎ、茂みの方へ行った。
    茂みで何をしたかはご想像にお任せしますが、一言で言うと。
「激しかった・・・」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

我が異世界生活を行く

茶柄
ファンタジー
気が付くと異世界にぼつんと立っていた。 目的も理由も召喚者もいない。説明書の無い異世界生活の始まり始まり。あるのはオタクの結晶ソシャゲの能力と大量のアイテム。チート未満テンプレ以上の創造神(作者)の誇張妄想作品です駄作予定ですか期待はしないでください。

魔王級術士の落ちこぼれ

小烏 暁
ファンタジー
異世界転生に憧れのある主人公 暁 勇 (あかつき ゆう)彼は今の人生に退屈を抱き始めていた....そんな彼はある日夢の中で魔王と名乗る人物と出会う....老い先の短い魔王から¨スキル¨を貰い、異世界へ行く。 そんな中魔王には成し遂げられなかった¨夢¨を彼に託す。 それは.......

枯れ専侯爵令嬢、自ら婚約破棄! ー元勇者の男爵様に、メイドとして一生仕えますわ!ー

椎名 富比路
ファンタジー
 貴族のガキと結婚させられそうになった令嬢は、婚約を破棄して家出! 地位の高い身分も捨てた。  引退して爵位を受けた元勇者の屋敷に押しかける。  コワモテ執事の試練を受けて、見事メイドの資格を得る。  だが、魔王復活を目論む魔族が、容赦なく男爵に襲いかかる。  男爵を妬む貴族共が、闇の勢力に手を貸したのだ。  許せねえ! まとめて始末《オシオキ》してやる!  魔女と契約し、令嬢は戦闘マシーンに!  果たして、ヘンタイ令嬢は老紳士のハートを射止めることはできるか?  アルファポリス ファンタジー小説賞 応募作品 「ワタクシ、勇者様専用の●器になりますわ!」「兵器に、だよな?」

スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。 ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。 だけどまあ、そんな事は夢の夢。 現実は、そんな考えを許してくれなかった。 三日と置かず、騒動は降ってくる。 基本は、いちゃこらファンタジーの予定。 そんな感じで、進みます。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

処理中です...