5 / 8
⑤
しおりを挟む
『水を桶に張って、でないと流れてしまう。』
僕は、夕食を終えてからユークレースの言う通りに
お風呂場で桶に水を張ってみた。
「木目だから、見えにくい?」
『いや、大丈夫だろう。それ程にこの粒子には1粒1粒にまで魔力が
ちゃんとあるらしい。』
ドキドキしながら、2人で屈んで子供の様に粒子を
水面にゆっくりと注ぎこむ。
「どう…言う事?」
微細な粒子が、水上で意思を持ったかのように動き出す。
よく分からないけれど、眼を見張っていた。
ユークレースも、僕と同じ様に初めて見る現象に
驚いている。
金色の粒子の動きが完全に止まってから、
僕は浮かび上がる文字の様なものを見つつ
『文字だよな?』
「うん、見た事ない文字だよ。どう、読むんだろ?」
ユークレースの様子をうかがう。
触っても良いのか、分からないけれど。
僕が粒子に触れようとすると
『…獣人が、くれたんだったよな。』
「うん、そうだよ。…もしかして、読めそう?」
首を傾げていると、ユークレースが本棚の前に立って
『俺たち、の言語とは違うか。だとしたら』
なにか、文献を探している。
「そっかぁ、獣人の世界の言語だったら…僕には分からないよ。」
『分からないじゃ、終わりたくないけどな。俺は』
耳が痛い。優等生のユークレースの言葉が心に突き刺さる。
「だよね、折角僕に渡してくれたんだから。考えなくちゃ。」
分厚い文献を読み進めるユークレースの隣で、僕も
何らかの手がかりを探してみる。
『俺は、あの黒豹…いけすかないけどな。』
部屋の時計が、鳴る。
時間が溶ける様に流れて行った気がする。
「僕は、何とも言えないよ。」
ユークレースは、きっと僕が倒れた後に色々なやり取りが
あったんだと思う。
『近くを通りかかったのが、あの黒豹で…』
「進んで、診てくれたの?」
『まさか。俺が、鞄の証印に気が付いたから声を掛けたんだ。』
「証印って、あぁ…お医者さんって事か。」
『そう。多分、往診にでも出ていたんだろうな。俺は、診てくれるなら誰でも良かったけど。』
先程、言われた言葉が脳裏をよぎった。
種族が違うのは、ある意味ではどうしようもない。
ただ、彼が僕に何を伝えたかったのか。
人間が苦手なのに、どうして?と思う。
「諦めちゃ、駄目だよ。ちゃんと、お礼もしたいし。」
『世界が、2つだった時代のものかもしれない。なら、俺の持っている文献では
あまり、役には立たないだろうな。』
僕は、そろそろ卒業間近のアカデミアで
もしかしたら難題に挑んでいるのかもしれない。
「先生に、明日話してみるよ。古代魔法に長けてるから、2つの世界の魔導書も持ってるだろうから。」
『2つの世界の時代は、暗黒史に触れるようなものだからな。いつでも、俺も協力する。』
とは言え、卒業までは残り1月程しかない。
卒業課題にも追われている僕も、ユークレースも
解読できるのだろうか?
僕は、夕食を終えてからユークレースの言う通りに
お風呂場で桶に水を張ってみた。
「木目だから、見えにくい?」
『いや、大丈夫だろう。それ程にこの粒子には1粒1粒にまで魔力が
ちゃんとあるらしい。』
ドキドキしながら、2人で屈んで子供の様に粒子を
水面にゆっくりと注ぎこむ。
「どう…言う事?」
微細な粒子が、水上で意思を持ったかのように動き出す。
よく分からないけれど、眼を見張っていた。
ユークレースも、僕と同じ様に初めて見る現象に
驚いている。
金色の粒子の動きが完全に止まってから、
僕は浮かび上がる文字の様なものを見つつ
『文字だよな?』
「うん、見た事ない文字だよ。どう、読むんだろ?」
ユークレースの様子をうかがう。
触っても良いのか、分からないけれど。
僕が粒子に触れようとすると
『…獣人が、くれたんだったよな。』
「うん、そうだよ。…もしかして、読めそう?」
首を傾げていると、ユークレースが本棚の前に立って
『俺たち、の言語とは違うか。だとしたら』
なにか、文献を探している。
「そっかぁ、獣人の世界の言語だったら…僕には分からないよ。」
『分からないじゃ、終わりたくないけどな。俺は』
耳が痛い。優等生のユークレースの言葉が心に突き刺さる。
「だよね、折角僕に渡してくれたんだから。考えなくちゃ。」
分厚い文献を読み進めるユークレースの隣で、僕も
何らかの手がかりを探してみる。
『俺は、あの黒豹…いけすかないけどな。』
部屋の時計が、鳴る。
時間が溶ける様に流れて行った気がする。
「僕は、何とも言えないよ。」
ユークレースは、きっと僕が倒れた後に色々なやり取りが
あったんだと思う。
『近くを通りかかったのが、あの黒豹で…』
「進んで、診てくれたの?」
『まさか。俺が、鞄の証印に気が付いたから声を掛けたんだ。』
「証印って、あぁ…お医者さんって事か。」
『そう。多分、往診にでも出ていたんだろうな。俺は、診てくれるなら誰でも良かったけど。』
先程、言われた言葉が脳裏をよぎった。
種族が違うのは、ある意味ではどうしようもない。
ただ、彼が僕に何を伝えたかったのか。
人間が苦手なのに、どうして?と思う。
「諦めちゃ、駄目だよ。ちゃんと、お礼もしたいし。」
『世界が、2つだった時代のものかもしれない。なら、俺の持っている文献では
あまり、役には立たないだろうな。』
僕は、そろそろ卒業間近のアカデミアで
もしかしたら難題に挑んでいるのかもしれない。
「先生に、明日話してみるよ。古代魔法に長けてるから、2つの世界の魔導書も持ってるだろうから。」
『2つの世界の時代は、暗黒史に触れるようなものだからな。いつでも、俺も協力する。』
とは言え、卒業までは残り1月程しかない。
卒業課題にも追われている僕も、ユークレースも
解読できるのだろうか?
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる