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よくよく考えてみても、不思議だった。
10年前の別れからは想像もしなかった未来にいる。
夜も更けて来た頃、礼緒くんが今…目の前で僕の膝の上で
寝てるんだよね。
はぁ、もう…本当に信じられない。
隙の無い普段の姿からは考えられない光景。
最初は、かなり遠慮してたんだけど長座している僕の太腿に
まるで感触でも確かめるみたいに触れて。
『そこまで、硬くないんだな。』
「どうだろう?良いよ、遠慮しないで。」
なぜか礼緒くんは警戒しつつ、ゆっくりと僕の膝枕に
頭を預けてくれた。
とは言え、ちょっと下の部分でしか出来ないけど。
『辛くなったら言えよ』
って言われて。僕は、礼緒くんの端正な寝顔を見られて
嬉しいだけ。
思わず、笑みがこぼれてしまうよね。
触りたいけど、起きちゃう。
すーっと、手を伸ばしてもやっぱり悪戯は出来ない。
呼吸も少しだけ密やかにしながら、至福の時を過ごしている。
このまま、もっともっと時間がゆっくりになればいいのに。
大好きな人と過ごせる時間が、ただ嬉しくて愛おしい。
なのに、今でも礼緒くんの将来を慮っている。
礼緒くんが、例えば他の誰かといずれ家族を持ちたくなったら
僕はきっと祝福する。
そして、またこの地を離れて生きて行くと思う。
じゃないと、辛くて…耐えられない。
誰より、幸せを感じてて欲しい。
でも、僕にはあらゆる限界や不可能がある。
まだ、なにも起きてないのに哀しみで心が苦しいなんて
礼緒くんが聞いたら、どんな顔をするだろう?
先の事なんて、ここに帰って来るまではロクに考えもしなかったくせに。
どうして、今の幸せな時に考えてしまうんだろう。
心が、乱れてしまいそうで怖い。
油断すると、涙がこぼれ落ちそうで上を向いた。
すると、左手をぎゅ、と握られて視線を礼緒くんに向ける。
『一人で勝手に泣きそうになってんなよな。』
「…ぅん…」
『妄想はほどほどにしとけ。』
痛い所を的確に突かれて、言い返せない。
静かに鼻をならして無理して笑うと
『泣き虫…。』
礼緒くんの手が頬へと伸ばされて、ゆるくつままれた。
「…ごめんね、寝てるのに。」
『全然寝てない。眼ぇ閉じてるだけ。』
「心地悪いよね?やっぱり女の子の方が…」
『違う。って、言わすなよ。単に明るいからだ。』
言われて初めて気が付いた。
「あ、消し忘れてたね。」
『そろそろ帰るわ。時間、空くならまた教えてくれ。』
帰られる時って、どうしてこんなに
「まだ、帰っちゃダメ。」
『悠里…、お前もゆっくり休め?明日また仕事だろ。』
「そうだよ。でも…」
『こんな近くに住んでるんだ。そんな顔しなくてもいつでも会えるってのに。』
「…心がザワザワするんだよ。離れるのかって思うと。」
身を切られるような思いになってしまうのか。
礼緒くんは僕の頭をそっと撫でて立ち上がる。
『俺も、似たような事は思ったりもするけど。またの楽しみにしてる。考え過ぎるなよ?悠里。』
あんまり、我がまま言って困らせたくは無い。
だから、ここでは笑顔で一旦見送るのが正解。なのかな?
10年前の別れからは想像もしなかった未来にいる。
夜も更けて来た頃、礼緒くんが今…目の前で僕の膝の上で
寝てるんだよね。
はぁ、もう…本当に信じられない。
隙の無い普段の姿からは考えられない光景。
最初は、かなり遠慮してたんだけど長座している僕の太腿に
まるで感触でも確かめるみたいに触れて。
『そこまで、硬くないんだな。』
「どうだろう?良いよ、遠慮しないで。」
なぜか礼緒くんは警戒しつつ、ゆっくりと僕の膝枕に
頭を預けてくれた。
とは言え、ちょっと下の部分でしか出来ないけど。
『辛くなったら言えよ』
って言われて。僕は、礼緒くんの端正な寝顔を見られて
嬉しいだけ。
思わず、笑みがこぼれてしまうよね。
触りたいけど、起きちゃう。
すーっと、手を伸ばしてもやっぱり悪戯は出来ない。
呼吸も少しだけ密やかにしながら、至福の時を過ごしている。
このまま、もっともっと時間がゆっくりになればいいのに。
大好きな人と過ごせる時間が、ただ嬉しくて愛おしい。
なのに、今でも礼緒くんの将来を慮っている。
礼緒くんが、例えば他の誰かといずれ家族を持ちたくなったら
僕はきっと祝福する。
そして、またこの地を離れて生きて行くと思う。
じゃないと、辛くて…耐えられない。
誰より、幸せを感じてて欲しい。
でも、僕にはあらゆる限界や不可能がある。
まだ、なにも起きてないのに哀しみで心が苦しいなんて
礼緒くんが聞いたら、どんな顔をするだろう?
先の事なんて、ここに帰って来るまではロクに考えもしなかったくせに。
どうして、今の幸せな時に考えてしまうんだろう。
心が、乱れてしまいそうで怖い。
油断すると、涙がこぼれ落ちそうで上を向いた。
すると、左手をぎゅ、と握られて視線を礼緒くんに向ける。
『一人で勝手に泣きそうになってんなよな。』
「…ぅん…」
『妄想はほどほどにしとけ。』
痛い所を的確に突かれて、言い返せない。
静かに鼻をならして無理して笑うと
『泣き虫…。』
礼緒くんの手が頬へと伸ばされて、ゆるくつままれた。
「…ごめんね、寝てるのに。」
『全然寝てない。眼ぇ閉じてるだけ。』
「心地悪いよね?やっぱり女の子の方が…」
『違う。って、言わすなよ。単に明るいからだ。』
言われて初めて気が付いた。
「あ、消し忘れてたね。」
『そろそろ帰るわ。時間、空くならまた教えてくれ。』
帰られる時って、どうしてこんなに
「まだ、帰っちゃダメ。」
『悠里…、お前もゆっくり休め?明日また仕事だろ。』
「そうだよ。でも…」
『こんな近くに住んでるんだ。そんな顔しなくてもいつでも会えるってのに。』
「…心がザワザワするんだよ。離れるのかって思うと。」
身を切られるような思いになってしまうのか。
礼緒くんは僕の頭をそっと撫でて立ち上がる。
『俺も、似たような事は思ったりもするけど。またの楽しみにしてる。考え過ぎるなよ?悠里。』
あんまり、我がまま言って困らせたくは無い。
だから、ここでは笑顔で一旦見送るのが正解。なのかな?
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