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第3章 王都

口説き

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謁見室を退室した後、雅人たちは速やかに部屋に戻った。よほど疲れていたのか、雅人は部屋に入るなりソファに沈みこんで目をつぶってしまった。

「マサト、大丈夫か?」

「デイヴィス……。正直に言って今はとてつもなくしんどいが。」

……王子と王様があんなに濃い人達だとは思わなかった。はぁ、疲れたぁ。ぶっちゃけもう何もせずに寝たい。なんつうか、精神的にこんなに疲れたの初めてかも。

「マサト……。」

急にデイヴィスの声が近くで聞こえた。驚いて目を開けると思ったより顔が近くにあってかっと頬が熱くなる。

「で、デイヴィス。どうした?」

「マサト……。俺は、お前が好きだ……。」

……へ?

「たとえ……お前が殿下に求婚されたとしても、俺はお前を諦められないだろう。それくらい、マサトに惚れている。愛してるんだ。」

きゅ、急にどうしました?!デイヴィスさん?!ていうか耳元で囁かないで!!息が吹き込まれてるみたいでゾワゾワするんだよ!

「で、デイヴィス?落ち着いてくれ。」

「俺は十分落ち着いている。なぁ、マサト殿下のものになんてなるな。」

「いや、あの、殿下のものにはなる気は無いが……」

「本当か?!あぁ、マサト。好きだ。愛してる。」

「いや、デイヴィス。ちょっと冷静に……ッ!!」

こ、こいつ……!!耳、舐めやがったァ!

「ふ……ん、ちょっ!デイヴィス!!やめてくれ!」

「なぁ、マサト。俺の恋人になって欲しい。ずっと一緒にいるから。殿下からも守るから。だから、ずっと俺のそばに!」

「ちょっ、デイヴィス!!冷静になれ!俺たちはまだ出会ってそんな経ってないだろ?!」

「時間なんて関係ない!俺は、初めて会った時からマサト、お前が好きだった。可愛くて、美しくて、強くて。俺は本気だ。マサト、俺の天使……。」

や、やばい。本気なのはわかるがこのままいけばなんかやばい気がする……。これはもう、仕方ないよな……?

「デイヴィス……。」

雅人は抵抗をやめデイヴィスの首にするりと腕を回した。デイヴィスは雅人が受け入れてくれたと思い嬉しそうにする。

「デイヴィス、一旦、落ち着け!!!!!」

ドンッという音が鈍くなる。

「カハッ!!」

雅人の膝がデイヴィスの硬い腹筋にめり込んだ音だった。普段鍛え上げているデイヴィスに普通ならそう蹴りは効かないだろう。だが、魔法が使えない代わりに身体強化された雅人の膝は、たった今雅人にデレデレとして気を抜いていたデイヴィスの鳩尾に思い切りヒットした。

「マ、マサト……?」

「デイヴィス……。お前、ちょっと休んだ方が良いんじゃないか?……少し寝ろ。」

雅人のその言葉にデイヴィスは落ちた。雅人にとってひとつ誤解だったのは、ソファで覆いかぶさったまま意識を落としたので、雅人は身動きをとれなかったことである。


「マサト。君は私の妻になるのに、違う男と寝るなんてどういうことかな?」

ふと不穏な声が聞こえて雅人の意識が上昇する。どうやらあのまま眠ったみたいだ。雅人の上にはいまだデイヴィスが覆いかぶさったままだ。

「あぁ、起きたかい?マサト。まさか、君はもうデイヴィスとそんな仲だったのかな?」

「……は、い?」

寝起きでぼうっとする。

……目の前にいるのは、誰だ……?

細められた紫色の瞳が見える。

「シュバルツ、殿下?」

「あぁ、覚えてくれたんだね!嬉しいよ!……ところで聞きたいんだけど、マサトの上にいるは何かな?」

雅人の胸の上ではいまだ夢の世界にいるデイヴィスが眠っていた。ちゃっかり腕を雅人に巻き付けていた。
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