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第1章 騎士団
川辺
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「川で洗ったらこれで体を拭け。こっちが着替えだ。」
「あぁ、ありがとう。」
雅人はそれらを持って川辺に行く。魔物の血でどろどろになった隊服を脱ぎ、一糸まとわぬ姿で川の中に入っていく。頭まで浸かるように潜り川の流れで血を流す。体を擦ったりしながら息継ぎをするのを何回か繰り返した。ふと川の下流の方に目が行った。
……大きな川だな。この川なら下っていけば集落のひとつくらい見つかるかもしれない。
ザバッと川から上がり、体を拭きフィルから貰った新しい隊服に袖を通す。そして少し川辺の方に歩くとまだフィルがいることに気がついた。
「……まだいたのか、フィル。」
「なんだそれは。律儀に待ってやったんだぞ?」
フィルが雅人に笑いかける。
「……フィル。俺は、戻らない。」
「……は?何言ってんだ?」
「さっきのでわかっただろう?俺は怪しいヤツなんだ。みんながどんな風に感じたか分かってる。気持ち悪いよな。初めてなのにあんなあっさり魔物倒して。」
「……きもちわるい?……誰が言ったんだ、そんなこと。」
「みんなは優しいからな。そんなこと俺に直接言う人なんていないさ。とにかく俺はもうフィル達と一緒にはいない。気味悪がられてるのに残るなんてお互いに辛いだけだろう?だから俺はこのまま川を下る。」
「……魔物が出るぞ?……残念だが騎士団の剣は貸せない。」
「分かってるよ。でも、いいんだ。別に。恐怖は感じない。」
……1回死んでるからな。
心の中で付け加える。
本当はひとりで川を下るなんて、怖くて泣きそうになる。だが、みんなに忌避されながら一緒にいることの方がきっと辛いんだろう。
…………ごめんな、デイヴィス、フィル。
ふと気がつくとフィルがこっちに近づいてくるのが分かる。雅人の前まで来るとぎゅっと抱きしめた。
……お別れのハグかな。寂しいな。まだ出会って1日もたってない。もっと話したかったよフィル。
「………………………………行くな。」
小さく一言だけ。しかし色んな気持ちが込められていた。
「……え?」
「誰もお前のこと気持ち悪いだなんて思ってない。みんなお前のこと心から歓迎してるんだ。……俺はまだお前と一緒にいたい。」
「えっ……」
「それにお前の剣は気持ち悪くなんかない。お前の剣さばきを見た時みんな言葉を失ったよ。それぐらいお前は美しかった。目が離せなかった。終わったあと血に塗れたお前を見ても輝いて見えた。」
「う、うつくしい?」
「あぁ。とても。天使と見間違えるくらいにな。」
……ううううつくしいって?俺の剣さばきが?美しく見えるような動きはしていないと思うが。魔物に馬乗りになったりするしな……。それにててて天使って!……俺今絶対顔リンゴだわ。
「……戻ろう?俺と一緒に。」
「え?……うぅ……はぁ。そうだな。戻るか。」
そのまま雅人の腕を掴み引きずるように歩いていく。
…………………………あれ?これ、俺はめられてないよな?
「あぁ、ありがとう。」
雅人はそれらを持って川辺に行く。魔物の血でどろどろになった隊服を脱ぎ、一糸まとわぬ姿で川の中に入っていく。頭まで浸かるように潜り川の流れで血を流す。体を擦ったりしながら息継ぎをするのを何回か繰り返した。ふと川の下流の方に目が行った。
……大きな川だな。この川なら下っていけば集落のひとつくらい見つかるかもしれない。
ザバッと川から上がり、体を拭きフィルから貰った新しい隊服に袖を通す。そして少し川辺の方に歩くとまだフィルがいることに気がついた。
「……まだいたのか、フィル。」
「なんだそれは。律儀に待ってやったんだぞ?」
フィルが雅人に笑いかける。
「……フィル。俺は、戻らない。」
「……は?何言ってんだ?」
「さっきのでわかっただろう?俺は怪しいヤツなんだ。みんながどんな風に感じたか分かってる。気持ち悪いよな。初めてなのにあんなあっさり魔物倒して。」
「……きもちわるい?……誰が言ったんだ、そんなこと。」
「みんなは優しいからな。そんなこと俺に直接言う人なんていないさ。とにかく俺はもうフィル達と一緒にはいない。気味悪がられてるのに残るなんてお互いに辛いだけだろう?だから俺はこのまま川を下る。」
「……魔物が出るぞ?……残念だが騎士団の剣は貸せない。」
「分かってるよ。でも、いいんだ。別に。恐怖は感じない。」
……1回死んでるからな。
心の中で付け加える。
本当はひとりで川を下るなんて、怖くて泣きそうになる。だが、みんなに忌避されながら一緒にいることの方がきっと辛いんだろう。
…………ごめんな、デイヴィス、フィル。
ふと気がつくとフィルがこっちに近づいてくるのが分かる。雅人の前まで来るとぎゅっと抱きしめた。
……お別れのハグかな。寂しいな。まだ出会って1日もたってない。もっと話したかったよフィル。
「………………………………行くな。」
小さく一言だけ。しかし色んな気持ちが込められていた。
「……え?」
「誰もお前のこと気持ち悪いだなんて思ってない。みんなお前のこと心から歓迎してるんだ。……俺はまだお前と一緒にいたい。」
「えっ……」
「それにお前の剣は気持ち悪くなんかない。お前の剣さばきを見た時みんな言葉を失ったよ。それぐらいお前は美しかった。目が離せなかった。終わったあと血に塗れたお前を見ても輝いて見えた。」
「う、うつくしい?」
「あぁ。とても。天使と見間違えるくらいにな。」
……ううううつくしいって?俺の剣さばきが?美しく見えるような動きはしていないと思うが。魔物に馬乗りになったりするしな……。それにててて天使って!……俺今絶対顔リンゴだわ。
「……戻ろう?俺と一緒に。」
「え?……うぅ……はぁ。そうだな。戻るか。」
そのまま雅人の腕を掴み引きずるように歩いていく。
…………………………あれ?これ、俺はめられてないよな?
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