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第30話 今田の危機
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田部の退職はショックだったが、仕事に追われ感傷に浸る暇はなかった。
平日は派遣先で遅くまで残業したが、それでも終わらないだけの仕事量があった。
派遣先は土日の出勤が禁止だったので、土曜日は資料一式を持って会社に戻って仕事をしていた。
毎日忙しいのは大変ではあったが、給料カット分を残業手当で補うことができたのはありがたかった。
残業がないと生活が苦しいほどの薄給だった上に給料カットなのだから、経済的には忙しいことでだいぶ助かっていた。
もう一つ、いま頑張っておけば退職後の失業手当が多くなるという計算もあった。
それなりの給料をもらっている人なら、残業しなくても失業保険の受給上限額に達しているから影響はしないだろう。
しかし俺のような薄給では、退職前の半年間にどれだけ残業したかで失業保険の受給額が変わる。
退職後の半年程度は失業保険が頼りになるので、少しでも多く残業しておいた方が得をするというわけだ。
ある土曜、会社に行ったらポンちゃんが来ていた。
ポンちゃんの仕事のその後を聞いたのだが、相変わらず専門外の仕事で苦労しているそうだ。
その苦労話が出るかと思いきや、ポンちゃんは意外なことを言い出した。
「まずいんですよ、今田が会社来なくなっちゃったんです。
今週は3日も休んでるような状態で」
今田は俺の後輩でポンちゃんと一緒の場所に派遣に出されているのだが、休み気味だという。
体調不良らしいが具体的な病名を言うこてゃなく、おそらく無理な仕事をさせられていることで精神的にヤバくなっているのだろう。
ポンちゃんは吐き捨てるように言った。
「だから何度も黒井に言ったんですよ、我々の技術で出来る内容じゃないって。
このままだと今田は辞めちゃうんじゃないですかね」
ほかに仕事がない以上、無理でもなんでも仕事は断わらないというのが会社の方針らしい。
派遣先から突っ返されれば別だが、それまで仕事を手放すようなことはせず放置するようだ。
それに気づいたポンちゃんは派遣先の上の人に実状を伝えたそうだが、反応は鈍かったそうだ。
なぜ派遣先がポンちゃん達にこだわるのかは謎だ。
常識で考えればもっと相応しい人を別の会社から選べばいいだけだ。
この時期ならいくらでも見つかろうだろうに、なぜそれをしないのか。
なにかできない事情が向こうにあるのだろうか。
話をしているうちに、話題はいつのまにか優香ちゃんのことになった。
優香ちゃんはポンちゃんの課の後輩で、しばらく前に他社から転職してきた中途組だ。
可愛いし優しく仕事もできる優等生、ウチの会社の生え抜き女性とはレベルが違う。
情けない話だが、生え抜き組で彼女を上回れる人は一人もいないんじゃないか。
正直なところウチの会社に入ってくる新入社員は全体的にレベルが低い気がする。
それは会社に魅力がない証拠なんだろう。
そんなことを独り言のように呟いたら、すぐにポンちゃんがつっこんできた。
「女性には厳しいのに、優香ちゃんはベタ褒めなんですね。
ところで優香ちゃんがなんでウチの会社に入ったか知ってます?」
平日は派遣先で遅くまで残業したが、それでも終わらないだけの仕事量があった。
派遣先は土日の出勤が禁止だったので、土曜日は資料一式を持って会社に戻って仕事をしていた。
毎日忙しいのは大変ではあったが、給料カット分を残業手当で補うことができたのはありがたかった。
残業がないと生活が苦しいほどの薄給だった上に給料カットなのだから、経済的には忙しいことでだいぶ助かっていた。
もう一つ、いま頑張っておけば退職後の失業手当が多くなるという計算もあった。
それなりの給料をもらっている人なら、残業しなくても失業保険の受給上限額に達しているから影響はしないだろう。
しかし俺のような薄給では、退職前の半年間にどれだけ残業したかで失業保険の受給額が変わる。
退職後の半年程度は失業保険が頼りになるので、少しでも多く残業しておいた方が得をするというわけだ。
ある土曜、会社に行ったらポンちゃんが来ていた。
ポンちゃんの仕事のその後を聞いたのだが、相変わらず専門外の仕事で苦労しているそうだ。
その苦労話が出るかと思いきや、ポンちゃんは意外なことを言い出した。
「まずいんですよ、今田が会社来なくなっちゃったんです。
今週は3日も休んでるような状態で」
今田は俺の後輩でポンちゃんと一緒の場所に派遣に出されているのだが、休み気味だという。
体調不良らしいが具体的な病名を言うこてゃなく、おそらく無理な仕事をさせられていることで精神的にヤバくなっているのだろう。
ポンちゃんは吐き捨てるように言った。
「だから何度も黒井に言ったんですよ、我々の技術で出来る内容じゃないって。
このままだと今田は辞めちゃうんじゃないですかね」
ほかに仕事がない以上、無理でもなんでも仕事は断わらないというのが会社の方針らしい。
派遣先から突っ返されれば別だが、それまで仕事を手放すようなことはせず放置するようだ。
それに気づいたポンちゃんは派遣先の上の人に実状を伝えたそうだが、反応は鈍かったそうだ。
なぜ派遣先がポンちゃん達にこだわるのかは謎だ。
常識で考えればもっと相応しい人を別の会社から選べばいいだけだ。
この時期ならいくらでも見つかろうだろうに、なぜそれをしないのか。
なにかできない事情が向こうにあるのだろうか。
話をしているうちに、話題はいつのまにか優香ちゃんのことになった。
優香ちゃんはポンちゃんの課の後輩で、しばらく前に他社から転職してきた中途組だ。
可愛いし優しく仕事もできる優等生、ウチの会社の生え抜き女性とはレベルが違う。
情けない話だが、生え抜き組で彼女を上回れる人は一人もいないんじゃないか。
正直なところウチの会社に入ってくる新入社員は全体的にレベルが低い気がする。
それは会社に魅力がない証拠なんだろう。
そんなことを独り言のように呟いたら、すぐにポンちゃんがつっこんできた。
「女性には厳しいのに、優香ちゃんはベタ褒めなんですね。
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