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最終話 あと何回イカせてあげようか?

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 乱交会場の熱気はすでに何度も絶頂を迎えていた。快楽を極めた後の気だるささえも飲み込み、新たな快楽の入り口へと繋げていた。

 この会場にはひっきりなしに「参加者」が入ってくるため、「セックス」が絶えることはなかった。ソファやバーで休憩する人たちはいても、常に誰かが乳房や性器を口にしているという状態が保たれていた。

 湿度の高い空気中の分子の一つひとつが、セックスパワーを帯びているようだった。

 これまで味わったことない極限の快楽を体感して、赤い革張りのソファーでしばらくぐったりとしていたが、また別の男に手を引かれて別の場所に移動している。

 さっきの男よりもいくらか年上のようで体毛が多かった。30代後半くらいに見える。その男に手を引かれてたくさんの男女が交わっている間を縫うように歩いていく。その途中、バラエティ番組でよく見る有名女性タレントの、耳をつんざくような快楽への雄たけびを聞いた。数メートル行った先では、自分と歳の変わらない20代前半くらいの若い男が、社会学者としていろんな情報番組や討論番組でよく見る40代くらいの美女の顔に勢いよく射精していた。その男の激しい吐息は、いかにも我慢していたものをようやく吐き出したといった感じだった。

 カーペットの床では自分よりもいくつか若い ―― 明らかに未成年だろう ―― 16,7歳くらいの少女が正常位で30代の男に突かれていた。すぐ隣にはさらに若そうな、まだ胸も小さく身体つきも子供っぽさを残した中学生くらいの少女が同じく正常位で交わっていた。二人とも、ただ快楽に必死に耐えるしかないといった反応の仕方だった。

 男に手を引かれながら、その一連の光景を当たり前の日常だと感じてしまっていた自分に気づいて、驚いた。





 気づけば床から一段せりあがったステージのようなところに来ていた。ハリウッド映画できらびやかな女性歌手が歌っていそうな、少々派手な雰囲気だった。

 そこも当然のように人で埋め尽くされており、笑い声とも喘ぎ声ともつかない人間離れした声が爆音の音楽の狭間から聞こえてきた。普段ここは、そういったものとはかけ離れた、もっと逆の意味での楽しげな声で満たされるような場所なんだろうなとふと思った。

 隣の男が私の耳に唇が触れる近さで、ステージ上を指さしながら、“とある超有名歌手”がいるからあそこに行ってみないかと聞いてきた。

 指さされた方を見ると、確かにその人だった。4,5人の男たちに囲まれて楽しげなその人は、日本国民のほぼ全員がその人の曲を耳にしたことがあってもおかしくないほどの人だ。しかし、いま私が目にしているその歌姫は、確実に日本国民のほぼ全員が見たことがないであろう姿だった。

 彼女は素だった。なにせまず全裸だったし、テレビで見たことがないような思い切った笑い方をしていたし、……両方の乳首に洗濯バサミを挟んでそれを男たちにもさせて引っ張り合ってキャッキャッ言っているし……。

「あー!これ意外と気持ちいいかも!」

 彼女は「乳首相撲」の意外な感想を、かなり声を張って伝えていた。爆音の中で、且つまだ私と彼女の間にはそれなりに距離があるのに一際彼女の声だけが届いてきた。 

 これが彼女の「裏」か……と思った。このワンシーンで彼女が一体どれだけ性に奔放で、どれだけの男たちを相手にすれば彼女は満足するのだろう、と思った。私は今の彼女を見て、勝手に底知れない性への欲望を持っている人、すなわち絶倫な人なんだと思った。実際、彼女は「自分の性格に合っている」と言わんばかりに、もっともこのパーティを楽しんでいた。

 にわかに彼女は複数の男に揉まれ、舐められ、入れられ始めた。そのスムーズさは、まるでやりかけたトランプゲームでも再開するかのようで、少しの抵抗も滞りもなかった。あっという間に彼女は騎乗位の形で下から突かれた。

 下から突き上げられたことによって押し出されたような断続的な「あっ……」という声は、彼女のどの曲でも聴いたことのない「本当の声」という感じがして、同性であるにもかかわらず興奮を覚えた。「自分は実はバイなんじゃないか……?」という考えが一瞬頭をよぎったが、男のそそり立つソレと彼女のソレの接合部分に気を取られてそれだけに夢中になった。

「今、彼女のクリを舐めたらどうなるんだろう」

 そう思った時にはすでに私は彼女のクリトリスに口をつけていた。

「あ~~!!! それ気持ちいい~~!!!」

 また彼女の大きすぎる声は、はっきりと快楽を感じていることを知らせてくれた。

 すでに同性のクリトリスを舐めること対する抵抗感などはるか遠くにあった。  

 ただ、純粋に、この人にもっと気持ちよくなってほしい、と思っていた。

 知らず知らずのうちに私はこのクラブの隅々にまで響いている、激しいセックスのグルーブの虜になっていた。自分のとる行動の一つひとつがそのまま「大きなセックス」のための行動になっていた。

「あっ!! あっ!! 出ちゃう出ちゃう出ちゃう!!!」

 と彼女が絶叫して秘部から棒が引き抜かれたと同時に、顔全体に勢いよく液体が浴びせられた。

 私は思わずのけぞり、しばし放心した。

 瞬きもままならないほど顔がびしょ濡れになっていた。 

 そして、口周りについた、おしっこのような匂いのするそれを、舌でゆっくりと舐めとった。

 私の興奮は最高潮に達した。

 そして思った。

「あと何回、この人をイカせてあげようか?」
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