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EP2. 爛れた彼女たちと生徒会長争奪戦
第四話 ドSカフェをしましょう
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「今日は文化祭の出し物を決めるわよー」
穂村先生が黒板に『文化祭』という文字をチョークで書いている。
火曜日の六限、ロングホームルームの時間である。
どうやら今月はイベントが目白押しのようだ。
「先生。わたし、やりたいことがあります」
クラスメイトたちのざわめきを切り裂くように、凛とした声で有紗が言った。
いつもの無表情のまま、折り目正しくビシッと右手を上げている。
有紗がこのようにクラスの中で自己主張をするのは珍しい。
それだけやりたいことがあるのだろうか。
「コンセプトカフェをやりたいのです」
ほう、コンカフェとな。
確かに文化祭といえば模擬店、模擬店といえばカフェというのは定番だが、はて、有紗はどんなコンセプトのカフェをご所望なのだろうか。
「やっぱりメイドカフェなんじゃない?」
深雪が実に安直なことを言う。
確かに有紗は事実上のメイドであるからお似合いではあるし、制服だってわざわざ文化祭のために用意するまでもなく綾小路家の侍女服を借りてくればいい。
とはいえ、有紗だぞ。それではあまりに普通すぎないか。
「セトさまはわたしのことをなんだと思ってらっしゃるのですか?」
有紗に冷たい目で見られる。
くそ、コイツも人前ではちょっとツンツン寄りなんだよな。
そのまま冷たい口調で罵ってほしい。
「まず、メニューについてですが、カキ氷などの氷菓を中心とします」
有紗がその場に立ち上がり、人差し指を立てる。
その一、ということだろうか。
確かに氷菓であれば火も使わないし、学校側の許可は取りやすそうだ。
意外とまともなアイディアに思えるが……。
「そして、その上で従業員は男女問わず水着姿とします! 夏カフェです!」
力強く宣言しながら、今度は中指を立てる。
その二、というよりはブイサインをしているようにも見える。
おお! ――と、主に男子を中心に歓声が起こった。
やっぱりこういう展開になるのか。
当然、女子たちは露骨に嫌そうな顔をしているが、提案している有紗自身が女子であるために声高に非難を口にする者はいないようだ。
「水着は学校指定の水着? それとも私物?」
穂村先生が黒板に『夏カフェ』『氷菓』『水着』と書いている。
先生的には問題なしという判断であるらしい。
まあ、別に意外ではないが……先生が問題なくとも、学校的にはいけるのか?
「せ、先生は水着着るんですか!?」
隣の席の名も知らぬ男子生徒が、勢いよく手をあげながら訊く。
先生は半眼になりながら不敵な笑みを浮かべ、しなを作りながらポーズを取った。
「先生の水着姿なんて、あなたたちにはちょっと刺激的すぎるわよ?」
ロリぺたボディが何を言っているのやら……。
しかし、俺の胸中に反して男子たちは大盛り上がりだ。
というか、先生はひとまず俺に流し目を送ってくるのをやめろ。
「お静まりください。水着の種類は自由としましょう。どちらにも需要があります」
有紗がまるでもう水着カフェが決定事項のように話を進めている。
コイツ、意外とこういう場を支配する力があるな。
もう完全に雰囲気で押し切られてしまっているのか、最初は嫌そうな顔をしていたはずの女子たちも話を聞く姿勢になっている。
「そして、もう一つ。ここでアクセントとしてトレンドを取り入れます」
「トレンド?」
穂村先生が首を傾げながら『トレンド』と黒板に書き足した。
「はい。最近、巷で流行の兆しを感じられる『接客態度の悪いカフェ』を取り入れます。つまり、水着を着た店員に罵倒されるカフェにするのです!」
おおおおお! ――教室中をどよめきが走る。
いや、いいのか? 属性を盛りすぎていて渋滞してないか?
というか、そもそも本当に学校側の許可が降りるのか?
「いいわね。それでいきましょう。先生も男の子に罵倒されるとちょっとときめいてしまうところがあるから、楽しさそうなのは分かるわ」
穂村先生が『トレンド』の下に『ドS』と書き加える。
誠に遺憾な話ではあるが、罵倒されるとゾクゾクしてしまうのは俺も大いに分かる。
くそ、有紗め、まさかそれが狙いか……?
それと、先生は俺に向かってウインクするのをやめろ、マジで。
「くだらない。あまりに下品すぎて吐き気がするわ」
隣の席で、優那が心の底からつまらなさそうに言った。
ただ、ツンツン状態の彼女の言動はどちらかというと本心と反対のことを言っていることも多いので、現状を楽しんでいる可能性は多いにあった。
「わたし、ちょっとセトくんとかに冷たくされたらテンションあがるかも……」
「ええ、なんで? あんな地味な感じのがいいの?」
「地味だからいいんでしょ? ギャップよ、ギャップ」
なんか後ろのほうでボソボソと言われてる。
折りにつけて方々から言われている気がするが、そんなに地味か……?
「セッちゃんも金髪にしてみる?」
深雪がニヤニヤとしながら俺の背中を小突いてくる。
否定はしてくれないところをみるに、深雪から見てもやはり地味なのか。
もうこのあたりについては受け入れていくしかないようだな……。
「それじゃ、出し物はこれで行くとして、実行委員を決めていくわよー」
穂村先生がサクサクと進行していく。
というか、マジでこれで行くんだ。
本当に大丈夫か? 学校側が許可するとはとても思えんのだが……。
「もちろん、実行委員はわたしがやります。補佐として、セトさまと塚本さまを任命させていただいてもよろしいでしょうか」
有紗が俺たちのほうを見ながら言った。
くそ、俺も巻き込むつもりか。
とはいえ、俺の目の届かないところで有紗を暴走させるのも怖くはあるな。
「はいはーい! やりまーす!」
深雪は乗り気だ。
いったい俺たちは何をさせられるのだろうか。
というか、マジで大丈夫なんだろうな。
学校側の許可を取りつけるところからスタートとかだったらイヤだなぁ……。
穂村先生が黒板に『文化祭』という文字をチョークで書いている。
火曜日の六限、ロングホームルームの時間である。
どうやら今月はイベントが目白押しのようだ。
「先生。わたし、やりたいことがあります」
クラスメイトたちのざわめきを切り裂くように、凛とした声で有紗が言った。
いつもの無表情のまま、折り目正しくビシッと右手を上げている。
有紗がこのようにクラスの中で自己主張をするのは珍しい。
それだけやりたいことがあるのだろうか。
「コンセプトカフェをやりたいのです」
ほう、コンカフェとな。
確かに文化祭といえば模擬店、模擬店といえばカフェというのは定番だが、はて、有紗はどんなコンセプトのカフェをご所望なのだろうか。
「やっぱりメイドカフェなんじゃない?」
深雪が実に安直なことを言う。
確かに有紗は事実上のメイドであるからお似合いではあるし、制服だってわざわざ文化祭のために用意するまでもなく綾小路家の侍女服を借りてくればいい。
とはいえ、有紗だぞ。それではあまりに普通すぎないか。
「セトさまはわたしのことをなんだと思ってらっしゃるのですか?」
有紗に冷たい目で見られる。
くそ、コイツも人前ではちょっとツンツン寄りなんだよな。
そのまま冷たい口調で罵ってほしい。
「まず、メニューについてですが、カキ氷などの氷菓を中心とします」
有紗がその場に立ち上がり、人差し指を立てる。
その一、ということだろうか。
確かに氷菓であれば火も使わないし、学校側の許可は取りやすそうだ。
意外とまともなアイディアに思えるが……。
「そして、その上で従業員は男女問わず水着姿とします! 夏カフェです!」
力強く宣言しながら、今度は中指を立てる。
その二、というよりはブイサインをしているようにも見える。
おお! ――と、主に男子を中心に歓声が起こった。
やっぱりこういう展開になるのか。
当然、女子たちは露骨に嫌そうな顔をしているが、提案している有紗自身が女子であるために声高に非難を口にする者はいないようだ。
「水着は学校指定の水着? それとも私物?」
穂村先生が黒板に『夏カフェ』『氷菓』『水着』と書いている。
先生的には問題なしという判断であるらしい。
まあ、別に意外ではないが……先生が問題なくとも、学校的にはいけるのか?
「せ、先生は水着着るんですか!?」
隣の席の名も知らぬ男子生徒が、勢いよく手をあげながら訊く。
先生は半眼になりながら不敵な笑みを浮かべ、しなを作りながらポーズを取った。
「先生の水着姿なんて、あなたたちにはちょっと刺激的すぎるわよ?」
ロリぺたボディが何を言っているのやら……。
しかし、俺の胸中に反して男子たちは大盛り上がりだ。
というか、先生はひとまず俺に流し目を送ってくるのをやめろ。
「お静まりください。水着の種類は自由としましょう。どちらにも需要があります」
有紗がまるでもう水着カフェが決定事項のように話を進めている。
コイツ、意外とこういう場を支配する力があるな。
もう完全に雰囲気で押し切られてしまっているのか、最初は嫌そうな顔をしていたはずの女子たちも話を聞く姿勢になっている。
「そして、もう一つ。ここでアクセントとしてトレンドを取り入れます」
「トレンド?」
穂村先生が首を傾げながら『トレンド』と黒板に書き足した。
「はい。最近、巷で流行の兆しを感じられる『接客態度の悪いカフェ』を取り入れます。つまり、水着を着た店員に罵倒されるカフェにするのです!」
おおおおお! ――教室中をどよめきが走る。
いや、いいのか? 属性を盛りすぎていて渋滞してないか?
というか、そもそも本当に学校側の許可が降りるのか?
「いいわね。それでいきましょう。先生も男の子に罵倒されるとちょっとときめいてしまうところがあるから、楽しさそうなのは分かるわ」
穂村先生が『トレンド』の下に『ドS』と書き加える。
誠に遺憾な話ではあるが、罵倒されるとゾクゾクしてしまうのは俺も大いに分かる。
くそ、有紗め、まさかそれが狙いか……?
それと、先生は俺に向かってウインクするのをやめろ、マジで。
「くだらない。あまりに下品すぎて吐き気がするわ」
隣の席で、優那が心の底からつまらなさそうに言った。
ただ、ツンツン状態の彼女の言動はどちらかというと本心と反対のことを言っていることも多いので、現状を楽しんでいる可能性は多いにあった。
「わたし、ちょっとセトくんとかに冷たくされたらテンションあがるかも……」
「ええ、なんで? あんな地味な感じのがいいの?」
「地味だからいいんでしょ? ギャップよ、ギャップ」
なんか後ろのほうでボソボソと言われてる。
折りにつけて方々から言われている気がするが、そんなに地味か……?
「セッちゃんも金髪にしてみる?」
深雪がニヤニヤとしながら俺の背中を小突いてくる。
否定はしてくれないところをみるに、深雪から見てもやはり地味なのか。
もうこのあたりについては受け入れていくしかないようだな……。
「それじゃ、出し物はこれで行くとして、実行委員を決めていくわよー」
穂村先生がサクサクと進行していく。
というか、マジでこれで行くんだ。
本当に大丈夫か? 学校側が許可するとはとても思えんのだが……。
「もちろん、実行委員はわたしがやります。補佐として、セトさまと塚本さまを任命させていただいてもよろしいでしょうか」
有紗が俺たちのほうを見ながら言った。
くそ、俺も巻き込むつもりか。
とはいえ、俺の目の届かないところで有紗を暴走させるのも怖くはあるな。
「はいはーい! やりまーす!」
深雪は乗り気だ。
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