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EP1. 俺たちがオトナになってしまうまで
第二四話 大事な相談
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木曜日、その日の学業を終えて家に帰ると、一足先に帰ってきていたらしい優那が何やら神妙な顔つきでテーブルの席に座っていた。
「実は、セイくんに相談したいことがあるんですの」
俺の姿を見るなり、優那はそう言った。
珍しく、有紗の姿も見えなかった。
あいつのことだから、どうせ近くに控えているとは思うが……。
俺は荷物を適当に置くと、優那の対面に座った。
話しておきたいこと——ひょっとして、柳川のことだろうか。
優那の耳目には触れないように取り計らってきたつもりだったが、何処かで穴があったのかもしれない。
「話したいことというのは、その、深雪さんのことですわ」
やや伏目がちになりながら、優那が続ける。
深雪のこと……?
そういえば、先日のお見舞いのときも少し様子がおかしかったな。
もしや、何か深雪に対して思うことでもできたのだろうか。
柳川の件でないことに一抹の安堵を感じつつも、また別の不安が俺の胸に去来する。
「わたくし……」
優那は膝の上でギュッと拳を握りしめながら、必死に言葉を選んでいるようだった。
「わたくし、ずっとセイくんの童貞は誰にも渡したくないと思っておりました……」
あ、はい……。
え? この雰囲気、真面目な話……なんだよな?
「でも、最近、その気持ちが少しずつ揺らいでしまって……」
そうこぼす優那の目尻には、うっすらと涙が浮かんだ。
あ、コレ、だいぶ趣が違うけど、ひょっとしたら別れ話的なやつかもしれない。
一発目のパンチが効きすぎていて、どうにも言葉が頭に入ってこないが……。
「わたくし、わたくし……」
唇を震わせながら、やがて優那が大粒の涙を零しはじめる。
そうか。やはり、優那の気持ちにも変化があったか。
――想定はしていたことだ。
もともと優那は俺のことを本心から愛していたわけではなかったのだと思う。
他に心の拠り所がなかったから、俺に依存してしまっていた。それだけのことだ。
そして、深雪との出会いが優那の心に新たな変革をもたらした。
心を許せる友を得て、もう俺がそばにいる必要もなくなったのだろう。
それは、もちろん俺にとっては寂しいことではある。
だが、彼女のこれからの人生にとっては大きな一歩だ。
喜んであげなくては……。
俺は胸の奥に小さな穴が空くのを感じながらも、優那の言葉を待った。
優那はゆっくりと時間をかけて、そして、口を開いた。
「わたくし、深雪さんにならセイくんの童貞を差し上げても良いと思いますの」
……ん? なんて言った?
「わたくし、本当に深雪さんとの関係は大切に思っていて……」
あ、はい、それはとても良いことだと思いますが。
「どのみちわたくしはセイくんの正妻になることが確定しておりますし、それならばせめて同じ殿方を愛する身として、深雪さんにはセイくんの童貞を差し上げるくらいの義を見せるべきではないかと思って……」
え、それって義に値するの? 俺の童貞は捧げものじゃないよ?
「セイくんはどう思われますか?」
どうもこうもないわ。
そんな相談、俺にされても困る。
「わたくしは真面目にお話ししているんですのよ!?」
いや、こっちだって大真面目だわ!
そもそもなんで徹頭徹尾俺の意思が無視され続けてるんだよ!
「セイくんは深雪さんとセックスしたくないのですか!?」
や、やめろ! そういう答えにくい質問をするな!
「煮え切らないお方ですね……!」
いつの間にか優那の表情が悲しみから怒りに変わっている。
あれ? シリアスだった空気は何処に行った?
というか、前にも別の誰かにこんなこと言われたな……。
「それはわたしです」
ぬあっ!? キッチンの陰からぬっと有紗が姿を現した。
おまえ、そんなところにいたのか……。
「やっぱりもう逆レイプでもするしかないんじゃない?」
うおっ!? さらに姉貴まで!?
こいつら、気配を消す天才か……?
「確かに、ここまでセイくんの童貞が強固なものとは思いませんでしたわ。少し真面目に考えてみましょうか……」
優那が顎に手をあてながら神妙な顔で独り言ちる。
真面目に考えるって、まさかとは思うが逆レイプの話ではないだろうな。
別に初体験に夢や浪漫を持っているわけではないが、それでももうちょっとマシなシチュエーションをだな……。
「では、ごちゃごちゃ仰られずにさっさとお嬢さまでも深雪さまでも犯してください」
いや、おまえはもうちょっと言いかたを考えろ。
「実は、セイくんに相談したいことがあるんですの」
俺の姿を見るなり、優那はそう言った。
珍しく、有紗の姿も見えなかった。
あいつのことだから、どうせ近くに控えているとは思うが……。
俺は荷物を適当に置くと、優那の対面に座った。
話しておきたいこと——ひょっとして、柳川のことだろうか。
優那の耳目には触れないように取り計らってきたつもりだったが、何処かで穴があったのかもしれない。
「話したいことというのは、その、深雪さんのことですわ」
やや伏目がちになりながら、優那が続ける。
深雪のこと……?
そういえば、先日のお見舞いのときも少し様子がおかしかったな。
もしや、何か深雪に対して思うことでもできたのだろうか。
柳川の件でないことに一抹の安堵を感じつつも、また別の不安が俺の胸に去来する。
「わたくし……」
優那は膝の上でギュッと拳を握りしめながら、必死に言葉を選んでいるようだった。
「わたくし、ずっとセイくんの童貞は誰にも渡したくないと思っておりました……」
あ、はい……。
え? この雰囲気、真面目な話……なんだよな?
「でも、最近、その気持ちが少しずつ揺らいでしまって……」
そうこぼす優那の目尻には、うっすらと涙が浮かんだ。
あ、コレ、だいぶ趣が違うけど、ひょっとしたら別れ話的なやつかもしれない。
一発目のパンチが効きすぎていて、どうにも言葉が頭に入ってこないが……。
「わたくし、わたくし……」
唇を震わせながら、やがて優那が大粒の涙を零しはじめる。
そうか。やはり、優那の気持ちにも変化があったか。
――想定はしていたことだ。
もともと優那は俺のことを本心から愛していたわけではなかったのだと思う。
他に心の拠り所がなかったから、俺に依存してしまっていた。それだけのことだ。
そして、深雪との出会いが優那の心に新たな変革をもたらした。
心を許せる友を得て、もう俺がそばにいる必要もなくなったのだろう。
それは、もちろん俺にとっては寂しいことではある。
だが、彼女のこれからの人生にとっては大きな一歩だ。
喜んであげなくては……。
俺は胸の奥に小さな穴が空くのを感じながらも、優那の言葉を待った。
優那はゆっくりと時間をかけて、そして、口を開いた。
「わたくし、深雪さんにならセイくんの童貞を差し上げても良いと思いますの」
……ん? なんて言った?
「わたくし、本当に深雪さんとの関係は大切に思っていて……」
あ、はい、それはとても良いことだと思いますが。
「どのみちわたくしはセイくんの正妻になることが確定しておりますし、それならばせめて同じ殿方を愛する身として、深雪さんにはセイくんの童貞を差し上げるくらいの義を見せるべきではないかと思って……」
え、それって義に値するの? 俺の童貞は捧げものじゃないよ?
「セイくんはどう思われますか?」
どうもこうもないわ。
そんな相談、俺にされても困る。
「わたくしは真面目にお話ししているんですのよ!?」
いや、こっちだって大真面目だわ!
そもそもなんで徹頭徹尾俺の意思が無視され続けてるんだよ!
「セイくんは深雪さんとセックスしたくないのですか!?」
や、やめろ! そういう答えにくい質問をするな!
「煮え切らないお方ですね……!」
いつの間にか優那の表情が悲しみから怒りに変わっている。
あれ? シリアスだった空気は何処に行った?
というか、前にも別の誰かにこんなこと言われたな……。
「それはわたしです」
ぬあっ!? キッチンの陰からぬっと有紗が姿を現した。
おまえ、そんなところにいたのか……。
「やっぱりもう逆レイプでもするしかないんじゃない?」
うおっ!? さらに姉貴まで!?
こいつら、気配を消す天才か……?
「確かに、ここまでセイくんの童貞が強固なものとは思いませんでしたわ。少し真面目に考えてみましょうか……」
優那が顎に手をあてながら神妙な顔で独り言ちる。
真面目に考えるって、まさかとは思うが逆レイプの話ではないだろうな。
別に初体験に夢や浪漫を持っているわけではないが、それでももうちょっとマシなシチュエーションをだな……。
「では、ごちゃごちゃ仰られずにさっさとお嬢さまでも深雪さまでも犯してください」
いや、おまえはもうちょっと言いかたを考えろ。
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