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EP1. 俺たちがオトナになってしまうまで
第十三話 バレてしまいましたわ
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「セイくうぅぅぅぅぅぅんっ!」
ドバンッ! ——と、声とともに蹴破られるような勢いでリビングの扉が開かれる。
このタイミングで最も現れて欲しくないお方が到来してしまったようだ。
もちろん綾小路優那その人である。
いかにも深窓の令嬢といった風情のラグジュアリーなドレスを身に纏っているあたり、懇親会が終わったその足でこの家に駆けつけたのだろう。
優那は俺の姿を見つけるなり、ミサイルのように飛びついてきた。
「んもおぉぉっ! せっかくの土曜日がお父さまのせいで台なしですわ! もう今日は絶対に離れませんからね! このままお泊まりしていきますから! お姉さまもそれでよろしいですわね!?」
俺の体を力いっぱい抱きしめて、思うさま頬擦りをしながら勝手なことを宣っている。
姉貴は『はいはい』とでも言いたげにヒラヒラと手を振るだけだが、さて、隣に座る深雪はこれをどう見るだろう。
というか、優那からめっちゃ良い匂いがする。
朝から出かけてたはずなのにまだコレとは……絶対高級な香水つかっとるでぇ……。
「あ、綾小路……さん?」
さすがに深雪はこの状況を飲み込めていないようだった。
「……え? あ、あなた、塚本……さん?」
優那も予想外の客人の姿に完全に硬直している。
互いに互いを見つめ合って固まる二人——。
目と目が合う瞬間、好きだと気づいた……とかなんとか。
「……んんっ! こほん!」
めちゃくちゃわざとらしい咳払いをしながら、優那がすっくとその場に立ち上がった。
そして、優雅な足取りでテーブルまで赴き、長い足を組みながら椅子に座る。
「有紗、夕食の準備はまだかしら?」
「はい、ただいまご用意しておりますので、少々お待ちください」
コイツ、なんで今さら取り繕えると思ってるんだろう。
深雪も同じ感想を抱いていたらしく、冷ややかな視線を優那に向けていた。
「…………」
優那は今一度テーブルの席から立ち上がり、肩を震わせながら俺のほうに向き直った。
そして、またロケットみたいな勢いで飛びついてくる。
「うわあぁぁんっ! バレてしまいましたわああぁぁぁぁああっ!」
ご、号泣してる……。
そんなにバレるのが恥ずかしかったのか。
とりあえず、俺の服に鼻水を擦りつけるのはやめろ。
「おいたわしや……」
何故か有紗も泣いていた。
なんなのコイツら。
「あ、綾小路さんって、これが素なの?」
目の前の光景がにわかには信じられないようで、深雪はひたすら目を丸くしている。
まあ、学校での姿しか知らなければそうなるのもやむなしといったところか。
「ちょっと、ユーちゃん、あんまり大きな声出されると頭に響くからやめてぇ……」
ソファの上で寝転がっている姉貴が、珍しくうめき声をあげている。
もうだいぶ酔いが回ってきているみたいだな。
「うずずず、だって、こんなの恥ずかしすぎます。このような辱めを受けたのはセイくんに無理やりパンツを下ろされたとき以来ですわ」
幼稚園児だったころの話を蒸し返すのはやめなさい。
「な、なんだろう……綾小路さん、可愛いかも……」
しかし、羞恥に沈む優那の思いはさておき、意外にもこの姿が深雪の感性にはビビッと来てしまったようだ。
いわゆるギャップ萌えというやつなのかもしれない。
ほとんど無意識にだろうが、俺にしがみつく優那の髪をまるで小動物でもあやすかのように優しく撫でている。
「ううう、塚本さんはお優しいのですね。学校ではあんなに失礼な態度を取っていたわたくしに、このような温かいお気遣いまで……」
優那も学校外では素直なので、まんざらでもなさそうに深雪の手を受け入れている。
「あたしのことは深雪でいいよ。あたしもそのうち綾小路になるかもしれないし……」
いや、何をナチュラルに姉貴の妄言を聞き入れてるんだ。
「あら! ということは、やっぱりおつきあいされることになったのですか!?」
パッと表情を明るくして優那が顔を上げる。
なんで喜んでるの?
とりあえず、そのような事実はなかったはずだが……。
「この期におよんで強情なんじゃない……?」
深雪がめっちゃすごい目つきで睨んでくる。
そんな顔されても、俺の健全なる意思は曲げられないよ!?
「やはり、まずはセイくんのおちんちんを攻略しないといけないようですね。この堅い防壁さえ砕いてしまえば、あとは欲望の赴くままに暴れん棒が解放されるはず……!」
やめろ。股間に頬擦りをするんじゃない。
珍棒が苛ついてしまうだろうが。
「お嬢さま、今日のところはそのあたりにしてください。そろそろ夕食の準備が整います」
キッチンのほうから有紗が制止の声をかけてきた。
ひとまず助かったか。
さすがに二対一ともなると俺も部が悪い。
「仕方ありませんわね。一時休戦と参りましょうか」
「セイさまのおちんちんは食後のにデザートとしていただきましょう」
そういうのはもういいからさ……。
「そういえば、昼間にバナナ味のフラッペチーノをいただいたばかりでしたね」
いや、バナナじゃねえからな、コレは。
ドバンッ! ——と、声とともに蹴破られるような勢いでリビングの扉が開かれる。
このタイミングで最も現れて欲しくないお方が到来してしまったようだ。
もちろん綾小路優那その人である。
いかにも深窓の令嬢といった風情のラグジュアリーなドレスを身に纏っているあたり、懇親会が終わったその足でこの家に駆けつけたのだろう。
優那は俺の姿を見つけるなり、ミサイルのように飛びついてきた。
「んもおぉぉっ! せっかくの土曜日がお父さまのせいで台なしですわ! もう今日は絶対に離れませんからね! このままお泊まりしていきますから! お姉さまもそれでよろしいですわね!?」
俺の体を力いっぱい抱きしめて、思うさま頬擦りをしながら勝手なことを宣っている。
姉貴は『はいはい』とでも言いたげにヒラヒラと手を振るだけだが、さて、隣に座る深雪はこれをどう見るだろう。
というか、優那からめっちゃ良い匂いがする。
朝から出かけてたはずなのにまだコレとは……絶対高級な香水つかっとるでぇ……。
「あ、綾小路……さん?」
さすがに深雪はこの状況を飲み込めていないようだった。
「……え? あ、あなた、塚本……さん?」
優那も予想外の客人の姿に完全に硬直している。
互いに互いを見つめ合って固まる二人——。
目と目が合う瞬間、好きだと気づいた……とかなんとか。
「……んんっ! こほん!」
めちゃくちゃわざとらしい咳払いをしながら、優那がすっくとその場に立ち上がった。
そして、優雅な足取りでテーブルまで赴き、長い足を組みながら椅子に座る。
「有紗、夕食の準備はまだかしら?」
「はい、ただいまご用意しておりますので、少々お待ちください」
コイツ、なんで今さら取り繕えると思ってるんだろう。
深雪も同じ感想を抱いていたらしく、冷ややかな視線を優那に向けていた。
「…………」
優那は今一度テーブルの席から立ち上がり、肩を震わせながら俺のほうに向き直った。
そして、またロケットみたいな勢いで飛びついてくる。
「うわあぁぁんっ! バレてしまいましたわああぁぁぁぁああっ!」
ご、号泣してる……。
そんなにバレるのが恥ずかしかったのか。
とりあえず、俺の服に鼻水を擦りつけるのはやめろ。
「おいたわしや……」
何故か有紗も泣いていた。
なんなのコイツら。
「あ、綾小路さんって、これが素なの?」
目の前の光景がにわかには信じられないようで、深雪はひたすら目を丸くしている。
まあ、学校での姿しか知らなければそうなるのもやむなしといったところか。
「ちょっと、ユーちゃん、あんまり大きな声出されると頭に響くからやめてぇ……」
ソファの上で寝転がっている姉貴が、珍しくうめき声をあげている。
もうだいぶ酔いが回ってきているみたいだな。
「うずずず、だって、こんなの恥ずかしすぎます。このような辱めを受けたのはセイくんに無理やりパンツを下ろされたとき以来ですわ」
幼稚園児だったころの話を蒸し返すのはやめなさい。
「な、なんだろう……綾小路さん、可愛いかも……」
しかし、羞恥に沈む優那の思いはさておき、意外にもこの姿が深雪の感性にはビビッと来てしまったようだ。
いわゆるギャップ萌えというやつなのかもしれない。
ほとんど無意識にだろうが、俺にしがみつく優那の髪をまるで小動物でもあやすかのように優しく撫でている。
「ううう、塚本さんはお優しいのですね。学校ではあんなに失礼な態度を取っていたわたくしに、このような温かいお気遣いまで……」
優那も学校外では素直なので、まんざらでもなさそうに深雪の手を受け入れている。
「あたしのことは深雪でいいよ。あたしもそのうち綾小路になるかもしれないし……」
いや、何をナチュラルに姉貴の妄言を聞き入れてるんだ。
「あら! ということは、やっぱりおつきあいされることになったのですか!?」
パッと表情を明るくして優那が顔を上げる。
なんで喜んでるの?
とりあえず、そのような事実はなかったはずだが……。
「この期におよんで強情なんじゃない……?」
深雪がめっちゃすごい目つきで睨んでくる。
そんな顔されても、俺の健全なる意思は曲げられないよ!?
「やはり、まずはセイくんのおちんちんを攻略しないといけないようですね。この堅い防壁さえ砕いてしまえば、あとは欲望の赴くままに暴れん棒が解放されるはず……!」
やめろ。股間に頬擦りをするんじゃない。
珍棒が苛ついてしまうだろうが。
「お嬢さま、今日のところはそのあたりにしてください。そろそろ夕食の準備が整います」
キッチンのほうから有紗が制止の声をかけてきた。
ひとまず助かったか。
さすがに二対一ともなると俺も部が悪い。
「仕方ありませんわね。一時休戦と参りましょうか」
「セイさまのおちんちんは食後のにデザートとしていただきましょう」
そういうのはもういいからさ……。
「そういえば、昼間にバナナ味のフラッペチーノをいただいたばかりでしたね」
いや、バナナじゃねえからな、コレは。
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