34 / 41
第4章:【BATTLE】イツキ vs ナナ
第34話:待ち伏せ
しおりを挟む
「つぎは、東小金井。東小金井。右側の扉が開きます。」
「The next station is Higashi-Koganei. The door on the right side will open.」
考え事をしていると、いつも長く感じる帰り道も馬鹿に早く感じた。イヤホンをすることさえ忘れていたことには、さすがのイツキも自分で驚くほどだった。
駅前のコンビニでアイスコーヒーを買い、家の前に帰ってくると、アパートの入り口にもたれるようにして誰かが立っているのに気がついた。イツキは近づくと、すぐにその正体がわかった。
スタイル、オーラ、ジャスミンの香り。そこには、腕組みをしたナナが立っていた。
「あーっ!! やっと帰ってきたっ!! 結構、待ったんですけどっ!笑」
ナナの髪は浴衣用のセットのままであったが、服装はいつもの私服に戻っていた。表情は笑顔ではあったが、いつもより少し控えめだった。
「え!? ナナさん…? こんなところで、どうしたんですか?」
イツキは急な出来事に驚き、頭の整理が追いつかないままにナナに質問をした。
「どうしたも、こうしたも、ここでイツキを待ってたんじゃんっ! まっ、ゆーてわたしもさっき帰ってきたとこだから、まだ20分くらいしか待ってないけどっ! そろそろ帰ってくるんじゃないかなーって!」
ナナは手に持ったイツキと同じコンビニアイスコーヒーをしゃかしゃかっと振った。
「そ、そうなんですね。なんか、すみません…。」
ナナが自分を待っていたことはわかったが、それがなぜなのか。イツキは、目の前で起こっている状況自体が全然飲み込めていなかった。
「えっと、、何か用事がありましたか?」
「用事ってか…、イツキ最近さ、なんかわたしのこと避けてないっ?」
イツキの問いに対して、ナナは単刀直入に答えた。ナナは話題の切り込みこそ早かったが、声色は決して怒っているわけではなかった。
イツキはナナの答えにとても驚いた。たしかに、ナナのことを避けてしまっていたし、それにナナが気がつくのも不思議ではない。ただ、わざわざ家の前で待っているほど、ナナがそのことを気にしているとは思っていなかったのだ。
ナナには仲の良い友達がたくさんいる。自分に少し避けられたくらいで、そこまで気にしたりするものだろうか、とイツキは思った。一方で、それだけ気にさせてしまっていたならば、非常に申し訳ないことをしたとイツキはいたたまれない気持ちになった。
「あ、その、それは、、」
なぜ避けてしまったのかを正しく説明し謝りたいのに、まだうまく言葉がまとまらないイツキにナナが被せた。
「イツキ、わたしとこれから勝負しよっ!」
「……えっ!?」
ナナはニコッと笑っているが、イツキは何を言っているのかさっぱりわからず、変なところから声が出た。
「うけるっ! 声、裏返ってるしっ! よしっ! いくよっ!」
ナナはイツキの左手首をぐいっと掴んだかと思うと、割と早いスピードで駅の方に歩き出した。イツキの手首を握るナナの手はアイスコーヒーを持っていたせいで、少し冷たかったがその奥にたしかな温かさがあった。
「The next station is Higashi-Koganei. The door on the right side will open.」
考え事をしていると、いつも長く感じる帰り道も馬鹿に早く感じた。イヤホンをすることさえ忘れていたことには、さすがのイツキも自分で驚くほどだった。
駅前のコンビニでアイスコーヒーを買い、家の前に帰ってくると、アパートの入り口にもたれるようにして誰かが立っているのに気がついた。イツキは近づくと、すぐにその正体がわかった。
スタイル、オーラ、ジャスミンの香り。そこには、腕組みをしたナナが立っていた。
「あーっ!! やっと帰ってきたっ!! 結構、待ったんですけどっ!笑」
ナナの髪は浴衣用のセットのままであったが、服装はいつもの私服に戻っていた。表情は笑顔ではあったが、いつもより少し控えめだった。
「え!? ナナさん…? こんなところで、どうしたんですか?」
イツキは急な出来事に驚き、頭の整理が追いつかないままにナナに質問をした。
「どうしたも、こうしたも、ここでイツキを待ってたんじゃんっ! まっ、ゆーてわたしもさっき帰ってきたとこだから、まだ20分くらいしか待ってないけどっ! そろそろ帰ってくるんじゃないかなーって!」
ナナは手に持ったイツキと同じコンビニアイスコーヒーをしゃかしゃかっと振った。
「そ、そうなんですね。なんか、すみません…。」
ナナが自分を待っていたことはわかったが、それがなぜなのか。イツキは、目の前で起こっている状況自体が全然飲み込めていなかった。
「えっと、、何か用事がありましたか?」
「用事ってか…、イツキ最近さ、なんかわたしのこと避けてないっ?」
イツキの問いに対して、ナナは単刀直入に答えた。ナナは話題の切り込みこそ早かったが、声色は決して怒っているわけではなかった。
イツキはナナの答えにとても驚いた。たしかに、ナナのことを避けてしまっていたし、それにナナが気がつくのも不思議ではない。ただ、わざわざ家の前で待っているほど、ナナがそのことを気にしているとは思っていなかったのだ。
ナナには仲の良い友達がたくさんいる。自分に少し避けられたくらいで、そこまで気にしたりするものだろうか、とイツキは思った。一方で、それだけ気にさせてしまっていたならば、非常に申し訳ないことをしたとイツキはいたたまれない気持ちになった。
「あ、その、それは、、」
なぜ避けてしまったのかを正しく説明し謝りたいのに、まだうまく言葉がまとまらないイツキにナナが被せた。
「イツキ、わたしとこれから勝負しよっ!」
「……えっ!?」
ナナはニコッと笑っているが、イツキは何を言っているのかさっぱりわからず、変なところから声が出た。
「うけるっ! 声、裏返ってるしっ! よしっ! いくよっ!」
ナナはイツキの左手首をぐいっと掴んだかと思うと、割と早いスピードで駅の方に歩き出した。イツキの手首を握るナナの手はアイスコーヒーを持っていたせいで、少し冷たかったがその奥にたしかな温かさがあった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた
ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。
俺が変わったのか……
地元が変わったのか……
主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。
※他Web小説サイトで連載していた作品です
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる