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第2章:千載一遇(1/1000)のCZ(チャンスゾーン)
第9話:初めての並び打ち
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(どっちかの台でいいから何かおきろーっ!!)
ナナはハンドルを握る手から台に念を送った。強めの演出が発生すれば、男との会話のきっかけになるかもしれない、とナナは思っていたのだった。
<がたがたがた!!! がたがたがた!!!>
念のせいではなさそうであるが、しばらく経った頃、男のパチンコ台が大きく振動した。最近のパチンコ台は実に進化しており、様々な演出が取り入れられている。ワイド画面に大迫力3D、ド派手に動く役物、風だって吹く。さすがに味覚や嗅覚までは使わないが、まさに五感で楽しめるエンターテインメントだ。して、2人が打っている台は超電気砲にちなんでか、パチンコ台が大きく振動する演出が搭載されていた。
隣の爆振にビクッと驚いたナナだったが、すかさず「おっ? おっ? あつい!? 当たっちゃう感じ?」と言いたげな顔で男の台をのぞき込んだ。
「これはあるかもしれないですね。60パーくらいは期待できると思います。」
ぐいっ、と台をのぞき込んできたナナに対して、強めの演出だからといって決して油断を見せない男は冷静な顔で言った。
<ぶーーーーん、ぎゅいーーん、ぴぴぴぴぴっ!!!>
<御琴 vs クリスティーナ>
御琴が持つ能力の悪用を企てる科学者との一戦に勝てば大当たり!、といったバトルリーチの場面。
「ちょ、すみません、ちょっと近いんですけど?」
食い入るように台をのぞき込んでくるナナから身を引くように男がつぶやく。もはや、ナナはうんともすんとも言わない自分の台はそっちのけの状態だ。
「あ、ごめんごめんっ! でもさでもさっ、御琴ちゃんの華麗な活躍っぷりみたいし、やっぱここは当てたいとこじゃんっ!!」
<ぴきーん!>
「よしっ! 赤文字チャンスアップきたーっ!!」
ナナのあまりにも熱心で楽しそうな声に、冷静沈着の男もさすがにペースを乱されてきた。男がちらっとナナの顔を見ると、ほしいおもちゃを見つめる子どものように目がきらきらと輝いていた。
(同じ大学のちょっとした知り合いだとはいえ、人の台の演出でこんなに楽しめるものだろうか…)
男はこんな疑問を持ちながらも台に意識を戻した。にしても、こんなにも純粋にパチンコを楽しめるって素敵だな、と男は少しばかし嬉しい気持ちになった。
<ぎゅーーーん、びりびりびり、、きゅぴぴぴ>
<これが私の電力だーーー!!!!!>
<ばしゅーーーーん!!!!!>
怖い形相で向かってくるクリスティーナに対し御琴が手から必殺超電気砲を発射するのと同時に、男の画面に当落ボタンが出てくる。通常白色の当落ボタンだが、チャンスアップ演出で金色に輝いていた。
パチンコ・スロットにおいて"色"という要素は非常に大事である。保留、文字色、背景色、ボタンの色、その他演出のあらゆる部分が当選期待度によって色が変化するからだ。一般的には、"白、青、緑、黄、紫(ピンク)、赤、金、虹"の順でアツさに差がある。白や青だと逆にアツいなど、台によって多少の違いや特徴はあれど、金色はかなり期待していい部類だ。
もろった!!男は内心ではガッツポーズするも、あくまで落ち着いて優しくボタンを押した。
<きゅぃーーーーーん!ばーん!ぎゅいんぎゅいんぎゅいん!!!>
<ぴきぃーーーん>
<777>
「いぇーーい!!! 当たった!!当たった!! しかも7当たりじゃん! 確変あざっす!! ハイっ! 御琴ちゃん、最強!! まじで、つよかわっ!!」
画面は派手派手な電撃でいっぱいとなり、台からは風が吹いている。ナナはちょっとドヤっている男の肩を興奮気味にぽんぽん叩いた。
「まぁ、とりあえず当たりましたけど、ここから連チャンするかどうかが大事っすからね。」
男友達は少人数と深く、女友達は……いたっけな?という交際状況であるこの男。街で人目を引くくらいの美人にこんな近距離で肩を叩かれる経験なんて、これまでになかったことは想像に易い。男は、滅多に出ない7当たりの驚きもあいまって、正直どうしていいかわからず、脳内はやや混乱気味だった。
「わたし、超電気砲のアニメ自体はめちゃめちゃ好きなんだけど、パチンコとなるとちゃんと当てれたことないんだよね…。これって"継続率"どのくらいだっけ?」
ナナの右手は一応自分の台のハンドルを握り、玉は打ち出しているものの、意識の8割いやほぼ全ては当たっている男の台に向いていた。
パチンコ台は一旦当たると、連続での当たりに期待できる"RUSH(ラッシュ)"というモードに突入することがある。
「333」や「555」など奇数当たりだと、この"RUSH(ラッシュ)"に突入する可能性が高く、「777」は言わずもがなで確定である。ゆえに、パチンカーに「偶数と奇数のどちらが好きか?」と訊ねたとしたら、"偶数"と返ってくることはまずないだろう。
連続での当たりに期待できる理由は、これまでヘソ(パチンコ台中央下部の穴)に玉が入った時に「約1/319」や「約1/199」という確率で当たりを抽選していたのに対し、この"RUSH(ラッシュ)"というモードの間はヘソとは別の穴(電チュー)が開放され、そこでは「約1/99」や「約1/46」という確率で当たりの抽選が行われる。そのため、当たりが引きやすくなるのだ。これが、いわゆる"確率変動"略して"確変"っていうやつである。
そして、それぞれの台によって"RUSH(確変)"には、"継続率"というものも定められている。
「約81パーっすね。」
ナナの質問にほぼ顔は動かさず目だけナナを見て男は答えた。なるほど、つまりラッシュ中の規定回転数以内にまた当たる可能性が81%あるということだ。理論上は81%を引き続ければ、当たりはずっと続いていくということになる。
実際には、5連したら「まぁ、そこそこ。こんなもんよね!」、10連したら「結構やれたかな!!」、15連を超えたら「今日はイケてるぜ、奢るぜ!!!」、20連を超えると「周りの注目めちゃめちゃ集めちゃってるー!!!!」、25連を超えると「我、神なり。」というのがだいたいの相場感だ。
<きゅぃーーーーーん!ばばばばば!>
<きぃーーーーん!ぎゅいんぎゅいんぎゅいん!!>
「おぉっ! 当たった? 当たった?」
「はい。これは当たりましたね。」
「よぉーっ!! てか、演出めっちゃかっこよきなんですけどっ!! 写真撮ってもいいっ?? このパチンコでしか見れない御琴たんを写真に収めなければっ!!」
男に撮影の許可を求めながらも、ナナはすでにスマホのカメラを起動し構えていた。
<きぃーーーーん!きゅぴん!!!>
<がたがたがた!!!ばしゅーん!>
「また当たってんじゃん! うまっ!!やばすぎーっ! すっごい楽しそう!!」
こんなやりとりが81%継続率の中で順調に続き、台上のデータパネルは11連を数えていた。ジャラジャラジャラ~と玉が出る音も途切れることがない。ちなみに、パチンカーにとって、こんな耳福な音もそうはない。
<きゅーん!ががががががっ!>
「おーっと、これはどうだどうだっ!? またも当たっちゃうかーっ?」
ナナは体を重心ごと男の台に傾けながら横から煽る。
気づけば、男もだんだんとナナのノリが心地よくなってきていた。ずっと落ち着いていた男が手に汗を握り、体制は前のめりになっている。そして、周りに迷惑にならない程度であるが確実に声を出していた。
「いけっ! 当たっちゃえ!! 12連、いける!!」
もはや当たっている当の本人より何倍も楽しそうなナナのテンションと連チャンと積み重ねで、ボルテージが高まった男は、いつの間にかナナのような口ぶりと勢いになっていた。
ふと、男のそんな変化に気づいたナナは肘で男を軽くこづいた。
「いつもより、随分と楽しそうじゃんーっ!」
「……まぁ、そうですね。」男はふと我に返り、やや恥ずかしそうにしながら、軽く頭をかいた。
<きぃーーーーん!きゅぴん!!!>
<がたがたがた!!!ばしゅーん!>
「おし! また当たったっ!!」2人の発声はほぼ同時だった。
その後、14連まで当たりを伸ばしRUSH(確変)は終了した。
「めっちゃ続いたね!! わたしの台じゃないけど、まじで楽しかったわーっ!! てか、わたしの台、あんたが当たっている間もずっと静かなままなんですけどーっ!! パチ神様ーっ! わたし、レポートとか撮影とか色々頑張りましたよーぉ??」
抱きかかえたバッグに顔の半分を埋め、男のリザルト画面を羨ましそうに眺めながら、存在するか分からんパチ神様に不満を垂れるナナ。
当たりがひと段落したので、男はトイレに席を立った。ナナは男の当たりに続きたくて、トイレから戻ってくるまで打ち続けたが、パチ神は一向にナナの願いを聞き入れてはくれなかった。
ナナはハンドルを握る手から台に念を送った。強めの演出が発生すれば、男との会話のきっかけになるかもしれない、とナナは思っていたのだった。
<がたがたがた!!! がたがたがた!!!>
念のせいではなさそうであるが、しばらく経った頃、男のパチンコ台が大きく振動した。最近のパチンコ台は実に進化しており、様々な演出が取り入れられている。ワイド画面に大迫力3D、ド派手に動く役物、風だって吹く。さすがに味覚や嗅覚までは使わないが、まさに五感で楽しめるエンターテインメントだ。して、2人が打っている台は超電気砲にちなんでか、パチンコ台が大きく振動する演出が搭載されていた。
隣の爆振にビクッと驚いたナナだったが、すかさず「おっ? おっ? あつい!? 当たっちゃう感じ?」と言いたげな顔で男の台をのぞき込んだ。
「これはあるかもしれないですね。60パーくらいは期待できると思います。」
ぐいっ、と台をのぞき込んできたナナに対して、強めの演出だからといって決して油断を見せない男は冷静な顔で言った。
<ぶーーーーん、ぎゅいーーん、ぴぴぴぴぴっ!!!>
<御琴 vs クリスティーナ>
御琴が持つ能力の悪用を企てる科学者との一戦に勝てば大当たり!、といったバトルリーチの場面。
「ちょ、すみません、ちょっと近いんですけど?」
食い入るように台をのぞき込んでくるナナから身を引くように男がつぶやく。もはや、ナナはうんともすんとも言わない自分の台はそっちのけの状態だ。
「あ、ごめんごめんっ! でもさでもさっ、御琴ちゃんの華麗な活躍っぷりみたいし、やっぱここは当てたいとこじゃんっ!!」
<ぴきーん!>
「よしっ! 赤文字チャンスアップきたーっ!!」
ナナのあまりにも熱心で楽しそうな声に、冷静沈着の男もさすがにペースを乱されてきた。男がちらっとナナの顔を見ると、ほしいおもちゃを見つめる子どものように目がきらきらと輝いていた。
(同じ大学のちょっとした知り合いだとはいえ、人の台の演出でこんなに楽しめるものだろうか…)
男はこんな疑問を持ちながらも台に意識を戻した。にしても、こんなにも純粋にパチンコを楽しめるって素敵だな、と男は少しばかし嬉しい気持ちになった。
<ぎゅーーーん、びりびりびり、、きゅぴぴぴ>
<これが私の電力だーーー!!!!!>
<ばしゅーーーーん!!!!!>
怖い形相で向かってくるクリスティーナに対し御琴が手から必殺超電気砲を発射するのと同時に、男の画面に当落ボタンが出てくる。通常白色の当落ボタンだが、チャンスアップ演出で金色に輝いていた。
パチンコ・スロットにおいて"色"という要素は非常に大事である。保留、文字色、背景色、ボタンの色、その他演出のあらゆる部分が当選期待度によって色が変化するからだ。一般的には、"白、青、緑、黄、紫(ピンク)、赤、金、虹"の順でアツさに差がある。白や青だと逆にアツいなど、台によって多少の違いや特徴はあれど、金色はかなり期待していい部類だ。
もろった!!男は内心ではガッツポーズするも、あくまで落ち着いて優しくボタンを押した。
<きゅぃーーーーーん!ばーん!ぎゅいんぎゅいんぎゅいん!!!>
<ぴきぃーーーん>
<777>
「いぇーーい!!! 当たった!!当たった!! しかも7当たりじゃん! 確変あざっす!! ハイっ! 御琴ちゃん、最強!! まじで、つよかわっ!!」
画面は派手派手な電撃でいっぱいとなり、台からは風が吹いている。ナナはちょっとドヤっている男の肩を興奮気味にぽんぽん叩いた。
「まぁ、とりあえず当たりましたけど、ここから連チャンするかどうかが大事っすからね。」
男友達は少人数と深く、女友達は……いたっけな?という交際状況であるこの男。街で人目を引くくらいの美人にこんな近距離で肩を叩かれる経験なんて、これまでになかったことは想像に易い。男は、滅多に出ない7当たりの驚きもあいまって、正直どうしていいかわからず、脳内はやや混乱気味だった。
「わたし、超電気砲のアニメ自体はめちゃめちゃ好きなんだけど、パチンコとなるとちゃんと当てれたことないんだよね…。これって"継続率"どのくらいだっけ?」
ナナの右手は一応自分の台のハンドルを握り、玉は打ち出しているものの、意識の8割いやほぼ全ては当たっている男の台に向いていた。
パチンコ台は一旦当たると、連続での当たりに期待できる"RUSH(ラッシュ)"というモードに突入することがある。
「333」や「555」など奇数当たりだと、この"RUSH(ラッシュ)"に突入する可能性が高く、「777」は言わずもがなで確定である。ゆえに、パチンカーに「偶数と奇数のどちらが好きか?」と訊ねたとしたら、"偶数"と返ってくることはまずないだろう。
連続での当たりに期待できる理由は、これまでヘソ(パチンコ台中央下部の穴)に玉が入った時に「約1/319」や「約1/199」という確率で当たりを抽選していたのに対し、この"RUSH(ラッシュ)"というモードの間はヘソとは別の穴(電チュー)が開放され、そこでは「約1/99」や「約1/46」という確率で当たりの抽選が行われる。そのため、当たりが引きやすくなるのだ。これが、いわゆる"確率変動"略して"確変"っていうやつである。
そして、それぞれの台によって"RUSH(確変)"には、"継続率"というものも定められている。
「約81パーっすね。」
ナナの質問にほぼ顔は動かさず目だけナナを見て男は答えた。なるほど、つまりラッシュ中の規定回転数以内にまた当たる可能性が81%あるということだ。理論上は81%を引き続ければ、当たりはずっと続いていくということになる。
実際には、5連したら「まぁ、そこそこ。こんなもんよね!」、10連したら「結構やれたかな!!」、15連を超えたら「今日はイケてるぜ、奢るぜ!!!」、20連を超えると「周りの注目めちゃめちゃ集めちゃってるー!!!!」、25連を超えると「我、神なり。」というのがだいたいの相場感だ。
<きゅぃーーーーーん!ばばばばば!>
<きぃーーーーん!ぎゅいんぎゅいんぎゅいん!!>
「おぉっ! 当たった? 当たった?」
「はい。これは当たりましたね。」
「よぉーっ!! てか、演出めっちゃかっこよきなんですけどっ!! 写真撮ってもいいっ?? このパチンコでしか見れない御琴たんを写真に収めなければっ!!」
男に撮影の許可を求めながらも、ナナはすでにスマホのカメラを起動し構えていた。
<きぃーーーーん!きゅぴん!!!>
<がたがたがた!!!ばしゅーん!>
「また当たってんじゃん! うまっ!!やばすぎーっ! すっごい楽しそう!!」
こんなやりとりが81%継続率の中で順調に続き、台上のデータパネルは11連を数えていた。ジャラジャラジャラ~と玉が出る音も途切れることがない。ちなみに、パチンカーにとって、こんな耳福な音もそうはない。
<きゅーん!ががががががっ!>
「おーっと、これはどうだどうだっ!? またも当たっちゃうかーっ?」
ナナは体を重心ごと男の台に傾けながら横から煽る。
気づけば、男もだんだんとナナのノリが心地よくなってきていた。ずっと落ち着いていた男が手に汗を握り、体制は前のめりになっている。そして、周りに迷惑にならない程度であるが確実に声を出していた。
「いけっ! 当たっちゃえ!! 12連、いける!!」
もはや当たっている当の本人より何倍も楽しそうなナナのテンションと連チャンと積み重ねで、ボルテージが高まった男は、いつの間にかナナのような口ぶりと勢いになっていた。
ふと、男のそんな変化に気づいたナナは肘で男を軽くこづいた。
「いつもより、随分と楽しそうじゃんーっ!」
「……まぁ、そうですね。」男はふと我に返り、やや恥ずかしそうにしながら、軽く頭をかいた。
<きぃーーーーん!きゅぴん!!!>
<がたがたがた!!!ばしゅーん!>
「おし! また当たったっ!!」2人の発声はほぼ同時だった。
その後、14連まで当たりを伸ばしRUSH(確変)は終了した。
「めっちゃ続いたね!! わたしの台じゃないけど、まじで楽しかったわーっ!! てか、わたしの台、あんたが当たっている間もずっと静かなままなんですけどーっ!! パチ神様ーっ! わたし、レポートとか撮影とか色々頑張りましたよーぉ??」
抱きかかえたバッグに顔の半分を埋め、男のリザルト画面を羨ましそうに眺めながら、存在するか分からんパチ神様に不満を垂れるナナ。
当たりがひと段落したので、男はトイレに席を立った。ナナは男の当たりに続きたくて、トイレから戻ってくるまで打ち続けたが、パチ神は一向にナナの願いを聞き入れてはくれなかった。
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