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第3話 馬車
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「竜を倒しに行くのだとは、聞きました」
「ダランサのような戦士がいるんだ。何の心配もないと思う」
キュルンは、ダランサを横目で見ながらそう口にした。
「トワメク様は伯爵家を弟君に譲られました。なのにどうしてそんな危険な真似を」
「此度の件は、トワメク様ご自身のご提案なんだ」
ダランサが、横からわりこむ。
「ガタリアの西方に、竜の襲撃を受け廃墟になった城がある。竜は今もその城を占拠しているが、城の図書館に貴重な本があるのだそうだ。トワメク様は、その本を取り戻したいのだ」
「トワメク様がご心配です」
パムは、胸が潰れるような気持ちであった。何とかして、この行いを阻止したいが、無理だろう。自分の非力さが情けない。
そこへ強く正面から風が吹いた。まるでパムを試すような強い風。彼女の人生の歩みを無理やり止めるかのような突風だ。
「本よりも、トワメク様の方が大事です」
「あなたの気持ちはわかるけど、トワメク様が全てをお決めになったのだから、今さらどうにもならないわね」
パムは無言のまま、その場を離れた。
しばらくの間キュルンとダランサの視線を感じたが、やがて後ろをチラリと見ると、すでにこちらを見てはいない。
パムは周囲を見渡した。たくさんの馬車が集まっていたが、他の馬車から離れた場所に、御者の姿がなく、馬が3頭共ロープで木につながれた馬車があるのに気づく。
パムは徐々にそこへ近づき、誰の目も向いてないのを確認すると、その荷台に潜りこむ。
荷台に積まれた荷物の間にはさまって青い空を見上げる。季節はまさに春だった。
冬の間は難しい西への旅が、ようやくできるようになったのだ。このまま隠れて、一緒に旅にパムは加わるつもりである。
「ダランサのような戦士がいるんだ。何の心配もないと思う」
キュルンは、ダランサを横目で見ながらそう口にした。
「トワメク様は伯爵家を弟君に譲られました。なのにどうしてそんな危険な真似を」
「此度の件は、トワメク様ご自身のご提案なんだ」
ダランサが、横からわりこむ。
「ガタリアの西方に、竜の襲撃を受け廃墟になった城がある。竜は今もその城を占拠しているが、城の図書館に貴重な本があるのだそうだ。トワメク様は、その本を取り戻したいのだ」
「トワメク様がご心配です」
パムは、胸が潰れるような気持ちであった。何とかして、この行いを阻止したいが、無理だろう。自分の非力さが情けない。
そこへ強く正面から風が吹いた。まるでパムを試すような強い風。彼女の人生の歩みを無理やり止めるかのような突風だ。
「本よりも、トワメク様の方が大事です」
「あなたの気持ちはわかるけど、トワメク様が全てをお決めになったのだから、今さらどうにもならないわね」
パムは無言のまま、その場を離れた。
しばらくの間キュルンとダランサの視線を感じたが、やがて後ろをチラリと見ると、すでにこちらを見てはいない。
パムは周囲を見渡した。たくさんの馬車が集まっていたが、他の馬車から離れた場所に、御者の姿がなく、馬が3頭共ロープで木につながれた馬車があるのに気づく。
パムは徐々にそこへ近づき、誰の目も向いてないのを確認すると、その荷台に潜りこむ。
荷台に積まれた荷物の間にはさまって青い空を見上げる。季節はまさに春だった。
冬の間は難しい西への旅が、ようやくできるようになったのだ。このまま隠れて、一緒に旅にパムは加わるつもりである。
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