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第2話 謎の男
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井村の乗った飛行機は、那覇空港に到着した。空港を出て、指定されたホテルに向かう。
絵に描いたような高級ホテルで、宿泊費も飲食代も、全部今回の主催者が負担する。
サイトの説明では主催者は資産家で、人生に絶望した若者に、苦痛のない死を与えたいとの話だった。
そして死ぬ前に、生前では味わえなかった贅沢を堪能させてあげたいと書いてあったのだ。
なので井村は無料のルームサービスを存分に味わった。
今後のスケジュールは、明朝港に応募者が全員集まって、目的地の離島に向かう船に乗る予定である。
離島は普段は無人島で、沖縄本島沖にあるとしか聞いていなかった。
スマホは圏外で電話やネットは使用できないそうだ。
キャンセルした者がいなければ、井村を含めた8人の「自殺願望者」と、8人を引率する人物が1人来るというメールが、井村のスマホに届いていた。
無論8人の中に含まれる井村には自殺願望などさらさらない。
その夜はふかふかの高級ベッドで存分に寝心地を味わい、翌朝港に向かう。
よく晴れた気持ちの良い朝だ。灼熱の、真夏の太陽が降り注ぐ。
井村が港に着くと、60代ぐらいの白髪の男が目に止まった。
その男は「無人島ツアー」と書かれたプラカードを手にしている。メールに書いてあった通りだ。
今回の自殺ツアーの引率をする男だろう。彼が死ぬわけじゃないのに、その顔は曇天だった。
「はじめまして。井村です」
井村は、男に声をかけた。
「お待ちしておりました。今回引率をつとめさせていただく宇沢です。後1人だけ遅れてますので、少々お待ちください」
井村はすでに集まっている6人の男女を見た。夫婦か恋人同士らしい男女の2人連れがいる。
高校生らしい少年が1人。知的な雰囲気のメガネをかけた男性が1人。他に女性が2人いた。
2人共そこそこ美人に思えたが、片方の女性は気が強そうで、簡単にはナンパできそうに見えない。
気の強そうな女の方はショートヘアーで、何かスポーツをやってたらしく、二の腕は筋肉質である。
もう1人の女性はボブヘアーで、おとなしそうな性格だ。こっちの女なら、どうにかモノにできそうに思えた。
ただ可愛らしいのだが、痛々しいほど痩せている。拒食症なのかもしれない。
そこへ、最後の1人が現れる。その女性はサングラスをかけていたが、遠目からでも普通ではないオーラを感じた。
井村はその女から、目が離せなくなってしまう。長いつややかな髪の毛を、肩のあたりまで垂らしていた。
「倉橋です」
女はプラカードを持っていた宇沢に名乗った。
「お待ちしておりました。それではみなさん船にお乗りください。全員揃いましたので」
宇沢がそう宣告し、皆が船に乗りこんだ。さすがに自殺願望者ばかりだけあって、みな足取りが重かった。
井村も他のみんなにあわせて、わざと遅く歩みを進める。ボブヘアーのおとなしそうな女が、甲板でつまずいた。
「大丈夫ですか?」
井村は、女に声をかける。
「大丈夫です。ありがとうございます」
女は暗い顔をして、小声で答えた。そこへなぜか気の強そうなショートヘアーの女が来て、井村を睨んだ。やがて船は出港する。
最後にやって来たロングヘアーのサングラスの女性は、1人甲板の片隅に立っていた。
やはり、そうだ。女優の倉橋翠に違いないと井村は推測した。翠は彼の好きなタレントである。
出演作は、ほとんど観ていた。彼女は日本のトップ女優と断定できる人気者だ。
その翠が、何でこんな所にいるのか? ちなみに彼女は井村と同じで30歳だ。タメだから好きになった部分もある。
もう1人気になったのは、知的な雰囲気のあるメガネの男性だ。どこかで見た記憶があるが、思い出せない。
絵に描いたような高級ホテルで、宿泊費も飲食代も、全部今回の主催者が負担する。
サイトの説明では主催者は資産家で、人生に絶望した若者に、苦痛のない死を与えたいとの話だった。
そして死ぬ前に、生前では味わえなかった贅沢を堪能させてあげたいと書いてあったのだ。
なので井村は無料のルームサービスを存分に味わった。
今後のスケジュールは、明朝港に応募者が全員集まって、目的地の離島に向かう船に乗る予定である。
離島は普段は無人島で、沖縄本島沖にあるとしか聞いていなかった。
スマホは圏外で電話やネットは使用できないそうだ。
キャンセルした者がいなければ、井村を含めた8人の「自殺願望者」と、8人を引率する人物が1人来るというメールが、井村のスマホに届いていた。
無論8人の中に含まれる井村には自殺願望などさらさらない。
その夜はふかふかの高級ベッドで存分に寝心地を味わい、翌朝港に向かう。
よく晴れた気持ちの良い朝だ。灼熱の、真夏の太陽が降り注ぐ。
井村が港に着くと、60代ぐらいの白髪の男が目に止まった。
その男は「無人島ツアー」と書かれたプラカードを手にしている。メールに書いてあった通りだ。
今回の自殺ツアーの引率をする男だろう。彼が死ぬわけじゃないのに、その顔は曇天だった。
「はじめまして。井村です」
井村は、男に声をかけた。
「お待ちしておりました。今回引率をつとめさせていただく宇沢です。後1人だけ遅れてますので、少々お待ちください」
井村はすでに集まっている6人の男女を見た。夫婦か恋人同士らしい男女の2人連れがいる。
高校生らしい少年が1人。知的な雰囲気のメガネをかけた男性が1人。他に女性が2人いた。
2人共そこそこ美人に思えたが、片方の女性は気が強そうで、簡単にはナンパできそうに見えない。
気の強そうな女の方はショートヘアーで、何かスポーツをやってたらしく、二の腕は筋肉質である。
もう1人の女性はボブヘアーで、おとなしそうな性格だ。こっちの女なら、どうにかモノにできそうに思えた。
ただ可愛らしいのだが、痛々しいほど痩せている。拒食症なのかもしれない。
そこへ、最後の1人が現れる。その女性はサングラスをかけていたが、遠目からでも普通ではないオーラを感じた。
井村はその女から、目が離せなくなってしまう。長いつややかな髪の毛を、肩のあたりまで垂らしていた。
「倉橋です」
女はプラカードを持っていた宇沢に名乗った。
「お待ちしておりました。それではみなさん船にお乗りください。全員揃いましたので」
宇沢がそう宣告し、皆が船に乗りこんだ。さすがに自殺願望者ばかりだけあって、みな足取りが重かった。
井村も他のみんなにあわせて、わざと遅く歩みを進める。ボブヘアーのおとなしそうな女が、甲板でつまずいた。
「大丈夫ですか?」
井村は、女に声をかける。
「大丈夫です。ありがとうございます」
女は暗い顔をして、小声で答えた。そこへなぜか気の強そうなショートヘアーの女が来て、井村を睨んだ。やがて船は出港する。
最後にやって来たロングヘアーのサングラスの女性は、1人甲板の片隅に立っていた。
やはり、そうだ。女優の倉橋翠に違いないと井村は推測した。翠は彼の好きなタレントである。
出演作は、ほとんど観ていた。彼女は日本のトップ女優と断定できる人気者だ。
その翠が、何でこんな所にいるのか? ちなみに彼女は井村と同じで30歳だ。タメだから好きになった部分もある。
もう1人気になったのは、知的な雰囲気のあるメガネの男性だ。どこかで見た記憶があるが、思い出せない。
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