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デコイに突撃お宅訪問。

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 サイド :  愚かなデコイ・ミーナ



「お嬢様!お嬢様!起きてくださいませ!」


「…ふぇ?」


 メイドにガクガクと揺さぶられて、目が覚めた。

 ミーナ、今日の事が悲しくて、ベットでゴロゴロしてたら、いつの間にか寝ちゃってたみたい…。


「大変です!起きてください!ベルトハイド公爵令息がお見えです!急いで起きてください!よだれも拭いて!」


「ふぇ?…べると何?」


「何を言ってるんですか!!ベルトハイド公爵家のイリス令息がお見えです!!お待たせしているのでお急ぎください!!」


「…イリス?…わー!イリスが来てくれたの!?嬉しいぃー!急いで準備しなきゃ!」


「そうですよ!お急ぎください!!!」


▼△▼


 メイドの話によると、イリスは突然来てしまったからということで、馬車で待ってくれているそうだ。

 ミーナが待たせちゃってるなんて大変っ!急がなきゃー!

 慌てて準備をして、イリスの乗る馬車へと向かった。


 近づくと、イリスが降りて来た。


「やぁ。ミーナ嬢…マーテル男爵夫妻はご在宅かな?」


「イリスぅ!来てくれて嬉しい!パパとママ?多分居るよぉー!」


「…そうか、教えてくれてありがとう」


 そう言うと、イリスは右手を上に上げた。

 イリス…何をしているんだろう?

 不思議に思って、イリスの手を眺める。


 ぼーっと見ていたら、イリスの乗って来た馬車から、もう1人、とっても綺麗で格好良い男の人が降りて来た。

 それと、騎士?戦士?の格好良い人達もいっぱい来た。



 状況がわからなくて、怖くてイリスに近寄る。



 すると、イリスはミーナを落ち着かせてくれようとして、優しく両方の肩に手を乗せて、ピンと腕を伸ばした。

 イリスは優しくて綺麗で格好いい…。



「…ミーナ嬢。君はこれから真実を知る必要がある。辛いかもしれないけれど…頑張れるね?」


「…イリス…怖い。…あの人は誰?」
 そう言って、イリスと一緒に来た人を指す。


「…父だ。だから…ベルトハイド公爵だよ。君の為にも、父には…公爵には、最大限…いい子に振る舞って欲しい…」


「イリスのパパ?…似てる?」


「………」
 イリスはなんとも言えない顔をしてた。


「…ご機嫌よう。…ミーナ嬢。イリスと仲良くしてくれているみたいだね。…ありがとう。
 今日は、急にお邪魔してすまないね。
 男爵夫妻に用事があるんだ。少しお邪魔させて貰うね?」



 そう言って、優しくて綺麗で格好良い顔の、イリスのパパは、サクサクと歩いて邸に入って行った。


 慌ててミーナも後を追ったの。



▼△▼


 邸に入ると、ミーナのパパとママが大荷物を担いで、どこかへ行こうとしていた…。


 パパ…ママ?何してるの?


「おやおや、マーテル男爵と夫人。ご機嫌よう?

 そんな大荷物を持って、何処に向かわれるのかな?…どうやら、とても忙しい時に、お邪魔してしまったみたいだね?」


「…こ、これはこれは!ベルトハイド公爵様、よ、ようこそお越しくださいました…。

 ですが、い、いきなりのご訪問では、ご歓待のしようもございません…し…わ、我が家その…夏季なので、避暑に!」



「うそ!ミーナ聞いてない!まさか、ミーナに内緒で、2人だけで行くつもりだったの!?ずるーい!」


「「……!!!」」 

 文句を言うとママとパパは、凄い怖い顔でミーナの事を見てきた。


 でも、狡いものは狡いんだもん!ミーナ怒ったんだから!!


「…あぁ。ミーナ嬢は置いていくつもりだったのかもしれないね…可哀想に。

 君のパパとママは、君に内緒で知らない何処かに行くようだよ?
 それに、こんなに大荷物を持ち出すのなら、もうここには帰らない予定なのかもしれないね?」



「なんで!?パパママ!本当なの!?嘘だって言ってよ!!旅行なんて、聞いてないもん!!」



「そ、そんなわけないだろ。なぁ」

「そ、そうよ!さ、サプライズの予定だったのよミーナ。バレてしまったなら仕方ないわね。あ、貴女を驚かせたかったのよ」



 なんだ…良かった。ミーナ置いてかれちゃうのかと思っちゃった…。



「だ、そうだよ。よかったね?

 では、秘密の避暑の予定はバレてしまった事だし、そろそろ歓待してくれないかな?

 ミーナ嬢?男爵家の応接室は何処かな?」



「おうせつしつ…は、わからないけど、お客さんがいつもくるのは、あのお部屋だよ」


「…ああ。教えてくれてありがとう。
 では男爵、夫人。一緒に行こうか?」


 パパとママの顔色はとっても悪かったし、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


 なんでだろう?


 サプライズがバレちゃったのが、悲しかったのかな?

 
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