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ジーク殿下にお会いする。 ○アリス視点○

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計画実行1日目
アカデミー・昼・展望テラス。
妹・アリス視点


 ランチの時間。

 私、アリス・ベルトハイドは、計画の第1歩を推し進める。


 第二王子・ジーク殿下達が、いつも噂の男爵令嬢・ミーナ嬢を囲みながらランチを取っている、展望テラスへと顔を出す。


 展望テラスへ行き、わざとらしく兄のイリスを探すふりをする。


 もちろん、兄のイリスは見当たらない。


 兄が計画通りに動いていれば、今日はここに居るはずがない。


 辺りを見渡しても、兄が見当たらず、困った様なふりをして、従兄弟であるジーク殿下に声をかける。



「ジーク殿下…ご無沙汰しております。あの…兄のイリスが、どちらに居るかご存知ですか?」


「……ああ。…アリスか。久しぶりだな。イリスは…今日は…来ていないな…」


 久しぶりに話しかけたジーク殿下は、以前までの覇気はなく、酷く疲れた様子であった。


 兄のイリスに事前に聞いてはいたが、実際に見たジーク殿下は、別人の様に変わってしまっていた。


「左様ですか…。お教え頂き、ありがとうございます。…それと殿下、少しお話したい事があるのですが…今、お時間よろしいでしょうか…」


「…ああ。良いだろう…だが、急いでくれ……なんだか気分が優れない…」


「…承知致しました」


 そう返事をして、テラスの一団から少しだけ距離を取り、ジーク殿下に再び話しかける。


「お話しというのは、ジーク殿下…最近、ミーナ嬢と仲良くされて…」


 そこまで述べた所で、ジーク殿下が私をギッと睨み、口を開く。


「…お前もなのか…?お前も俺に説教でもする気なのか!?この俺に向かって!!!」


 いきなり人が変わったかの様に、ジーク殿下が声を張り上げる。


 …これは予想外だ。


「いえ、誤解です!私は、ミーナ嬢のおっしゃる自由恋愛は、"とても素敵な考え"だと思っておりますわ。
 ですので、ジーク殿下とミーナ嬢の関係を、私自身は応援しておりますの」


 ジーク殿下が突然怒り出した事に、少々驚いたが、毅然として、優しい口調で否定する。


「……そうか。…声を荒げて悪かった…何だか気が立ってしまって……」


 そう言って答えた殿下は、痛みに耐える様に、頭を抱え俯いてしまった。


「…いえ。ですが、殿下?…皆が同じ様に、彼女が言う"自由恋愛"という新しい考え方に、すぐに恭順出来るわけでは御座いませんわ…」


「ああ!!!そんな事は、わかってる!!!」


 再び殿下が声を荒げた。


 …殿下の様子は本当に可笑しい。だが、幸いにも話しは通じているので、構わず対話を試みる。


「では、…それが理由でミーナ嬢が、嫌がらせや虐めを受けているのはご存知ですか?」



「…ああ。…ミーナを虐めるなんて!!本当に腹立たしいっ!皆、消えれば良い!!」



 …情緒がかなり不安定。とても正気だとは思えない。



「…ええ、私もそう思いますわ。ですので私は、愛し合うお2人が結ばれるように、そういった卑劣な行為をする者達を、粛清しようと思っておりますの…」


 そう伝えるとジーク殿下は、眉間に皺を寄せ、頭を抱える。


「…そうか。それは良い。助かる…ありがとうアリス…」

 そう静かに返された。


「…いえ、けれど、粛清をするには、大義名分が必要ですわ。
 相手には高位貴族も含まれておりますし、男爵令嬢を虐めた程度の理由での粛清は、とてもでは無いですけれど、不可能ですわ」



「あぁっ!クソッ!なら、どうしたら良いと言うのだ!!!」



「…ご安心ください。この、アリスにお任せくださいませ。
 
 ですが、その為に、ジーク殿下の婚約者候補の座に、私も座らせて頂きます。

 もちろん、ジーク殿下のことは、"優しい従兄弟のお兄さま"としてしか見ておらず、恋愛感情は一切御座いませんわ。それに、血が近すぎるので、婚姻は事実上、無理に近いです。

 お従兄さまの"自由恋愛"をお助けしたい。そのただ一心で、婚約者候補となりたいのです。

 そして、婚約者候補の座に座り、無事に大義名分を得た暁には、ジーク従兄様とミーナ嬢にとっての脅威を、全て私が御してみせますわ」




 頭を抱え、微かなうめき声を上げながら、ジーク殿下が静かに答える。



「……そうか…お前っ…アリスにとって…メリットが無いように…思うが…」



「そんな事は御座いません。…ジーク殿下が王位に就く事こそが、私にとって最大のメリットですわ。ご存じでしょう?」



「…ああ。そうだったな…婚約者の件…分かった。…よろしく頼む…ミーナを…幸せにしてやりたいんだ…」



「ありがとうございます。このアリスがお手伝いさせて頂きますわ」



「…ああ。…ありがとうアリス…」



「では、お時間とらせてしまい、申し訳御座いませんでした。今日は失礼させて頂きます。
 今後進捗があったら、お知らせさせて頂きます」



「ああ…ありがとう…」



「いえ。ジーク殿下…お身体お大事になさってくださいませ。失礼致します」



 優しくて紳士的で理知的。
 そんな自慢のお従兄様だったのに…。



 王位奪取計画・第一段階。準備。
・アリスがジーク殿下の婚約者候補になる。
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