菅原一月短編集R-18

菅原一月

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本の虫

本も、喜びも、幸せも。

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ぼさぼさの頭とヨレヨレな服。
のび放題の前髪から覗いたのは、青白い肌と、ニンマリと笑う唇。
髪の毛によって隠れた瞳で、おそらくホラー小説の単行本を読んでる。

「うわぁ。北村、暗あっ。」
「国立くにたちさん。それはひどい。」

でも、話すと普通。
父親の転勤で、高校2年の春この緑ヶ原高校へ転校することになった。
緑ヶ原高校の卒業生には、古くは西洋文化を広く伝えた文学者西勝蝦三郎、指原倉之助映画監督や、最近では国際数学オリンピアで若干17歳で優勝に輝いた杉本清志などがおり、全国的に名の知られた学校であるといえよう。

お嬢様やお坊ちゃまが多く「~~ですわよ。」「~~でしょうからね。」なんて言葉が同級生から聞かれたときには、家に帰った後、鏡の前でお嬢様言葉の練習をしたもんだ。


「お父様ったら、またアヒルのボートに一緒に乗りたいといったら、アヒルのボートと湖を一つ買ってくださったのよ。」
み、みずうみ…っ!
おほほ、と返事をしながらもマジか…世界が違うと思った。
湖は極端な話だが、皆プライベートで着る服は全て一万円以上はするのだ。一着で。


比較的学校でも華やかなグループに所属させてもらうことができ(顔が派手だからかな)学校生活に馴染む事ができた。
今まで出会ったことのないような高校生らしからぬインテリジェンスな話も聞くことができたり、面白い学園にはいったもんだなぁ、と思っていた時のこと。

そう。いくらなんでも中流階級の自分とは世界が違う…。
許容できるが、ついため息の一つでも吐きたくなって、私は人気のない屋上へ向かう。




「なーんだ。先約がいたんだねー。」
頭の上から声をかけると、ボサボサの頭はブルッと震える。
こちらを見上げるが、それでも目が隠れて鼻もほぼ隠れるようなその前髪の長さって痒そうだ。

そして、彼が持っていた本をみる。
「あー。坂口安吾の『白痴』だぁ。北村そういうのも読むんだねー。」

そう話しかけると、何故かぼさぼさの頭から覗く北村の頬が紅く染まった。
(おい。何故そこで照れる。)

「北村は活字好きなの?」
そう聞くと、今まで華やかな学校の華やかな教室で一人だけ陰の気をばら撒いている北村は楽しそうに私の質問に答える。

「そっかぁ。実は私も推理小説や警察小説が好きなんだぁ。」
何人か作家をpickupすると、北村も好きな作家だったようでテンションが上がってきたらしい。
本当は活字だったら、恋愛でもホラーでも純文学でもなんでも大好きなんだけど。

「いいなぁ。」
北村の家のお父さんは、古本のコレクターで家には、大学でも一部しか所有していない貸出禁止レベルの希少本から、最近一世風靡をしたベストセラー本まで、何百冊もあるらしい。

みてみたいな…。

「北村んち、いってみたい。」
そう駄目もとで呟くと、北村は指でまぁるくOKサインを出して、その日はちょうど夏休みに入る前の午前中のみの授業だったので、その足で北村宅へと向かう。私は大人しく猫背な北村に歩調を合わせ着いていく。





「おじゃましまーす。」
そういって、立派な門をくぐるとこっちへと先導される。
贅沢な作りの純和風作りの大きな一軒家の隣に、可愛らしい小さな洋風のはなれがあった。

色ガラス入りの上質な扉をあけると、嫌いじゃない匂いが香ってくる。
時間の経過した草木の酸化臭に混じる、仄かなバニラの香り。

そして、目の前にはたくさんの本!本!本!
たくさんの本を目の前に、興奮が抑えきれなくなった私は目をきらきらさせて、その部屋に足を踏み入れる。

部屋の中には、ほこりを被っていないが年季を感じさせる本がたくさんあり、お触り了承許可を得たので慎重に触れ、表紙や奥付きを見ていく。

すごいっ!和装本もずらーっとある。
和装本とは、日本の伝統的な製法で作られた本のことを指す。

「これ、30冊しか増刷されなかった!」
その本は、古く市立小学校が尋常小学校と呼ばれていた頃の(尋常とは普通という意味)有名な先生が書いた本なのだけど、その教育のいろはと生徒を愛する気持ちに心を打たれたことがある。

「ほぉ。国立さんって、なんか変わっているね。」
北村君の頬は上がって、どうやら笑っているようだ。

確かに変わっていると言われることが多い、昔から活字が好きで、難しければ難しい程読み進めたくてたまらなくて、本屋や図書館では飽き足らず、古本屋などに足を踏み入れてしまっている。

「その本、俺も読んだけど、なんだか鼻水たれよーが、いたずらしようが神から与えられた人間は大切な子という文章は、なんだか俺の人間観を少し変えたかも。」

それからも、二人でたくさんの書物を前にして色々な話をした。
いつの間にか目の前にある書物よりも、北村君との会話に夢中になっていて時計をみて、自分が時間を忘れていたことに気づく。

「あ、北村。親心配するから、私帰る。」
そう言うと、北村君はそ、そっかと若干のどもりを見せる。
そして、家の近くまで日が落ちてきたからといって送ってくれる。


「あ~。楽しかったなぁ。」
ベッドの上で一日あったことを思い出す。
面白い男の子を見つけたな。
ぼさぼさで、服はヨレヨレだけど、本が大好きで、話も面白くて。
胸の中が温かい気持ちになる。

今までは話は聞くほうだったけど、今回は自分の好きな本の話題だからたくさん話せた。
人と情報を共有するのはなんて楽しいのだろう。
話すことによって生まれた熱がどんどん高温になっていくのは楽しくて。
もっと話していたいと思った。

あのぼさぼさの頭の中の瞳はどうなっているのだろう。
猫背の背中は、意外とがっちりしていた。
ぼさぼさの頭でヨレヨレの服だから、洗濯生乾きの臭いか汗臭さでもするのかなと思いきや無臭だった。

新しく増えたメールアドレス。


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国立さん。またうちに遊びに来てください。  北村悟


Re もちろん、お邪魔させて頂きます。  国立美鈴


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あはは。

もう、北村くん面白くてたまらんわ。
今日も今年ホラー大賞を受賞した小説について話していた。
上・中・下で3冊で相当読み応えあるんだけど、やっぱり北村くん読んでいたか。

「あの場面は、本当に怖いのは人間の心って思ったよね!」
もう、感想共有できるだけで、なんて有意義なんだろう。

しかも、北村くんが知っていて私が知っていない本の名前が出たりするんだけど、薦められて読むともうツボってツボって。

私がおすすめの恋愛小説を渡すと、「国立さんのおすすめなら……。」とボソボソいって受け取る。
北村くんは、あまり恋愛小説は読んだ事がないそうで、歴史小説が好きみたい。
彼は古墳時代の話で4時間ぐらいは喋れるとみた。

北村くんに渡した恋愛ものの小説は、いい年齢としした男性のもとに、がさつな女の子が押しかけてきてという話だ。18禁描写はあまりないものの、耽美的フェティシズムの威力に北村くんの防御壁がどう対応するか見ものである。


数日後、北村くんは本を返しにきた。
「国立さん。これ。」
本を受け取り、最後まで読んだか確認する。

「読んだよ。最後まで。」
心なしかヤケくそな返答。顔は真っ赤。でへへ。北村みたいな青坊主あおぼうすにはまだ早かったか。

「どうだった?」

「なんか、エロ小説より断然エロかったです!」
そう言い切って、北村くんは剛速球で逃げさる。

その後、からかったことを謝罪して、普段通り本の貸し借りをする。 


そんなこんなで、北村くんと出会い1年半ぐらいがたった。北村くんといる時間は段々長くなってきて、その時間は終始心地の良いものだった。

激しい討論を繰り広げても、心がほっこりするのは北村くんの柔和な性格のおかげだろうか。
ぼさぼさの頭もヨレヨレの制服も、がっちりした猫背も、口だけの微笑みも、なんだか独占しているのだけど、所有したい気持ちになってくる。

これが、好きということなのだろう。
このままでも、いいけど。もし、遠距離に移動したら、この不確かな絆で結ばれた楽しいコミュニティは消えてしまうのだろう。
そう思うと、私は北村くんを屋上に呼び出した。


「国立さん、どうしたの。屋上じゃ話せないこと?」
クラスで堂々と告白する訳にはいかない。

そろそろ雨降ってきそうだから早くと急かされ、私は両手を握って勇気を振り絞る。


「北村くん!!
ずっと、あなたのことが好きでした。付き合ってほしい。」

そうしたら、北村くんは今までみたことない程、狼狽していた。

「え、ええ!く、国立さん。ど、どういうこと?」

「そのままの意味じゃ。好きだ。付き合え!」

「く、国立さんが、お、俺とそんなはずはない。」
北村くんの、ボソボソが止まらない。ボサボサの頭をさらに手でかきまわしている。
見ている人が見たら、ついにあいつ発狂したかと指をさすだろう。

「く、国立さん。からかわないで。国立さんのような今時の女の子みたいに可愛い子が俺のこと好きなはずないじゃん!!」


えええ!!

そういって、なんと北村くんは背をうしろに向いて逃げてしまう。
呼び止めようとした時には、すっかり姿が見えなくなり、ポツ…ポッ…と雨が降り出す。

屋上は雨により濡れ、霧のように細かい雨が私を打つ。
髪の毛からは雨、瞼からは涙が流れる。
絶対、付き合えると思っていたんだけどな……自分の驕った考え方を反省し、ずぶ濡れのまま帰る。

まさかの失恋から3日3晩ひいたことのない風邪による上がったことのない熱にうなされ、私は初めて学校を休む。

4日目になり体のだるさも軽減し、登校して北村くんの背中を見つけ、駆け寄る。
「きたむ……。」

北村くんは、絶妙のタイミングで話しかけられないように私を避ける。

そんな避けなくたっていいじゃん。

こんな結果になるなら告白しなきゃ良かった。
告白したせいで、同時に唯一無二の読書仲間さえも失ってしまった。


それから、結局卒業まで北村くんは私を避ける。
彼から…小説3冊借りっぱなしだったんだけど、うまく話しかけられないから返せない。
メールの返事も「お願いだから、俺をからかわないで。」そうきたっきり一度もこない。





あれから5年たって、ひさしぶりに同窓会に顔を出したが、北村くんの姿はみれなかった。

そんなこんなで、仕事の都合で私は転勤になり荷物を整理する。
たくさんの本から、本当に持っていきたい本を選別してダンボールにつめる。

そんな時、北村君からもらった(正しくは借りた)3冊の本をみて思う。
この本とも、おさらばした方がいいかな。

こんなに、一つのものに固執する性格だっただろうか。
今だに、北村くんより好きになれる相手が見つけられなくて、なんとなく告白された人と付き合うことも合ったけれど、話していてもあの時、二人で意見を交換しあった時のような興奮も、ときめきもなくて、体も繋がずに別れた。


結局、私は気持ちに引きずられるように3冊の本をバッグにしまう。
通勤時間にでもみよう、と思って。
読んだら、その後は、売ってしまおうって。


電車の中で三冊の本を読む。割とシリアスな話なのに、なんだか北村くんのことを思い出しちゃって涙がでる。あんなに、心が通じ合っていたと思ったのに。



「鶯原~。」
自宅への最寄り駅につき、いつの間にか濡れていた頬を袖で拭って立ち上がる。
帰る途中にある古本屋さんで売ろう。

そう思って駅の階段を降りようとした瞬間、手を掴まれる。


だ、誰?
目の前には、仕立てのよさそうなスーツがやたら似合う、ツーブロックの黒髪でワイルドな色気を醸し出しているサラリーマンがいる。

ん。なんか落としたかな?と、首をかしげると、男の人は意思の強そうな瞳で私を見つめ口を開く。
まじまじみると整っている顔だわ。私は、泣くのも忘れて、その雰囲気のあるイケメンを見上げる。

「美鈴……。」
と、切なく苦しそうな甘さを含んだ声で名前を呼ばれる。

この声は、
このちょっと擦れた苦しそうな声は

「北村?」
そう呼ぶと、周りに人がいっぱいいるのに抱き寄せられる。
がっちりした胸板が服越しでも温かい。

驚いて私は、北村くんから借りていた本を駅のホームに落とす。


落ちた本を拾い、その本を片手に北村くんはまた私に語りかける。

「ねえ。美鈴。これ…期待していいの?」
そう幾分か、成長した彼が話す。
その目は、肉食獣のような目つきで、私は危険をその身で察知する。

子どもから大人になり、人間は変化する。
あの陰気を放っていた北村くんから、華やかさを感じてしまうなんて。
そして、あの良くオロオロしていた北村くんから、溢れる自信。
時は彼の構成物質まで変えてしまったのだろうか。

でも、これが北村くんの真の姿なのかもしれない。
硬い殻に覆われたエレガンスな種が、上品な花を咲かせただけなのかもしれない。
獰猛さを奥底に隠し何でもない風を装う、猫科の獣のような目つきを知らなかったといいたい所だが、そもそも私は彼の目をみたことがなかったのだ。


その日、私は彼と飲みにいくことになった。
彼になんでもないように連れて行かれたBarは、オシャレだが静かで居心地が良かった。

その中で、他愛もない話をした。
分岐点からのそれぞれの人生。就職までの経緯や、仕事について。もちろん、本についても話した。
北村くんと話せたことで、心の鬱憤がどんどん解けていくのが分かる。

「北村と話すのは、本当楽しい。」
そう告げると、北村くんのは嬉しそうに瞳を細める。

「これからも、読書友達でいたい。」
素直に言うと、北村くんの笑みが強張こわばる。

そして、北村くんに勧められて柄にもなくたくさんカクテルを飲む。
見た目も素敵で、美味しく飲みやすいカクテルで思ったより量を飲んでしまっていたらしい。

酒に耐性がない私は1杯でも、かなり酔っ払ってしまうのに――だ。

「きたむらぁ……、久々に会えてうれしい。」

「俺も美鈴に会えて嬉しい。」

美鈴……。俺の部屋、行こう?そう言われたところで、ぷつんと意識が途切れる。


お股がくすぐったくて目を覚ます。
そこには、あら立派な僧帽筋だなぁって。

「はぁんっ…!」
なんと!
良い筋肉したワイルドに成長した北村くんが私の胸を…。

って私も裸かい!!

「…ひゃうんっ。」

乳首の周りを舐めまわされ、ひやっとした所で乳首を甘噛みされる。
私の胸に愛しそうに口付ける姿は、まるで赤ちゃんのようだ。

「へ…。きたむらぁ。」
そう話しかけると、北村は意地悪な猫みたいな目で私を見上げる。
なんか、怒ってる。


「なんで。読書友達になろうなんていうの?」
俺、美鈴に告白されて落ち込んだ後、すごい努力したんだという。

「だ、だって、久々に会えて、本について話せて楽しくて。これからも話したいって。」

「じゃあ、なんであの時、俺に告ったの?もうあれ以降、平常心になれなくて、美鈴のこと女としてみていたの必死に誤魔化していたのに。」

心なしか、辛そうな顔で北村くんは呟く。

「あの後から、美鈴をみると意識しちゃって。駄目だった。」

ええ。何それ。両想いじゃないの。
何が障壁だったのよ。私達。

「でも、さっき俺の貸した小説を大切そうに読んでないている美鈴をみて、やっぱり諦められないと思った。」

ちょ。ちょ、諦めるもなにも、最初から諦めなくて良かったよ。


「俺、いい男になったでしょ?」
そう囁く重低音は、とっても色っぽくて背筋がぞくっとする。
上目遣いでこちらを見られてしまうと、鼓動が早くなるのが分かる。

私が生ツバを飲むと、ニコリと北村くんは笑い、


「俺に夢中になって……。」

と告げた。


それからは、いかに彼が優秀な雄であるかを見せ付けられた。
肉欲の感じられる感情の強い黒い瞳と目が会うと、私の体は弛緩してしまって動けなくなる。

彼の素晴らしい筋肉美も、努力が感じられるすばらしいものだったし、彼の顔も、10人の女性がみたら10人とも振り返るイケメンさである。
何故、電車で私は彼に気づかなかったのだろうと思うくらい。

そんな彼は男らしい顎を私の下乳に食い込ませ、美味しそうに乳首をすすっている。

「ひゃうっ…はぁっ…!」
私は、昔からブラジャーにすれても感じちゃうぐらい胸が敏感で、必死に声を抑えたいのだけど、敏感な部位から与えられる子宮を突き抜ける快感になすがままだった。


「美鈴ちゃん。昔、エロ小説あそびで渡してきたじゃない。俺、それにあること全部美鈴ちゃんにしたいと思っていたから。」

自分がからかって渡した本を思い出す。
直接的な表現はないが、確か好きな女性を閉じ込めてしまいたくなるほど狂おしい片思いのラブストーリーだった。


「はへ……だめらよぉ……。」

「ああいう本を男に渡したら、どうなるか身を持って教えてあげるね。」
そういって、彼の手が私の太ももをさする。


「濡れてるね…。美鈴ちゃん、感じてくれたんだ?」
そういって、濡れた愛液をすくっては見せ付けてくる。

そして、その指についた愛液を赤い舌で舐めてから、今度は私の下半身へ顔を向ける。

「ひゃうっ!!らめぇ。」
直接的な刺激が肉芽に与えられて身をよじって、抵抗するが彼は舌で蜜口を丹念に舐めまわす。


「ふぅんっ…らめ、らめ。いっちゃうよ。いっちゃう。」
私が、人生初めての逝くを経験し、余韻に浸ってると、彼は私から垂れた大量の愛液をちゅちゅっとすする。


「らめよ。感じやすくなってるから。」
そういって、彼の黒いツンツンな頭もつかんでいっているのに、激しい愛撫は止まらない。

「だめぇ。らめっていっているのに。」
私は、涙目で再度上り詰めてしまう自分が怖くて、怖くて仕方なかった。


「うわぁ。また逝っちゃったの?美鈴ちゃん。可愛すぎる。」
もう我慢できないよっていう声が聞こえて、舌ではない質量の大きいものが宛がわれる。


「はへ。…ああっあ!」
急にきた圧迫感に、ひけた腰をがっしり捕まれその質量はどんどん奥へ進み、さらにその大きさを増しているような…?

「おなかあついよぉ……。」
己の膣内にぎっちり、熱いものがはいり、下腹部は甘さの残る痛みで突然の容量にびっくりしている。

彼は、やみつきになりそっと息を荒く吐いている。

「この奥に、びゅーびゅーして冷ましてあげるからね。」
「びゅーびゅー?」

そう、といって彼は深い挿入を繰り返す。
今まで未開であった奥を押し広げられた衝撃は、甘い快感に変わってきて。
一番奥を荒々しくえぐられるだけで、膣口は反射的にその根元をぎゅっぎゅっと締め上げてしまう。

「そんなに、物欲しそうにされたら……本気でかけちゃうよ?」
もうそんな言葉を聞こえないぐらい、子宮口に彼のものがちゅぱちゅぱしているに夢中で、浅く喘ぐ私の口を彼はその唇で舌で塞ぐ。

キスをしながらの執拗な交わりでは、結合部はくちゅるくちゅると淫猥な音は出しているわ、北村くんはすごい真剣な目で私を見つめているわで頭がくらくらする。
彼の一物も、がちがちに硬くなり、亀頭がせまい子宮口をこじ開けようとするかのように鋭利につく。

「美鈴…美鈴は俺の事好きになってくれる?」

昔から、好きだったよ。

「ばか。」
そう小さく北村くんの背中をたたく。

「北村くん…わたしのことすき?」
そう見上げた彼の顔は、すっごく真っ赤で熱があるんじゃないかと思うくらいだった。


すきだ。すげえすき。
そう彼は俯いていった後、

「美鈴。強引にでも俺のものにしちゃいたい。」

自信がなくてごめん。
そういって、再度腰を押し続けてくる彼。

そんな彼の背中を私は腕を回して抱きしめる。

いいよ。


おそらく二人の障壁は、彼の自信のなさと、普段から彼をからかってばかりいた私の日ごろの行いの悪さ。


「強引に、北村のものにされたい。」
そう私が、聞こえないか聞こえるかのぎりぎりの声で話すと、北村くんの腰つきはゆるい動きから、ねっとりした動きになっていく。

「…んあっあ!ふかっ…こわ。あんっ。」
抜いている時間は短くて、亀頭がいつも最奥にふれるように、私の子宮を圧迫してくる。
深い挿入に、私の最奥ももっとおしおきして下さいといわんばかりに子宮口か下降してきて亀頭にキスをしてしまう。


「えろいよ。美鈴。こんなこと絶対他の男にしちゃ駄目だからね。」

私がその問いに返答できずにいると、彼は俺の匂いがついて取れないぐらい出してあげるからねといって、最奥でそれこそびゅーびゅーと射精した。

「はぁ…はぁ…。もしかして、美鈴もいった?」
濃厚なのかかったから嬉しかった?と、耳元でささやかれる。

その言葉にすら感じてしまい、まだ萎えることのしらない一物の根元をしぼる。


「俺も、今日萎えそうにないから、いっぱい交わろう?」
そう言われて、最奥がもうびっしょり彼の白い液で濡れているのに、彼の亀頭で愛撫される。

「美鈴のここ。俺のちゅちゅって吸ってえろいんだけど。」
もう責任持って全部受け入れてと言われて、熱い棒で胎内をつかれながら、すでに白く粘ついた精液で満タンになった子宮口に、なんども射精されてしまう。

性欲がつきるまでに、体力がつきてしまい二人で裸のまま横になる。



ぴよぴよとスズメのなく声が聞こえておきると、となりには私をぎっちり抱きしめる北村くんがいた。
その顔は、寝顔なのにもかかわらず出し切った爽快感に満ち溢れている。
体を横にすると、どろっと膣内に貯留していた精液により太ももが濡れる。


ふと見上げると、部屋には筋トレマシーンと、彼があまり好まなかったはずのファッション雑誌と、アイロンとアイロン台があった。


眺めるだけで、規則正しい生活をしていたのが分かる。


静かに目を開いた彼の耳の後ろで囁く。

ねぇ。もしかして私のためにかっこよくなってくれた?

彼の顔は瞬時に真っ赤に染まった。

ふふふと笑う私をまた下に敷き、くやしそうな目線でこちらをみる。


「からかったでしょ?」
そう怒って、彼は自分の精液でねばねばした蜜口に再度、勃起したものを突きつけてくる。


「北村は、まだ分かっていない?私のここも翻弄されているんだ。」
そう私が自分の胸をさすと、彼は拗ねた顔してぎっちり私を抱きしめる。


「だったら、一生傍にいて。ちゃんと証明して?」

「うん。」

「分かってる?手始めに、ここに俺の赤ちゃん孕んで……。」

「うん。」

何、その余裕そうな顔とまた拗ねられてしまった。


激しい性交の後、膣口が慣れない刺激にひりひりしたり、腰も抜けてしまったし、拭いても拭いても精液が垂れてきてしまって困ったりしたけど、私は満足感でいっぱいだった。


ずっと忘れられなかったあなたに会えた。
私は、また彼の部屋から3冊本を借りる。
彼の住んでいる部屋も広かったけど、一人暮らしじゃないと思えるぐらい本棚が多くてびっくりした。


3冊借りて返してを三度くらい繰り返した頃には、規則正しかった生理がこなくなってしまって、やや不安げな顔で彼のマンションを訪れる。

「も、もしかしたら、赤ちゃんできちゃったかも。」
そういうと、彼はこれでずっと一緒にいられると、嬉しそうに私を抱きしめる。そんなことなくたって一緒にいるのに。赤ちゃんは私を繋ぎとめる道具じゃないでしょ?というと、うんと素直に頷く。

そして、彼は目瞑っててといって私の左手薬指をとり、何かを嵌めた。

「俺のお姫様。結婚して下さい。」
そう得意気にまるで王子様のように彼は片膝をついて私の手をとりキスをした。



「ちなみに、うちの両親超厳しいから。北村歯食いしばっとくといいよ。」

「そ、そうなんだ。」

北村は、心なしかぷるぷる震えているようにみえる。
それをみて私はあはは、と笑う。


共有したい。
本も、喜びも、幸せも。
一つ一つの日々を君と。


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