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三章
彼の過去
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気が付くと、周りは明るくなってきていた。どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。
「おはよう。今日の天気は晴れ、洗濯物を干すのにぴったりな気温だよ。」
隣で彼が言っていた。干す洗濯物なんてないでしょ、と笑うと、久しぶりにこの機能を使う相手がいてうれしかった、と彼も笑った。すっかり、感情慣れしているみたいだ。
「そろそろ帰らないと、君の両親はとても困っていると思うよ。」
彼は私に帰るように言った。確かに、昨日は感情に任せて飛び出してきてしまったけど、冷静に考えるととんでもないことをしてしまった。一刻も早く帰らねば。
「うん、わかった。でも、ひとりで帰るのは寂しいから……」
「大丈夫、着いていくよ。」
そして私は、彼と帰路についた。彼は、この廃棄場から私の家までの道のりの近くに、元の持ち主の家があることを話してくれた。私は彼の元持ち主のことがあまり好きではなかった。最初はいい人なのかな、とか思ったりしたけど。
もちろん、その人とは会ったことはないけど、こんな素敵なロボットを捨てるなんて、きっと嫌な奴に違いない。そう思っていると、彼の足が止まった。
「どうしたの?急に止まって……」
彼の顔を見ると、ある女性と男性の二人組の方を黙って見つめていた。その女性がこちらに気づくと、男性を連れて、こちらへと向かってきた。
「あら、昔よく見た気がする顔ね。もう忘れかけてたわ。まさかこんなところで会うなんて。どうしたの?あなたの家はあちらでしょう?」
そういうと、女性は廃棄場に向かう道の方を指さした。もしかしてこの人が……?
「その通りです。ですが今は、この少女を家に送り届けている最中です。どうかお許しを・・・・・・。」
彼の顔が、酷く怯えているように見えた。
「あらまぁ……これはこれはお嬢ちゃん。こんにちは。かわいそうにねぇ、こんな出来損ないのガラクタに相手してもらうなんて……。それにしても……今は違うとはいえ、前の主に対して物申すとは……ずいぶんと偉くなったじゃない。また前みたいに・・・・・・サンドバッグにしてやってもいいんだよっ!」
そういうと女性は彼に殴りかかる素振りを見せた。
「やめてっ!!!」
私は咄嗟に彼の前に出ていた。もしかしたら殴られていたかもしれない。けれど頬に当たる寸前で女性の拳は止まった。
「な、なによこの子……こんながらくたかばったところで、なにもないのに……。もういいわ。行きましょう。」
男性は静かにうなずくと、こちらに一礼して女性とともに去っていった。あれはきっと、彼の元持ち主だ。そして、あの男性は……おそらく、彼女の新しいロボットだろう。
それにしても、サンドバッグって……一体どんな扱いを受けていたのだろう。恐る恐る彼の方を見ると、彼はホッとしたような顔をして話し始めた。
「彼女は、僕の前の主だ。最初は大切に扱われていた。けれどとても人使い……いや、ロボ使いというべきかな。とにかく荒い人で、僕一人じゃとてもできないような仕事量を押し付けられた。そしてあの男性ロボット・・・・・・新しく購入した自立志向型のロボットが家に来てから、僕は彼女のストレス解消という名目で、虐待を受けていた。命令に逆らえないように設計されていた僕は、甘んじて虐待を受け入れた。このおなかの傷も、その時についたものだ。結局彼女は、傷ついた僕をガラクタ扱いして、廃棄場に捨てていった。」
ひどいやつだろうと予想はしていたものの、まさかここまでとは。想像以上だった。そして、それと同時にある記憶がよみがえってきた。
「・・・・・・私、学校で虐めを受けていたの。」
彼はこちらを見た。
「おはよう。今日の天気は晴れ、洗濯物を干すのにぴったりな気温だよ。」
隣で彼が言っていた。干す洗濯物なんてないでしょ、と笑うと、久しぶりにこの機能を使う相手がいてうれしかった、と彼も笑った。すっかり、感情慣れしているみたいだ。
「そろそろ帰らないと、君の両親はとても困っていると思うよ。」
彼は私に帰るように言った。確かに、昨日は感情に任せて飛び出してきてしまったけど、冷静に考えるととんでもないことをしてしまった。一刻も早く帰らねば。
「うん、わかった。でも、ひとりで帰るのは寂しいから……」
「大丈夫、着いていくよ。」
そして私は、彼と帰路についた。彼は、この廃棄場から私の家までの道のりの近くに、元の持ち主の家があることを話してくれた。私は彼の元持ち主のことがあまり好きではなかった。最初はいい人なのかな、とか思ったりしたけど。
もちろん、その人とは会ったことはないけど、こんな素敵なロボットを捨てるなんて、きっと嫌な奴に違いない。そう思っていると、彼の足が止まった。
「どうしたの?急に止まって……」
彼の顔を見ると、ある女性と男性の二人組の方を黙って見つめていた。その女性がこちらに気づくと、男性を連れて、こちらへと向かってきた。
「あら、昔よく見た気がする顔ね。もう忘れかけてたわ。まさかこんなところで会うなんて。どうしたの?あなたの家はあちらでしょう?」
そういうと、女性は廃棄場に向かう道の方を指さした。もしかしてこの人が……?
「その通りです。ですが今は、この少女を家に送り届けている最中です。どうかお許しを・・・・・・。」
彼の顔が、酷く怯えているように見えた。
「あらまぁ……これはこれはお嬢ちゃん。こんにちは。かわいそうにねぇ、こんな出来損ないのガラクタに相手してもらうなんて……。それにしても……今は違うとはいえ、前の主に対して物申すとは……ずいぶんと偉くなったじゃない。また前みたいに・・・・・・サンドバッグにしてやってもいいんだよっ!」
そういうと女性は彼に殴りかかる素振りを見せた。
「やめてっ!!!」
私は咄嗟に彼の前に出ていた。もしかしたら殴られていたかもしれない。けれど頬に当たる寸前で女性の拳は止まった。
「な、なによこの子……こんながらくたかばったところで、なにもないのに……。もういいわ。行きましょう。」
男性は静かにうなずくと、こちらに一礼して女性とともに去っていった。あれはきっと、彼の元持ち主だ。そして、あの男性は……おそらく、彼女の新しいロボットだろう。
それにしても、サンドバッグって……一体どんな扱いを受けていたのだろう。恐る恐る彼の方を見ると、彼はホッとしたような顔をして話し始めた。
「彼女は、僕の前の主だ。最初は大切に扱われていた。けれどとても人使い……いや、ロボ使いというべきかな。とにかく荒い人で、僕一人じゃとてもできないような仕事量を押し付けられた。そしてあの男性ロボット・・・・・・新しく購入した自立志向型のロボットが家に来てから、僕は彼女のストレス解消という名目で、虐待を受けていた。命令に逆らえないように設計されていた僕は、甘んじて虐待を受け入れた。このおなかの傷も、その時についたものだ。結局彼女は、傷ついた僕をガラクタ扱いして、廃棄場に捨てていった。」
ひどいやつだろうと予想はしていたものの、まさかここまでとは。想像以上だった。そして、それと同時にある記憶がよみがえってきた。
「・・・・・・私、学校で虐めを受けていたの。」
彼はこちらを見た。
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