病弱少女と青年ロボット

二章

一時の休息

　廃棄場についた私と生希は、いつもの場所に座った。すると、彼が顔を除いてきた。

「大丈夫？涙が出ているね。あんなこと言って出てきてよかったのかい？君の母親、とても心配そうな顔をしていた。」

　私は彼の目を見ていると少し落ち着いてきた。けれどあんな風に出てきた以上、もう戻る気はない。

「今日はここで眠ろうかな。それにしてもあなた、感情がないっていう割にはずいぶんと心配そうな顔をするのね。それと他人の感情のこともよくわかってる。やっぱりあなたには感情があるんじゃないかな。」

「僕はこう見えても当時は高性能だったんだ。人の感情を読み取るくらいできるさ。それに僕は感情を持つようにプログラムされていない。だからどう頑張っても感情を持つことは出来ないんだよ。」

　また彼は寂しそうな顔をしてしまった。私は自分の言動にちょっとだけ反省をした。しばらくして、段々うとうとし始めた。少し睡魔が襲ってきたようだった。外はもう暗くなってきた。

「今日は疲れたから、そろそろ寝ようかな。おやすみ」

「そうだね、僕は寝ないから寝てても大丈夫だよ。おやすみ。」



　けれど、いつもと違う環境のせいか、なかなか眠りにつけない。寝ようとしてから1時間くらいたっただろうか。ごつごつとした地面に、彼の膝元を枕にして寝ているが、予想以上に体が痛い。私は一度起き上がって、座ることにした。

「そういえばずっと気になっていたことがあるんだけれど。聞いてもいいかい？」

彼は唐突に聞いてきた。このままじっとしているのもつまらないし、質問に応じることにした。

「君はなぜあの日、ここに来たんだい？こんなさびれた街、滅多に人なんて来ない。それに時々、君は胸のあたりをぎゅっと握るようだ。それと何か関係があるのかい？」

　私は驚いた。本当はもうその質問の答えを知っているんじゃないか。そう思った。本来なら、胸の辺りを握ることと、この街にやってきたことを関連付けるなんてことをしないだろうからだ。
　けれど、このまま隠していても仕方ないので、私は自分の命について話すことにした。

「私、あと1ヶ月しか生きることができないの。」

　彼は、じっと私の顔を見ていた。