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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで
ルルカに気づかれた
しおりを挟む一歩一歩強まる痛みに耐えながらアレンの後ろを歩く。アレンが話し終える頃には、ルルカの元に着いていた。
雪のような白肌に、藍色の髪のルルカラード。
ジゼレーナとはお互いに兄妹だと思っていなかったにせよ、一応元兄妹なので、バレるかもしれない。レオと対峙した時よりも緊張する。
「そちらの方は?」
ルルカ元兄はアレンの話が終わると直ぐに、私について聞いてきた。やはりこの格好は怪しいらしいが、アレンはレオに答えた時と同じく、なんでもないように答えた。
「関係者だ。念のため身を隠している。この後話を聞く予定だから、先に行くぞ」
「ああ。……ちょっと待て」
ルルカラードの返事を聞き、アレンは廊下に出ようとしたが、ルルカは私の後ろの方を見てアレンを呼び止めた。難しい顔をして口を開く。
「無傷と聞いていたのだが……」
「兵士が少し負傷したらしい。二人は無傷だ」
「そうか。よかった。ならこの血は兵士の……」
ホッとしたように言ったルルカだったが、途中で言葉を止めた。
「おい」
急に声を鋭くしたルルカは私を見ていた。
えっ。嘘。
バレました?やっぱり一応とは言え、兄妹だったから?
「怪我してるぞ」
そっちか。なぜバレた。
ジゼレーナだと気づかれなかった事に安心したが、怪我をした事の方を気づかれた。隠していた訳ではないし、気づかれても問題はないのだけども。
ルルカがさっきまで私の後ろを見ていたので振り返ると、床に赤い血が付いていた。
その血は、ガラスの溜まっている所から多くなり、私の足元まで続いている。
出所がまるわかりだ。無傷かどうかを聞いてきたのも、これを見たからなのだろう。
「ガラスが刺さったか。なぜ言わない」
ルルカが私に近付いてくる。アレンはルルカから私を遮るように立った。アレンの背中で、ルルカ元兄様が見えなくなる。
「声を知られる訳にはいかない。話さないよう言ってあった」
「律儀だな。誰か呼んで運ぼう。手当ては───」
「大丈夫だ。問題ない」
アレンはルルカの言葉を遮ると、私を抱え上げた。
浮遊感を感じて身構えたが、来るまでの雑な抱え方ではなく。乙女の憧れ、お姫様抱っこだった。膝の下には左腕が、右手は私の肩にあり、私をしっかりと支えている。私が軽いのか、アレンが筋肉なのか。たぶん両方だろう。拘束具があるので重たいだろうが、震えることも、ブレることもなく、安定している。
アレンを見るルルカは驚いた顔をしていた。
「存在を知る者は少ない方がいい」
「そうだが……そうだな。医者に診せろよ」
「ああ」
アレンはそう言うと、ルルカに背を向けて歩き出した。
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