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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで
ジゼレーナ vs レオ
しおりを挟む「彼女のお友達の料理人が用意されたものなのでしょう?レオ様や他の方からの注目を集めたくてした事ではないのかしら」
私の声は終始惚けたような感じだ。変に抑揚する事もなく自然に話す。”彼女のお友達の料理人が用意されたもの”というのは、皆が知っている事なのだろうか。
そこで私は口に手を当てた。
「まぁ。それでは、彼女が自分でしたこと……。彼女の自作自演なのかしら」
───うわぁ。
驚いたわ、というような声を出す。私の視界が少し広がった所をみると、目も丸くさせたのだろう。
レオがそれに対して言葉を返した。
「私がそれを見極められないと?彼女はそんな愚かな真似はしない。お前ではないのだ」
最後にさりげなく皮肉を言った。
「私はそんな事は致しませんわ。それに、レオ様が分からない事も、あるのではなくて?」
私は否定した。
───やりそうだけどな。
レオも、お前が言うのか的な目をしている。それも、冷たさを維持したままで。
「なら彼女」
懲りずに私は右の頬に手を当て言う。
「嫌われているのかしら?」
先程の皮肉に沈むことなく、再度彼女を攻撃した。たぶんあの皮肉は右から左へというやつだ。レオから冷たい空気が溢れた。冷気だ。冷蔵庫だ。いや、冷蔵ではなく冷凍か?
私は、顔の少し下辺りで手を合わせ、心配そうな声で話を続けた。
「大変ですわぁ、レオ様。彼女を嫌悪している人なんて、それこそ星の数より存在するでしょうに。特定なんて到底できませんわね。彼女に巻き込まる前に───」
「それこそあり得ない。お前ではないのだから」
───また言われた。
「リリアベル嬢が嫌われているとしたら、ジゼレーナ。お前にだろう。お前の言う通りであるのなら、犯人はお前ではないのか」
「ご冗談はよしてくださいな。本気で仰っているのであれば。心外ですわ、レオ様。そんなこと、私は、致しませんもの。彼女ではないのですから」
───おお。最後やり返したぞ、私。
レオ様の視線が私の左後ろ、恐らくリリアベルの方に行く。うっ。レオ様呼びが移った……。
私に視線を戻し、最後にレオは言う。
「もうこれで終わりにしろ」
レオは私の横を通り去って行った。私はレオの歩く姿を目で追っていた。さらさらの金髪が緩やかな風に揺られ、きらきらと美しく光っている。レオの向かう先には、アレンを含む見目麗しい男女に囲まれた少女がいる。少女の咳き込みは終わっていたようだが、少し遠くて表情は分からない。
そして、私の声が聞こえた。
「なぜ?あの女のどこが良いというのかしら。みんな揃いも揃ってあの女に……。考えなしにも程があるわ。あの女もあの女よ。私のレオ様に……。レオ様どころか、護衛にも、友人にも、手当たり次第に媚びを売りまくって───」
私の止まらない怒りを聞きながら、映像は終わった。
……結局パンの中身は何だったのだろうか。
地味に気になる。
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