影の守護者

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第13章 闇の中の光

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夜明け前、アストリア王国の港町メリディアン。静寂を破るように、一隻の小舟が岸を離れた。

セラとアレク、そしてエリナの三人は、「影の評議会」の手がかりを求めて、秘密裏に調査の旅に出ていた。

「本当に、ここで正しいのでしょうか」エリナが不安そうに周囲を見回しながら尋ねた。

アレクは、古びた羊皮紙の地図を見つめながら答えた。「ああ、間違いない。父から受け取った情報によると、この港町に『影の評議会』の活動拠点の一つがあるはずだ」

セラは、静かに周囲を警戒していた。彼女の鋭い直感が、何か違和感を感じ取っていた。

「王子様、エリナ様、用心してください。私たちの動きを、誰かが見ているような...」

その言葉が終わらないうちに、突然の襲撃が始まった。

「伏せろ!」セラの叫び声と共に、矢が空気を切り裂いた。

三人は咄嗟に身を低くし、近くの建物の陰に隠れた。

「くっ...まさか、ここまで早く気づかれるとは」アレクが歯ぎしりした。

セラは冷静に状況を分析していた。「3...いえ、4人。屋根の上と路地に潜んでいます」

エリナが驚いた様子で尋ねた。「どうやってそんなに詳しくわかるの?」

セラは答えなかった。彼女の過去の訓練が、今ここで生きていた。

「王子様、エリナ様、私が囮になります。その隙に、二人で安全な場所へ」

アレクが即座に反対した。「駄目だ、セラ!危険すぎる」

しかし、セラの決意は固かった。「私の役目は、あなたを守ることです。どうか、お任せください」

そう言うと、セラは素早く動き出した。彼女の動きは、まるで影のようだった。

敵の注意を引きつけながら、セラは巧みに戦いを展開していく。その姿は、まさに「影の守護者」の名に相応しかった。

アレクとエリナは、セラの指示通りに移動しようとしたが、アレクの足が止まった。

「エリナ、先に行ってくれ。私は、セラを助ける」

エリナは躊躇したが、アレクの決意を見て頷いた。「わかったわ。気をつけて」

アレクは、セラの戦いに加わった。二人の息の合った連携に、敵は徐々に押され始める。

しかし、その時だった。

「セラ、後ろ!」

アレクの警告の声と共に、セラの背後から刃が迫った。

セラは咄嗟に身をかわしたが、左腕に深い傷を負ってしまう。

「セラ!」

アレクの叫び声が響く中、セラは膝をつく。しかし、彼女の目には決して諦めの色はなかった。

「大丈夫です、王子様。これくらいの傷は...」

セラは、痛みをこらえながら立ち上がろうとした。

その時、思わぬ援軍が現れた。

エリナが、町の警備隊を連れて戻ってきたのだ。

「アレク!セラ!」

援軍の到着に、敵は撤退を始めた。

戦いが終わり、セラの傷の手当てが終わると、三人は安全な場所に身を寄せた。

「セラ、本当に大丈夫か?」アレクの声には、深い心配が滲んでいた。

セラは微笑んで答えた。「はい、心配ありません」

しかし、その表情には何か別の思いが隠されているようだった。

エリナが、静かに口を開いた。「セラ、あなたの戦い方...普通の護衛官のものじゃないわ。一体、何者なの?」

セラは、一瞬言葉に詰まった。彼女の過去。それは、誰にも明かしたくなかったものだった。

しかし、アレクの真摯な眼差しに、彼女の心の壁が崩れ始める。

「...私は、かつて特殊な訓練を受けていました」セラはゆっくりと語り始めた。「『影の守護者』と呼ばれる秘密部隊の一員として」

アレクとエリナは、息を呑んで聞いていた。

「その部隊は、『影の評議会』に対抗するために作られたものでした。しかし...」

セラの声が震える。

「ある任務で、私は大切な人を失いました。そして、部隊は解散。私は、その過去から逃れるように、普通の護衛官になったのです」

アレクは、静かにセラの手を取った。

「セラ...」

セラは、アレクの温もりに心が揺れるのを感じた。

「だから、私は誓ったのです。二度と、守るべき人を失わないと」

エリナは、複雑な表情でセラを見つめていた。

「そういうことだったのね...」

三人の間に、重い沈黙が流れる。

しかし、その沈黙を破ったのは、思わぬ物音だった。

「誰だ!」アレクが叫んだ。

闇の中から、一人の人影が現れた。

「よく来てくれた、セラ。そして、アレク王子」

その声に、セラは息を呑んだ。

「まさか...師匠!?」

そこには、かつてセラを訓練した老人の姿があった。

「お前たちに、話さねばならないことがある」老人は静かに言った。「『影の評議会』の真の目的について...そして、お前たちの運命について」

セラとアレクは、驚きの表情を浮かべながら老人を見つめた。

新たな真実が、彼らを待ち受けている。

そして、その真実は、二人の絆をさらに強くするのか、それとも...

セラは、自分の左腕の傷に触れた。

過去と現在が交錯する中、彼女の心に新たな決意が芽生えていた。
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