疑心暗鬼

dep basic

文字の大きさ
上 下
9 / 12

第8章:深まる絆、迫る影

しおりを挟む
街を襲った闇の軍勢との戦いから一月が経過した。シュン、ミカ、コウジの三人は、老人(光の守護者の長老)の指導の下、山奥の隠れ家で特訓に励んでいた。
「集中するんだ。光は、あなたたちの内なる力の現れに過ぎない」
老人の声が、静寂に包まれた森の中に響く。
シュンは目を閉じ、深く呼吸を整える。すると、彼の周りに淡い光のオーラが現れ始めた。
「そうだ、シュン。その調子だ」
ミカとコウジも同様に、それぞれ独自の光を放っている。ミカの光は優しく包み込むような温かさを、コウジの光は鋭く切り裂くような輝きを持っていた。
突然、森の奥から物音がした。
三人は一瞬で戦闘態勢に入る。
「誰だ!」シュンが叫ぶ。
木々の間から、一人の少女が現れた。長い黒髪と、どこか神秘的な雰囲気を持つ少女だ。
「私は...アヤカ。光の守護者を探していました」
老人が少女を見つめ、頷いた。
「来たか、四番目の守護者よ」
シュンたちは驚きの表情を浮かべる。
アヤカが説明を始める。
「私も、あなたたちと同じ力を持っています。でも...私の力は、まだ制御できていません」
彼女の周りに、不安定な光と闇が渦巻いていた。
老人が言う。
「アヤカの力は、光と闇の境界を操る特殊なものだ。彼女の加入により、あなたたちの力はさらに強大になるだろう」
四人は互いを見つめ、頷き合った。
その夜、彼らは火を囲んで座っていた。
アヤカが静かに話し始める。
「私は...闇の軍勢の本拠地を知っています」
全員の視線がアヤカに集中する。
「どういうことだ?」シュンが尋ねる。
アヤカは深呼吸をして続けた。
「私の父は...闇の軍勢のリーダーです」
衝撃的な告白に、場が凍りついた。
アヤカは涙ぐみながら話を続ける。
「でも、私は父の やっていることが間違いだと 分かったんです。だから...逃げ出して、あなたたちを探していました」
ミカがアヤカの手を取る。
「大丈夫よ。あなたは一人じゃない」
コウジも頷く。
「そうだ。俺たちが 仲間だ」
シュンは黙って聞いていたが、ようやく口を開いた。
「アヤカ、教えてくれ。敵の本拠地のことを」
アヤカは頷き、説明を始めた。
闇の軍勢の本拠地は、この国の最北端にある古い城だという。そこでは、世界を永遠の闇に包む儀式の準備が進められているらしい。
「儀式は、次の満月の夜に行われます」アヤカが言う。「あと一週間しかありません」
老人が重々しく言った。
「時間がない。しかし、お前たちはまだ 完全な力を引き出せていない」
シュンが立ち上がる。
「でも、行くしかないです。世界が危機なんだから」
他のメンバーも同意する。
老人は深くため息をついた。
「分かった。明日から、最後の特訓だ。そして...」
彼は古い巻物を取り出した。
「これは、光の守護者たちに伝わる秘術だ。危険は伴うが、お前たちの力を一時的に増幅させることができる」
四人は決意を新たにし、最後の準備に取り掛かった。
翌日からの特訓は、これまで以上に厳しいものだった。四人は互いに励まし合いながら、限界を超えていく。
アヤカの加入により、彼らの力の相性も徐々に良くなっていった。光と闇の境界を操る彼女の力は、他の三人の力を増幅させる効果があることが分かった。
特訓の最終日、老人が四人を呼び寄せた。
「よく頑張った。お前たちなら、きっとやれる」
シュンたちは頷く。
「しかし、忘れるな」老人の表情が厳しくなる。「闇を倒すには、光だけでは足りない。真の勝利は、闇と光のバランスを取り戻すことにある」
四人は、その言葉の意味を胸に刻んだ。
そして、運命の日が近づいてきた。
彼らは、世界の命運を左右する戦いに向けて出発の準備を始めた。
遠くの空に、不吉な雲が渦巻き始めている...。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

怪物どもが蠢く島

湖城マコト
ホラー
大学生の綿上黎一は謎の組織に拉致され、絶海の孤島でのデスゲームに参加させられる。 クリア条件は至ってシンプル。この島で二十四時間生き残ることのみ。しかしこの島には、組織が放った大量のゾンビが蠢いていた。 黎一ら十七名の参加者は果たして、このデスゲームをクリアすることが出来るのか? 次第に明らかになっていく参加者達の秘密。この島で蠢く怪物は、決してゾンビだけではない。

呪詛人形

斉木 京
ホラー
大学生のユウコは意中のタイチに近づくため、親友のミナに仲を取り持つように頼んだ。 だが皮肉にも、その事でタイチとミナは付き合う事になってしまう。 逆恨みしたユウコはインターネットのあるサイトで、贈った相手を確実に破滅させるという人形を偶然見つける。 ユウコは人形を購入し、ミナに送り付けるが・・・

もらうね

あむあむ
ホラー
少女の日常が 出会いによって壊れていく 恐怖の訪れ 読んでくださった方の日常が 非日常へと変わらないとこを願います

ZUNBE

田丸哲二
ホラー
【愛のあるホラー&バトル・ストーリー】  さしすせそのソの二つ前の「ズンビ」。それは「ゾンビ」より格上の最強の生物だった。  強酸性雨に濡れた街で宇宙から到達したウイルス性微生物(ミズウイルス)が雨水に混在し、人間が感染して最強の生物が誕生した。  それは生物学者と少年の研究により、ゾンビより二つ格上のズンビと呼ばれ、腹部の吸収器官より脳細胞のエキスを吸い取って知能と至高の快楽を得る。  しかも崩れた肉体を修復し、稀に記憶と知性を持つ者も存在した。  隼人は母親が強酸性雨に濡れて感染し嘆き苦しんだが、狂ったモンスターに殺されそうになった時、何故か他のズンビを倒して助けられ、スーパーズンビと呼んで慕い始め母の記憶が戻るのではないかと微かな希望を抱いた。  そしてスーパーズンビの力を借りて、友人の家族と一緒に生き延びようと街から逃走した。 [表紙イラスト、まかろんkさまからお借りしてます。]

#彼女を探して・・・

杉 孝子
ホラー
 佳苗はある日、SNSで不気味なハッシュタグ『#彼女を探して』という投稿を偶然見かける。それは、特定の人物を探していると思われたが、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。日が経つにつれて、そのタグの投稿が急増しSNS上では都市伝説の話も出始めていた。

【死に文字】42文字の怖い話 【ゆる怖】

灰色猫
ホラー
https://www.alphapolis.co.jp/novel/952325966/414749892 【意味怖】意味が解ると怖い話 ↑本編はこちらになります↑ 今回は短い怖い話をさらに短くまとめ42文字の怖い話を作ってみました。 本編で続けている意味が解ると怖い話のネタとして いつも言葉遊びを考えておりますが、せっかく思いついたものを 何もせずに捨ててしまうのももったいないので、備忘録として 形を整えて残していきたいと思います。 カクヨム様 ノベルアップ+様 アルファポリス様 に掲載させていただいております。 小説家になろう様は文字が少なすぎて投稿できませんでした(涙)

そこに、いる。

サキ
ホラー
日常生活で何もいないはずなのに、そこにいる気がすることはありませんか?お風呂に入っている時、家のドアを開けた時、眠っているベッドの下…。いないのに感じる恐怖とはなにか。本当は「なにか」がそこにいるのかもしれません。

処理中です...