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本章

Episode16/不安

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ちゃぽん……と湯船の湯が跳ねて肌に雫が伝い落ちる。

「ん……」
背後から不破に抱きしめられる形で湯船に浸かるあかりはすでにのぼせそうになっていた。

「あの……さわ、触ってます」
やわやわと胸を揉まれてあかりは身を捩った。

「嫌?」
嫌、とさっき放った言葉を不破はいちいち使って聞いてくる。

「嫌、なんかじゃ……」
「じゃあ触られてようか」
「……っ」
胸の先端の尖った部分を指先で摘ままれて捏ねられる。胸の形が変形するかのように揉まれるのを見下ろしていると視覚でより興奮が増す。自分の身体が不破の手で感じさせられている、それを直視すると恥ずかしさがあるのに嬉しさがこみ上がっていた。

「ぁ……」
耳たぶを甘噛みされて身体が跳ねる。その度湯が揺れて身体中が飛沫に濡れた。

「こ、ここで?」
「……どっちでもいいよ?」
色気のある瞳に見つめ返されてあかりの頬はさらに火照る。濡れた不破は無駄に色気が増す、それにいつも以上にドキドキした。それを不破が察したのかフッと笑ってくちびるを重ねてくる。

「ここでする?」
「……ぅん」
「こっち向いて……」
ちゃぷちゃぷと湯が波打つ、言われるがままあかりは不破の身体に跨るように向きを変えて前から見つめ合う形になった。正面から見つめる飛沫を舞った不破はセクシーだった。それを見つめるだけでイきそうになる、はもちろん言えない。

「ぁ……」
肉体的反応を示している不破のモノを感じて余計濡れていく。水中にいる自分の身体から溢れ出てくる分泌液は不破にわかるのだろうか、そんなことを考えていたら指先が茂みに触れてくる。

「ふ、ぁ……」
「可愛い声」
じれったいような触り方に腰が勝手に揺れた。もっと奥まで触れてほしい、そう思う。

「指入れていい?」
聞かれると恥ずかしさが増す、それでもしてほしい気持ちが勝つからあかりは素直に頷いた。それに不破はジッと見つめたまま、聞いたくせに入れようとしない。

「……ぁ、な、んで?」
「言葉で言ってよ」
「んんっ」
言えと言いながら口を塞いでくる。指先は茂みの中から膨れた芯芽を摘まんで押し撫でる。

「んぁあっ!!」
キスから逃れる様に声を発したら不破はクスリと笑うだけで指の動きは止めない。溢れる声を飲み込むようにキスを続けてきた。

「ん、んんっ――」
じれったい歯がゆい愛撫が続く、唇は執拗に求められて逃げ場所がない。求めているものを言葉にしたくても言えない、それでもこんな風に求められたらキスをやめてほしくない。不破とするキスがあかりは好きだった、優しくて何も考えられなくなる。その夢見心地な感覚がたまらなくなる。

「ぁ――ん、い、つきさ……」
「……なに?」
浴室内に響く声はいつもと違って聞こえる。イヤホンで聞いているように耳から頭に響くようだ。

「触って……もっと、奥まで」
見えないところまで触れてほしい、見えない部分で感じてほしい。言葉に出来ない気持ちをせめて身体から感じ取ってもらえたら……その思いで腕を首に回して身体を寄せた。
今だけは、この時だけは……不破を独り占めしたい。

今だけだから――許してほしい、あかりはそう思った。

「樹さん……」
あかりの声が吐息と共にこぼれてその声に不破は欲情した。自分を求める身体が見つめる潤んだ瞳が愛しくて抱き締め返す。肌と肌が密着して湯に包まれて熱をさらに発する。温かさ以上の熱が心地よくて溶けるようだ。

「あかり……奥で感じて」
これは一部なんだ、不破は思う。

この行為はほんの一部、あかりの中に入り込んで押し進むただの行為にすぎない。
欲しいのはその先にある、届けたいのはもっと身体の奥のその先――あかりの胸の中にどうやったら届くのか。

「んあっ!」
自分の手で感じてそのまま何も囚われない自分を受け入れるあかりを目の前で見ているだけで気持ちが昂る。こんなに胸を狂おしいほど震わせていることにあかりはどれだけ気づいているのか、いや、なにひとつ気づいていないのだろう、そう不破は感じる。
求められている、必要とされている、そう思うのに。

「あかりっ……」
名前を呼んだら熱を含んだ瞳で見つめてくる。視線は絡む、感じて酔ったような瞳でまっすぐに見つめながら「あ、ん、はぁ……」そんな婀娜やかな声をあげる。この声にどれだけ射精感を煽られるか。

「あ、ん、イくぅっ、イっちゃ……」
こぼれる吐息が艶っぽくて耳に触れると神経が過敏になる。イかせたい、自分の欲情を受け止めさせたい、何度でも。許される限り、そうしていたら届かないか、そう願うだけ。

「俺もイきそう……あかり……」
締め付けられる、繋がり合う部分から胸まで。そうして二人は一緒に果てた。


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