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忘れられない思い-3
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目尻を撫でてくる指に滲んだ涙が付着してしまった。いつも素っ気なくて冷たい感じの碧眼が優し気に見つめてくるから胸が高鳴る。
「アリシアの方が、寝てないんじゃないの?」
ヴェリルさんに言い当てられて肩をすくめてしまう。恥ずかしいが図星、全然昨夜は寝れていない。なぜあんなに心騒いで不安だったのか自分でもわからないくらい不安でたまらなかった。
二人が無事でいますように。もう会えないのは嫌だ、そう思った。
「目が赤い……」
「これは、その……」
「こんなことは別に珍しくない。ハッキリ言ってもっと危険なこともやってるし起きる。いちいち心配してたら自分の身がもたねぇぞ?」
「わか、わかってます!」
わかってる、自分でもおかしいって。心配ばかりして不安になって……。
「アリスちゃんに足りないのは信じる勇気だね~」
「え?」
笑いをなんとか堪えたらしいカルロさんがため息を吐きながらそんなことを言う。
「はぁ……面白かった。アリスちゃんはちょっと周りが見えなくなると大変だね。心配性もほどほどがいいよ?ヴェリルじゃないけど、誰彼心配してたら自分の身が本当に持たなくなる。そこにあれも心配、これも心配……なのに自分のことは後回し……周りが心配になるよ」
「す、すみません……」
「不安な時だから笑顔でいる。そこに笑顔で待っていてくれる人がいるって思えるから帰りたいってなるんだよ?泣かれたら気になって余計不安にさせるだろ?」
カルロさんの言葉が今日は胸に重くのしかかる。自分ではそこまでの気持ちをはかれなくて情けなくなった。相手のために心配していたなんて嘘、自分のために、自分ばかりの気持ちで心配していたんだ、私は。
(不安にさせないで……そう思った私の気持ちが余計に相手を不安にさせてしまう……)
残される者、置いていく者……それぞれの気持ちがある。それでも……思いは一緒なのか。
「ごめんなさい」
「いやでも泣いてくれる子がいるってのもまた一憂だよね?」
見直しかけたカルロさんだけど、安定の軽い口調でそんな風に揶揄うから頬が赤くなってしまう。それにヴェリルさんも苦笑しているけれど、迷惑そうではない。
「ちゃんと……怪我、手当してくださいね?」
「ああ」
素直に頷かれてまた熱くなる。なんだか本当に手懐けられた感……どこか感動まである。
「……そ、それでは、その……かえ、帰ります」
急に居た堪れなくなって後退りしながらその場を離れようとしたらカルロさんに呼ばれた。
「待って待って。まだ森も街も落ち着かない。ひとりで帰っちゃダメだよ。ジル、送ってあげて」
「え!だ、大丈夫です!」
「ジルは昨日エリザちゃんもほったらかしでしょ?ちゃんと送り届けるようにアリスちゃんと約束したくせにそれも破ってる……誓いのキス、したんだろぉ?」
「い、いいです!」
忘れかけていた指先のキスを蒸し返さないで!そう思って咄嗟に言い返したらそれにもまた不機嫌そうに金色の眼にジトっと見つめられる。
「……だ、だってその……お疲れでしょうし、別にいつもの帰り道だし、その……」
ゴニョゴニョ言い訳を並べていたらグイッと手を引かれた。
「わぁ!」
「送る」
「いってらっしゃ~い」
軽すぎるカルロさんの声に睨みつけるものの笑顔でスルーされて私は力強いジルベルトさんの手に引かれるがまま宿屋を後にするのだ。
「アリシアの方が、寝てないんじゃないの?」
ヴェリルさんに言い当てられて肩をすくめてしまう。恥ずかしいが図星、全然昨夜は寝れていない。なぜあんなに心騒いで不安だったのか自分でもわからないくらい不安でたまらなかった。
二人が無事でいますように。もう会えないのは嫌だ、そう思った。
「目が赤い……」
「これは、その……」
「こんなことは別に珍しくない。ハッキリ言ってもっと危険なこともやってるし起きる。いちいち心配してたら自分の身がもたねぇぞ?」
「わか、わかってます!」
わかってる、自分でもおかしいって。心配ばかりして不安になって……。
「アリスちゃんに足りないのは信じる勇気だね~」
「え?」
笑いをなんとか堪えたらしいカルロさんがため息を吐きながらそんなことを言う。
「はぁ……面白かった。アリスちゃんはちょっと周りが見えなくなると大変だね。心配性もほどほどがいいよ?ヴェリルじゃないけど、誰彼心配してたら自分の身が本当に持たなくなる。そこにあれも心配、これも心配……なのに自分のことは後回し……周りが心配になるよ」
「す、すみません……」
「不安な時だから笑顔でいる。そこに笑顔で待っていてくれる人がいるって思えるから帰りたいってなるんだよ?泣かれたら気になって余計不安にさせるだろ?」
カルロさんの言葉が今日は胸に重くのしかかる。自分ではそこまでの気持ちをはかれなくて情けなくなった。相手のために心配していたなんて嘘、自分のために、自分ばかりの気持ちで心配していたんだ、私は。
(不安にさせないで……そう思った私の気持ちが余計に相手を不安にさせてしまう……)
残される者、置いていく者……それぞれの気持ちがある。それでも……思いは一緒なのか。
「ごめんなさい」
「いやでも泣いてくれる子がいるってのもまた一憂だよね?」
見直しかけたカルロさんだけど、安定の軽い口調でそんな風に揶揄うから頬が赤くなってしまう。それにヴェリルさんも苦笑しているけれど、迷惑そうではない。
「ちゃんと……怪我、手当してくださいね?」
「ああ」
素直に頷かれてまた熱くなる。なんだか本当に手懐けられた感……どこか感動まである。
「……そ、それでは、その……かえ、帰ります」
急に居た堪れなくなって後退りしながらその場を離れようとしたらカルロさんに呼ばれた。
「待って待って。まだ森も街も落ち着かない。ひとりで帰っちゃダメだよ。ジル、送ってあげて」
「え!だ、大丈夫です!」
「ジルは昨日エリザちゃんもほったらかしでしょ?ちゃんと送り届けるようにアリスちゃんと約束したくせにそれも破ってる……誓いのキス、したんだろぉ?」
「い、いいです!」
忘れかけていた指先のキスを蒸し返さないで!そう思って咄嗟に言い返したらそれにもまた不機嫌そうに金色の眼にジトっと見つめられる。
「……だ、だってその……お疲れでしょうし、別にいつもの帰り道だし、その……」
ゴニョゴニョ言い訳を並べていたらグイッと手を引かれた。
「わぁ!」
「送る」
「いってらっしゃ~い」
軽すぎるカルロさんの声に睨みつけるものの笑顔でスルーされて私は力強いジルベルトさんの手に引かれるがまま宿屋を後にするのだ。
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(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
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