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番外編

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 セックスはいつも太刀川が求めてくる。瑠衣から求めたことは未だない。
 求められて拒むことは一度もない、求められれば喜んでこの身を差し出す、それくらい拒否したこともないしそんな気持ちも持っていない。

 求められて嬉しい、だからこそ思う。
 自分だって、太刀川を求めるほど欲しているのだと。それを太刀川に伝えたい気持ちはずっとあった。でも、恥ずかしさからそれを実行できたことはない。そして実行する前にいつも太刀川の手に落ちてしまっているのだ。

 一緒に暮らすようになって同じベッドで毎晩寝る。
 二人で並んで寝れば自然とそういう流れになることは多い。太刀川に抱きしめられて気づくとパジャマを脱がされている。言うなら太刀川が仕掛けてこないとセックスはしない。瑠衣も太刀川に抱かれるようになって変わった。
 したいと疼く日がある。
 欲しいと求めたい日だってある。でも、そういう時に必ず太刀川の手が伸びてくるかというとそうでもない。
 しない日ももちろんある。抱き締められてそのまま寝るだけの日だって当然あった。
 そういうとき、瑠衣から求められたら……そんな悩みを抱えるようになってしまった。

(やらしいな……私。女の子からエッチしたいとかそんなこと言っていいのかな……引かれない?性欲強いって思われない?恥ずかしくてそんなの言えないよぉぉ)


「あれ、いつ帰ってた?」
 リビングで赤面しながらも悶々考えていた瑠衣に自室にこもっていたであろう太刀川が顔を覗かせて声をかけてきた。

「ただいま、今帰ってきたところ」
「なんかあった?」
「え」
「なんか……頭抱えてたから」
「ううん!別に!」
 慌てたように頭を振る瑠衣に首を傾げつつ、腰を落としていたその横にある大きめの包み袋が無駄に目につく。赤色のリボンでくくられたそれは誰が見ても贈り物だと分かった。

「なにもらったん、えらいでかいな」
「え!あ、えっと……ま、枕……」
 嘘はついていない、枕でもイエス・ノー枕とまでは言えないだけで。

「枕?欲しいとか言ってたの?」
「ううん!言ってないよ!」
 イエス・ノー枕を欲しいと言っていたと思われるのはちょっと困る、瑠衣は慌ててまた頭を振った。

「ふぅん」
 さほど興味もなさそうに太刀川はキッチンの方へ行ってしまった。その後ろ姿を見送りながらホッと胸をなでおろす。

 今晩、誘ってみようか。
 真緒に言われた通り、この枕を持って太刀川を――。

 瑠衣はひそかにその気持ちを抱いて夜を待つことにした。

 
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