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世界を越えてもその手は 続2章 新たな日々 2

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◆中央教会(7. 反省会)

「冒険者を引退したら、引っ越し屋さんを始めようかな」
「引っ越し屋?」
「うん。僕が荷物を収納すれば、重いものでも体力はいらないし」
「ユウのスキルは歳をとっても働けるものばかりだな。俺のは無理だ」
「そうなったら、僕が養うよ」
「ユウが養ってくれるのか」
「うん。今の自由はアルがいなかったらなかったから。あ、でも僕が荷物を収納して、ブランとリネで移動すれば、運送屋さんもできるね」
((ユウさん、神獣様を乗り物扱いされるとは、さすがです……))


◆タハウラの教会(7. 反省会)

「助祭様、子どもを預かってもらえると聞いたのですが」
「預かるといいますか、書き取りなどの授業をします」
「少し休みたいので、その間子どもをお願いしてもいいですか?」
「はい」

「司祭様、子どもを授業に参加させたいという親が多くて、部屋に入りきりません」
「今日はお天気もいいですから、外にして、中央教会の方に応援をお願いしましょう」
「こんなに要望があるとは思いませんでしたね」
「ですが、この機会に大人の健康観察をするとはかどりそうです」


◆中央教会(7. 反省会)

「大司教様、ただいま戻りました」
「ツェルト助祭、おかえりなさい。報告を」
「はい」(耳が横にぴーん)
「ユウさんから、畏れ多くもブラン様に騎乗したと聞いていますよ」
「はい」(耳先が垂れる)
「次からは私が代わりに行きましょう」
「はい!」(耳が上ににぴーん)
「冗談ですよ。そのような可能性があるのであれば、今後もツェルト助祭、貴方にお願いします。ですので、今後のためにもいろいろ聞かせてください」
「はい……」(耳が根元からぺしょん)
((「はい」しか言っていないのに、耳がすごく主張している))


◆冒険者ギルド長会議(8. アイテムボックスの整理)

「氷花のユウさんが、アイテムボックスに眠っているドロップ品を教会に寄付するそうです。そのうちの高価なものは、ドガイでオークションにかけることになりました」
「それはまた盛り上がりそうだが、なんでドガイなんだ?」
「ただでさえ神獣様目当てでこの国に人が集まっているところにさらに人を集めるのは、ユウさんの安全のためによくないだろうということで、陛下からドガイへ協力を要請することになりました」
「たしかに、オークションに乗じて余計なことをされると、この国がなくなるかもしれんな」
「王宮は感づいているのか?」
「いいえ。ユウさんがこの国にいれば、アレックス様も一緒にいることになるので、ユウさんの身辺に気をつけていくようです」
「まあ実際あふれに対処するのはテイマーだしな」
「表向きはどういう理由にするんだ?」
「もしあふれが起きた場合、安全が保障できないから、ですね」
「まあ実際起きたら、お偉方に構ってる暇はないので、嘘ではないな」
「鑑定師がたくさん必要になりますので、王都周辺のギルドは、鑑定師の出張の手配をお願いします」
「大仕事になりそうだな」
「オークションとは別に、ブロキオン上層の剣は、教会からギルドの初心者に貸し出してもらえることになりました」
「どれくらいあるんだ?」
「三百本ほどです。槍や初心者用の防具も少しあります」
「買い取ってもらえないと分かっていてなんで拾うんだ?」
「目の前に転がっていると、もったいないと感じるそうですよ」
「アイテムボックス持ちが貧乏性だと、そういうことが起きるのか」


◆薬師ギルド長会議(8. アイテムボックスの整理)

「氷花がアイテムボックスに眠っているドロップ品を教会に寄付するそうだ。それで、ポーションは全て薬師ギルドにもらえることになった」
「ダンジョンから出たポーションか。それは、欲しがるものが多そうだな」
「教会からは、研究のためにということなので、横流しは厳禁だ」
「珍しいポーションもあるのか?」
「全て病気を治すポーションらしい。神獣様がいらっしゃるから不要になって手放すそうだ」
「そうなると、場合によっては他の国にも協力を仰いだほうがいいかもしれないな。血液の病気なら、ソント王国に御大がいるだろう」
「もらえるポーションにもよるが、必要なら声をかけよう。来るのが楽しみだ」


◆リリアンダの拠点(10. 第二王子と初対面)

「まさか神獣様にお会いできるとはな」
「しかしテイマーはなんで神獣様には普通に接してるのに、王子にあんなに緊張してるんだ」
「なんというか、自分の従魔とあんまり変わらない感じで接してるよな」
「なあ、もしかしてあのウルフって……」
「まさか……」
「あふれから生還って……」
「気のせいだ。あの従魔はシルバーウルフ!」


◆王宮(10. 第二王子と初対面)

「兄上、神獣様に会いました!」
「なんと! いいなあ。私はあの謁見の間のときに遠くから見ただけだよ」
「オークションの品の選別に行ったら、ちょうどいらっしゃっていて。剣をお部屋に飾りたいと選んでいらっしゃいました」
「剣を? 宝石ではなくてか?」
「ええ。すでに魔剣も飾ってあるそうです。剣士の使う魔剣でしょうか」
「馬車を燃やされたこともあったし、好戦的でいらっしゃるのか……?」
「どうでしょう。我々のことは全く眼中にない、という感じでした。ああ、アイテムボックス持ちのテイマーにも会いましたよ」
「どうだった? 父上によると、堂々としていて国の中枢に関わったことがありそうだと聞いたけど」
「そうなんですか? 冒険者の後ろに隠れていましたが」
「お前に会いたくなかったということか?」
「アレックスが言うには、注目を浴びるのが苦手らしいですよ。今回は予定になかったので、心の準備ができていなかったとか」
「私がギルドで見かけたときは、そつなく挨拶していたが」
「今回も挨拶は問題ありませんでしたが、かなり緊張しているようでした。会議で宰相を手玉に取ったというのは信じられませんね」
「どういう人物か、つかめないな」
「神獣様も気を許していらっしゃるようですし、うわさ通りアレックスが溺愛していますので、テイマーを囲い込むことが、結果的に神獣様にこの国にいていただけることにつながりそうです」
「父上ではなくお前が対応していることに、神獣様は気分を害されたりしていないか?」
「ないですね。神獣様はそもそも気にしていらっしゃいません。アレックスとテイマーは会わなくて済むならそれで済ませたいという感じですね」
「それは一安心だ。あの二人のことはお前に任せる。引き続き頼む」
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