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世界を越えてもその手は 最終章 手を携えて未来へ 4

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◆エナミの宿(13. 孤児院のお手伝い)

「親戚のお兄ちゃんか」
「まあ実際ユウは親戚の子どもみたいな感じだな」
「小さいって言うと怒るけど、小さいもんな」
「熊獣人の10歳」
「ガリドラ、言ってやるな」
「でもちゃんと国に自由を認めさせたんだろ。全てに怯えて戸惑うばかりだったユウが、大きくなったなあ」
「親戚のお兄ちゃんというより、親戚のおじさんの発言だな」


◆孤児院(13. 孤児院のお手伝い)

「遊んでもらったお礼はなんて言うんですか?」
「「「「ありがとうございました!」」」」
「はいみなさん、手を洗って部屋に入りますよ」
「「「「はーい!」」」」
「ユウさん、ありがとうございました」

「ブランって子ども好きなの?子どもには優しいよね」
『まだ形も定まらぬものに好きも嫌いもないな』
「うーん?」
『その辺の生まれたての精霊と変わらん』
「え?精霊とかいるの?見たい!」
『人には無理だな』
「人間も子どものうちは精霊に近しいということですか?」
『違う。生まれたては道理も分からず好き放題するが、言ったところで理解できない。人も同じだろう』
「好き放題って何するの?」
『毛の間に潜り込んできたり、引っ張ってみたり。ユウとそう変わらん』


◆孤児院(14. 僕の居場所)

「冒険者のルフェオだ。虎の子どもがいると氷花のユウに聞いたんだが、会えるか?」
「ええ、もちろんです。有名な獣道の皆さんに会えると、子どもたちも喜ぶでしょう。決まりなのでギルドカードを見せていただいてもいいですか?」
「ああ、これだ」
「ありがとうございます。今ちょうど遊びの時間で、獣人の子の体力が有り余ってるので、遊んでいただけると助かるのですが」
「あはは、人族じゃ付き合うの大変でしょ。引き取り先は見つかりそう?知り合いに聞いてみようか?」
「隣街の家族が引き取っても良いと言うことなので、おそらくそちらに決まると思います」
「そうか。じゃあ張り切って遊ぶか」

「みなさーん、冒険者の獣道のみなさんが、遊びに来てくれましたよー」
「みみ!」
「しっぽがふさふさだ!」
「まけんみせて!」
「おれも、おれも!」
「おじちゃん、しっぽちぎれちゃった?」
「おじちゃん……」
「熊のおじちゃんの尻尾は、短いからズボンの中だよ」
「こら、ズボンを脱がそうとするな」
「おみみパタパタしたらとべる?」
「はねむしったら、またはえてくる?」
「痛いからやめようね」
((((子どもたち、自由すぎだろ……))))

「おれもぼうけんしゃになれる?」
「どうかな。強くないと大変だぞ」
「おれつよいもん!さっきしろいオオカミたおした!」
「そうか。どうやって倒したんだ?」(白いオオカミってブラン様だよな)
「なんどもどーんてぶつかったら、ごろんってたおれた!」
「す、すごいな」(ユウ、ブラン様に何をやらせてるんだ……)


◆王都ニザナのダンジョン(15. ダンジョン復帰への準備)

「テイマーがここに来てる」
「剣士だけじゃなくて、テイマーもか」
「マジか」
「もしかして、帰ってきてから初じゃないか?」
「怪しいやつはいなかったか?初めて見るやつとか」
「気を付けて見ておく」
「付与のテントはセーフティーエリアの環境改善が目的らしい。つまり……俺たちが臭いってことだ!みんな気をつけろ!」
「魔力に余裕のあるやつはクリーンをかけるように、会った奴に片っ端から伝えろ!」
「「「クリーン」」」


◆カークトゥルスのギルド(15. ダンジョン復帰への準備)

「下層2つ目を占有したいのだが」
「いつ頃、どれくらいの期間でしょう」
「これから、可能な限り、だ」
「ああ、あれですか。氷花が言った、サネバの軍がたくさん手に入れているはずだろうという」
「そうだ。冬までに200手に入れろと言われていてな」
「それは、さすがに無理では。氷花は1日4回挑戦していたようですが」
「無理だな。長期間で安全を考えると1日2回だろう。だが、100は取ってこないと納得してもらえそうにない」
「今のところ、冬の氷花たち以外に占有の条件を満たすものはいませんので、冬まででしたらお好きなだけどうぞ。ただ、冒険者が行った際には、パーティーの数だけ挑戦させてもらえますか」
「もちろんだ。感謝する」
「私が言うことではありませんが、無理はしないでください」
「兵を失うようなことはしない。まあでもこれで、軍以外にマジックバッグが流れるのは防げるだろう」
「やはり、横からかっさらう貴族がいるんですね」


◆王都ニザナの屋台(15. ダンジョン復帰への準備)

「これは助祭様、何にしましょうか」
「氷花の従魔が気に入っている肉を注文したいのですが」
「ああ、あのウルフの。でしたらこれですね。大量に必要なら教会に届けましょうか?」
「お願いできますか?入り口でツェルトの名を出していただければ、分かるようにしておきますので」
「では2日後に行きます。ウルフのお気に入りなら、食堂はもうお済ですか?」
「食堂ですか?屋台は聞いてきたのですが」
「八百屋の向こうの『リスの食堂』の定食がお気に入りですよ。お昼過ぎると売り切れますが」
「行ってみますね。ありがとうございます」

「いらっしゃい。助祭様、お食事ですか?」
「いえ、氷花のお気に入りの食事を持ち帰ることはできますか?」
「ああ、教会にいるって聞きましたよ。彼らは元気ですか?」
「はい」
「そりゃよかった。食事ですが鍋に用意するのでちょっとお待ちくださいね」
「突然で申し訳ございません」
「はい、お待たせしました。今日はブランちゃんと剣士の兄さんが好きな肉の煮込みなので多めに入れておきましたよ」
「ブランちゃん……」


◆モクリーク中央教会(15. ダンジョン復帰への準備)

「アレックス、怪我は大丈夫だったのか?」
「ああ、ユウが本気で狙われたのに動揺して斬られたが、傷自体はポーションで治った。ただユウのショックが大きくて」
「ドガイでもマグノリアとダンジョン潜ってたって聞いたが、今後は別行動か?」
「あの時は……、ユウに俺と一緒にいるのが辛いと言われて」
「あのユウくんが?」
「自分のせいで俺が怪我をしたっていうのがかなり堪えたみたいだ。あの頃はアイテムボックスはもう使わないと言っていたから、俺に養われる訳にはいかないと思ったみたいで」
「お前……大丈夫か?」
「夢を見て飛び起きて、俺が生きているのを確認して、泣きじゃくりながら謝るんだ。どうしていいのか分からなかった」
「そのころドガイにいれば話を聞いてやれたんだが……」
「ダンジョンでモンスターを倒していれば、余計なことは考えなくてよかったから」
「ユウくんはもう平気なのか?」
「やっぱりそばにいてほしいって。結果的には一度離れてみてよかったんだろ。今後俺が狙われないように、自分で国とも交渉して、付与も頑張ってる」
「すごいな」
「ああ。だから俺も、俺に出来るのは戦うことだけだから、獣道とダンジョンに潜ってるんだ」
「ユウくんもカークトゥルスに行くんだろ?」
「ブランが楽しそうだからってのと、マジックバッグを取ってくるためだろう。それに、この国で冒険者として受け入れてもらえたことが嬉しかったから、冒険者は続けたいらしい」
「いい子だなあ」


◆カークトゥルスのセーフティーエリア(16. カークトゥルス合宿開始)

「なんなの、あいつら!信じられない!」
「ユウ、落ち着け。俺たちは慣れてる」
「慣れてるからって、許しちゃいけないんです!」
「ああ、うん。お前が追っ払ってくれたからな。ありがとな」
「そうだよ。ユウがすごい冷静に対処してるから、怒るタイミング逃しちゃったよ。でも実はすごい怒ってたんだな」
「ユウくん、立派に冷静に対応してたよ。頑張ったね」
「ついでに防具も壊せばよかった!」
「やりすぎるとユウくんの評判が悪くなるから、十分だよ」
「だって、獣人のほうが体力もあるし、素早いし、アルも敵わないし、耳も尻尾もあるのに!」
(((最後のは関係ないだろう……)))
「ユウはほんとに獣人の耳と尻尾が好きだな」
「アレックスに耳を付けてもらったら?」
「お、ユウが期待してるぞ。アレックスにつけるならどんな耳がいいんだ?」
「狼!」
「狼はキリシュがいるだろう。他にないのか」
「うーん、狐はオラジェさんがいるから、肉厚でふわふわで先がちょっとだけ垂れてる犬の耳」
「具体的だね」
「執事に言って、アレックス用に作ってもらえ」
「何を言ってるんだ……」
「かわいい恋人の希望を叶えてやれよ」
「アレックスはユウにどんな耳をつけてほしい?」
「いや、突然言われても……」
「僕は何が似合うかなあ。黒柴、黒ラブラドール、ニューファンドランド、黒ネコ、黒ヒョウ、黒クマ、他に黒いのって何がいたっけ」
(((乗り気だな)))
「黒い髪に白い耳も可愛いんじゃない?」
「じゃあブランとお揃いがいい!あ、白い垂れ耳も可愛いかなあ」
「ユウくん、助祭様の耳に視線が釘付けだったけど、失礼だからね」
「ああ、あの兎の助祭さんな」
「長い垂れ耳いいよねえ。ブランとお揃いの色で、アルとお揃いの垂れ耳にしようかな」
(((聞いてない)))

(テイマーちょろいな。すっかり誤魔化されてるし)
(帰ったら、テイマーがガチギレしてたってギルドに報告だな)
(あのパーティーはテイマーを怒らせたっていうので一発で追放だな)
(テイマーの前で獣人ディスるとか、あのパーティー調査不足過ぎだろ。テイマーの尻尾好きは有名なのに。3年間何やってたんだよ)
(そういえば一時期、獣人ならパーティーに入れてもらえる説あったな)
(獣人でもふさふさの尻尾がないとダメって説もあったな)
(しかし、魔剣4本揃ってる獣道に喧嘩売るとか、ある意味すげえな)
(テイマーがいなかったら、ちょっと外でオハナシしようって、二度と帰ってこないパターンだろうな)

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