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第十七話 ナルシなネカマ

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 第十七話 ナルシなネカマ
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 俺のパパ活生活は順調そのものである。

 ネット弁慶なコミュ障陰キャにリアル世界でのパパ活それなりに難易度高いかとも思ったけど、しばらく離れて生活していたパパ相手って設定なら人見知りっぽくなってても全然問題ないしね。我ながらなかなかいい手を見つけたものである。

 おかげで、高額な美容品からうまい食い物までいろいろと手に入って大満足だ。無論、前世であれば格安で手に入ったレベルでしかないのだとは思うが、元々最底辺を生きてきた人間からすれば満足できるレベルである。

 それに、この世界の生活レベルって結構低いから、栄養失調とか病気とかで才能はあってもママンみたいに育たないなんて可能性も余裕であったわけだからね。その心配がなくなったってだけで、パパ活の成果としては十分すぎるものがある。

 最悪どうしようもない病気とかにかかっても、幼女に泣きつけばなんとかしてくれる気もするし。

 そうそう、もちろん並行して幼女との修行の方も順調だ。俺の魔力は徐々にではあるがしっかり成長してくれているし、幼女も成長し少女になりつつある。

 まだ特に俺に不信感を持っている様子はないが、最近はいつばれるんじゃないかと少しびくびくしている。もし養分にしてるのがバレたらどんな目に遭うか……俺だったら間違いなくただじゃおかない。

 幼女から搾取した魔力でのマッサージ、そしてパパ活で得たパトロンからの潤沢な美容品の支援。鏡を見て自分でうっとりしてしまうぐらい、俺はかわいく美しく成長している。

 未完成でこの美しさ。全盛期には天使か女神か……

 ナルシスト? それの何が悪い。俺がかわいいというのは事実なのだから、別に問題ないでしょ。まさか美しさに嫉妬されて女神にどうこうされるというわけでもあるまいし。

 ……ないよね?

 あ、あとやっと魔術書というものを手に入れることが出来た。当然のことながらこれもかなりの高級品、俺のお小遣いなんかでは手が届きそうになかったのでパパに買ってもらったものだ。

 ダメもとで、少し魔法を見せてねだってみたのだ。そしたら、魔法を見たパパが俺の娘は天才だって騒いで、ただでさえ高い魔術書の中でもさらに高級な最新のものを買ってくれたのだ。

 ちょろい。

 ……パパ、もしかしてほんとに俺のこと実の娘だって思い込んでたりします? 完全な親ばか発揮してますけど。間違いなく俺あなたの娘じゃないと思いますよ? 例によって完全否定は出来ないけど。

 まぁ、そう思い込んでくれる分に関しては俺にとって好都合でしかないので歓迎である。でも、仮にもマフィアのお偉いさんがこうもちょろいというのは、騙している身でありながら身勝手な心配を覚えるものである。

 騙されてたりなんかしていない、どうせならと思いっきり楽しんでるだけだ。っていうんならそれで別に構わないけれど。

 そのパパにおねだりして買ってもらった魔術書だが、結局あんまり役に立ってくれなかった。そもそもからして俺がイレギュラーな存在過ぎたのである。

 イレギュラー過ぎて普通仕様が役に立たない。そういうと何ともかっこよさげではあるが、実際はただの規格エラーの不良品である。ゴミとも言う。

 魔力を他人から受け取って魔法に目覚めるなんて、そんなものがありふれたものであるはずもなく。だから、例えば俺が欲していたような他人から渡された魔力を成長させる方法なんてものも書いてあるはずがない。

 当然だろう。そもそもからして魔力の受け渡しなんて一部の天才以外不可能なわけで、その天才の才能を削って魔法を全く使えないゴミを生み出して何の意味があるのかという話である。

 そんな無駄なことをやるやつなんているはずもなく、そして前例がない以上記録なんてものも存在しない。存在しないものは書けるはずないので、どれだけ高級品でもなんの意味も持たないと言うわけだ。

 結果、俺は道なき道を進むしかなく。俺に道を開拓するような才能はないので、幼女からの献上品に頼るしかない。実に情けないが、考えれば俺は前世からずっとこんな感じなので情けなさを感じると言うのにももう慣れてきた。

 そして、この世界が絶賛戦争中な影響だとは思うのだが。魔法といえば戦いと思考回路が直結しているらしく、美容関係に使えそうな知識というのも存在しなかった。

 せっかく買ってもらったところ悪いが、俺には完全に宝の持ち腐れである。というわけで、俺の念願であった魔術書は幼女ちゃんにあげてしまった。

 ちょっともったいない気もしたが、使えない俺が持っていても仕方がない。それより天才幼女が持っていた方が、魔術書も高い金を払ったパパも報われるというものであろう。

 それに、魔術書を読んでいて幼女の才能のすごさというのを理解すればするほど、搾取しているという事実がだんだんと申し訳なくなってきたというのもある。せめてもの償いという奴だ。

 辞めればいいのでは? そんなつもりは毛頭ない。

「お姉ちゃん、ありがとう」

 そういって魔術書を抱きしめお礼を言う幼女を見ると、それほど悪い気はしない。いやまぁ、別の意味で心にチクリとくるものがあるが。

 俺のでたらめ指導ですらみるみる成長していく幼女が、もし正しい知識を手に入れたらどれほど伸びるのかというのもちょっと気になるしね。

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 幼女に魔術書を渡してから少し時が流れた。

 俺の日常は相変わらずで、今日は幼女との魔法の訓練にやって来た。俺の器も少し大きくなって余裕出てきたし、今日はまた魔力を分けてもらおうかなぁ。そんな事を考えながら、巨大な魔法陣を描く幼女を眺める。

 やはりというべきか、あの魔術書を渡してから明らかに幼女の使う魔法のレベルが上がった。魔力量の成長スピードに関しては完全に才能の世界なのかあまり変わってるようには見えなかったけど、より大規模で洗練されたきれいな魔法を使うようになったと思う。

 前までは完全に力ずくって感じだったけど、仮にも先人たちによって研究されてきた成果だ。天才にもそれなりに見れる部分があったということだろう。それほど抵抗なく、実に滑らかに魔力が流れているように見える。

 幼女の魔法一発でどれぐらい人が死ぬんだろうか。

 こんな便利な力あったら、そら科学なんて発展するはずないよね。魔力なんてあるなら科学の方も相乗効果で一気に進められるんじゃねぇの? なんて思ったこともあったが。

 科学の進歩は戦争の歴史とは言ったもので、どう考えても中途半端な科学より魔法の方が役に立つ。である以上、他の分野にリソースを割く気にならなかったのだろう。国も個人も。

 あと、当然といえば当然なんだけど。みるみる成長していく幼女を見て、やっぱ俺幼女の邪魔しかしてないんだなと思って少し悲しくなった。だらかと言って、別にやめる気もないんだけどね。

 俺が幼女の師匠で魔法の訓練をつけている、という体を取っている。が、俺がやることなんて幼女を眺めて、たまに「成長してるな」とかてきとういうぐらいしか無い。もし魔法のことで聞かれたりしたら、それを考えるのも勉強だとか本当に当たり障りのないことを返している。

 ……我ながら、今までよくばれずにやってこれたものである。

 だからこそ、さっきから嫌な予感がして仕方がないのだが。修行終わったら大事な話があるといわれたのが、気になって仕方がない。

 もしかして、ついにバレた?

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