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恋バナ【前編】

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 「はぁ、明日からまた学校か~」

 そうため息をこぼしながらソファに寝転んでいるのはりっちゃんだ。

 「新君は今日、予定とかないの?」

 「今日はここに友達が来る予定です」

 「え! そうなの? 男の子? それとも女の子?」

 「両方です」

 そう、今日はこのシェアハウスに苺と健が来ることになっている。
 前から約束をしていたのだが中々みんなの時間が合わず、呼ぶことができないでいたが、今日やっと呼ぶことができたのだ。

 「へえ~、新君の友達か~、それで何時に来るの?」

 「後十分くらいで来ると思います」

 「!? じゃあ、こんな格好じゃやばいじゃん! 着替えてくる!」

 そう言うと、りっちゃんは急いで自分の部屋に駆け込んでいった。

 僕はソファに座り、テレビを見ながら苺と健が来るのを待っていると、莉夜が二階から降りてきた。

 「どう? 苺ちゃんと健くんはもうすぐ着くって?」

 「うん! あと少しで着くって」

 なぜ莉夜が苺と健が来ることを知っているのかというと、そもそも二人を呼ぶことを提案したのが莉夜だからである。そして、莉夜はとても可愛らしい服装をしていた。

 ピーンポーン

 インターホンが鳴った。
 恐らく、苺と健だろう。  

 僕と莉夜は玄関の方へ行き、ドアを開けると、ワンピースを着た苺とジーパンに黒色の洋服を着た健がいた。
 健はともかく、苺の服装には驚いた。苺がこんな可愛らしいワンピースを着るとは思わなかった。不覚にもすこしドキッとしてしまった。いや、だめだだめだ、莉夜意外に見とれちゃ。

 「おじゃましまーす」

 「どうぞ入って、それじゃあ、私の部屋に行こっか」

 そして僕たち四人は莉夜の部屋へと向かった。
 よく考えてみたら、莉夜の部屋に入るのはこれが初めてだな。
 莉夜の部屋に入るとそこはピンク色の部屋だった。
 苺は部屋を見るなり目をキラキラ輝かせながら

 「すっごいかわいい~!」

 とテンションが上がっているようだった。

 「好きなとこに座っていいよ~」

 莉夜は僕たちに座るよう促す。
 そして僕たちが座ろうとしたとき、

 ガチャッ

 「新君、りよっちなんで先に部屋に行ってるのよ~。リビングに戻ったら誰もいなくてびっくりしたよ~」

 そこに現れたのは、さっき着替えに行ったりっちゃんだった。

 「あ、ごめん、りっちゃんが着替えに行ってすぐ二人が来たんですよ」

 「あ、そういうことだったのね。じゃあ、その二人が新君の友達なのね」

 りっちゃんは二人に握手を求めながら自己紹介を始めた。

 「私は花宮梨音よ、よろしくね!」

 すると二人は背筋をピーンと伸ばしてりっちゃんと握手を交わした。

 「初めまして、僕は近藤健ですっ!」

 「私は、坂嶺苺です!」

 そして互いの自己紹介が終わったところで僕たちは座った。
 りっちゃんはすぐにあることに気づく。

 「お菓子が……ない?!」

 さすがはりっちゃんだ、こういうことにはすぐ気づくなぁ。

 「部屋でまったりおしゃべりをするときにお菓子は必須でしょ! 新君、取りに行くよ!」

 僕とりっちゃんは一階に戻り、お菓子とジュースを準備し始めた。

 その頃莉夜の部屋では──

 「あの、莉夜さん! 好きな人とかいるんですか?」

 恋バナが始まっていた。

 「ええっ!? す、好きな人???」

 「はい! そうです! いるんですか?」

 「そ、そ、そういう苺ちゃんはどうなの?」

 まさか同じ質問を返されるとは思っていなかった苺は慌てふためいたようだ。

 「えええ!? 私ですか?!」

 「うん! いるの?」

 「……い、います……」

 苺はまさか好きな人がいる前で好きな人がいることを暴露したため顔が真っ赤になり思わず顔を手で覆い隠した。
 それに対し、莉夜は目を輝かせながら

 「ほんとに!? 誰なの???」

 その好きな人がいる前で名前まで暴露はできるはずもない。

 「さすがにそれは言えないですっ!」

 「じゃあどんな人なの?」

 「それは……優しくて、かっこいい人です」

 「おお! 私、苺ちゃんの恋、応援するね!」

 「あ、ありがとうございます……」

 また苺の顔が赤くなった。

 「私はここまで言ったんですから、莉夜さんも好きな人いるのかどうか教えてください!」

 「わ、私も……いるよ……」

 莉夜にも好きな人がいると分かった途端、苺は莉夜に対して質問攻めを開始した。

 「いるんですか?! どんな感じの人ですか?」

 「そ、それは……」

 「それは?」

 「優しくて、かっこいいくて、よく私を誤解させて来る人」

 「誤解させて来る人? どういうことですか?」

 「まぁ、そこは秘密ってことで」

 苺はどういうことなのか気になっているようだったが苺が聞き返すより先に莉夜が健にも同じ質問を振った。

 「健くんはどうなの? 好きな人とかいないの?」

 苺が真剣な眼差しで健の方を見る。

 「んー、今のところはいないですね~」

 「えー、つまんないなー」

 「すいません、僕だけいなくて」

 「大丈夫だよ! きっと健くんにもすぐ好きな人ができるよ!」

 苺は残念なような、ほっとしたかのような顔をしていた。
 すると、今度は健が莉夜に質問を振る。

 「莉夜さんの好きな人、気になるんですけど、誰なんですか?」

 苺もその質問に便乗する。 

 「私も気になります! 誰なんですか?」

 「えぇ……まぁ、学年違うし友達にばれることはないか……。でも! 誰にも言っちゃだめだよ! 新にもだよ!」

 「はい! 絶対に誰にも言いません!」

 「じゃあ、分かった。私の好きな人は、あら──」

 ガチャッ

 「みんなー! お菓子持ってきたよー!」

 苺と健が残念そうな顔をしている。
 ちょうど莉夜が答えようとした瞬間に僕とりっちゃんが戻ってきたのである。

 「ん? みんなどうしたの?」

 「いや、何でもないよ……」

 莉夜の顔が少し赤くなっているような気がした──。
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