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はじまり

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 いろんな出会いがあった入学式から一日が経った。
今日はどんな出会いがあるのか胸を躍らせながら学校へ向かう。そして、なんといっても僕にとっての今日の一大行事といえば、シェアハウスへの引っ越しと住人との顔合わせである。
 だが、僕は昨日の帰り際に見た女の子のことがどうしても頭から離れない。
 あの顔立ち、黒くて長い髪、それはまるで夢の中で出会った女の子のようだった。
 今、そんなこと考えても仕方ないか。そう思い、自分の顔を一度だけ軽くたたいた。
 「よし! それじゃあ行くか!」
 僕が一人でそんなことを言っていると、後ろから
 「おーい!」
後ろを振り返ると、そこには健と苺が少し小走りでこちらに向かってきていた。
 「一緒に行こうぜ!」
 「う、うん!」
 そして僕たち三人は、一緒に学校へ向かった。

 学校に着くと健は自分の教室に入っていった。
 「じゃあ、またあとでな!」
 健が教室に入っていくのを見送った後、僕と苺も自分たちの教室へ向かった。
 教室に着くと、
 「あんた、今日はスマホ忘れてきてないわよね?」
 今日初めて苺から話しかけてきたことに驚き、答えるのを忘れていると、すぐに
 「聞いてるの? 持ってきた?」
 少しキレ気味の口調で問いかけてくる苺にあわてて、
 「も、もちろん持ってきたよ!」
 「持ってきてるならさっさとそう言いなさいよ」
 そう言うと、苺は自分のスマホを僕の目の前に差し出してきた。僕はよく意味が分からず、
 「ん?」
 と言うと苺は
 「連絡先よ!」
 またキレ気味な口調でもう一度差し出した。
 「あ、ああ。そういうことか。」
 そうして僕らは連絡先を交換した。

 数分後、チャイムが鳴ったのとほぼ同時に担任の先生がやってきた。
 「みんな席についてー。今日は役員決めをしていきます。」
 あ、そっか、この学校は役員とかあるのか。中学の時は、生徒の数が少なすぎて役員とか無かったもんなあ。まあ、絶対に役員なんかやらないけど。
 そんなことを考えていた矢先に
 「必ず全員どこかの委員会か係に入れよー」
 まじかよ。面倒なことはやりたくなかったんだけどなあ。まあ、簡単そうな係りにでも入るか。
 そんな願いもすぐに崩れ去っていく。
 僕がだらだらと手を上げるのをためらっている間にほとんどの係や委員会が決まってしまったのだ。
 「あと決まってないのは、神橋と坂嶺か。あと残ってる委員会は学級委員だけだな。よし、お前ら二人は学級委員な。」
 ま、まじか。
 僕が隣を見てみると、苺が口をあけながら唖然としていた。
 その数秒後、急に我に返ったかのように先生に抗議をし始めた。
 「なんで私が学級委員なんてやらないといけないのよ!」
 すると先生は首をかしげながら
 「いやあ、それはお前ら二人が一度もほかの係や委員会の時に手を上げなかったからだろう」
 苺は、驚いたような表情で顔を真っ赤にしていた。
 恐らく苺は自分が一度も手を上げていないことに気が付いていなかったのだろう。僕は思わずくすっと笑ってしまった。
 「なに笑ってんのよ! そういうあんたも学級委員なのよ!」
 その一言で一気に現実に引き戻された気分だった。
 そうして僕ら二人は、悲しくも学級委員となった。

 学校が終わり、苺と健と一緒に帰路についた。
 「二人とも今日は元気がないみたいだな。何かあったのか?」
 健が心配そうにこちらを見ている。
 すると苺が
 「私と新、学級委員になっちゃったのよ」
 健はくすっと笑って
 「どうせ苺は手を上げるの忘れてたんだろ?」
 「まあね。そういえば新はなんで学級委員になっちゃったの?」
 健と苺は二人して不思議そうにこちらを見ている。
 「僕は手を上げるのに躊躇してたら最後まで残っちゃって……」
 「まじか! まあ、なったからにはがんばれよ!」
 健は他人事のように高笑いしている。
 「健はどの係になったの?」
 「俺は生き物係だよ。もちろん自分から立候補した。」
 さらっと自分は手を上げた事を強調してきたことに少しだけムカッとした。

 「今日から新居だから昨日とは道順が違うんだ。だから、ここで曲がらないといけないからまた明日ねー!」
 「そうか。新居、今度行かせてくれよー!」
 「私も呼びなさいよ」
 そうして二人と別れた数分後、シェアハウスに着いた。そこには、シェアハウス『友恋良館ゆうれいかん』と書かれていた。
「いかにも出てきそうな名前だな」
 そのシェアハウスの外観は、ヨーロッパに来たのかと思わせるほど洋風な外観だった。
 「ふぅ」
 僕は息を整え、緊張しつつもドアに手をかけた。
 そしてドアを開けると……
 「うらめしやぁ」
 急に顔が真っ白で長い髪の人たちが出てきたのだ。
 「うわああああああ!」
僕は幽霊が出てきたと思い、驚いて腰を抜かしてしまった。
 「やっぱこのメイク、結構いけるもんだね」
 よく見てみるとそこにいた幽霊は、お化けメイクをした住人たちだった。
 安心して立ち上がろうとしたが、足が震えて立つことができない。
 そこに二十代後半くらいの男の人が立ち上がるのを手伝ってくれた。僕が立ち上がり、落ち着くと、その男の人は腰に手を当て、
 「君が今日から入居の神橋新君だね? ようこそ、友恋良館へ! 僕は大家の塩川 郷音久しおかわきおく。そして彼女は花宮 梨音はなみやりおん。」
 その女性はお化けメイクをしていてよくわからないが、ショートヘアで明るそうな女性だ。
 「花宮梨音よ。今、大学一年生だよ! よろしくね!」
 やはり明るい女性のようだ。
 「そして俺は新城 優一しんじょうゆういち! 近くのカフェで働いてるんだ。 よろしくな!」
 こちらも明るくテンションの高い人のようだ。そして身長も結構高い。こりゃあ、女の子から大人気だろうなぁ。
 すると、花宮梨音が
 「あれ? りよっちは? ちょっと呼んできまーす!」

 数分後……
 「りよっち連れてきたよ~」
 僕は連れてこられた少女を見て、目を疑った。
 そう。そこにいたのは、夢の中で出会った少女だったのだ。
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