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World1 突き飛ばされて異世界転生したら勇者になってくれと言われたんだが

14話

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「タカヒコさん、空を見上げてみてください」

森を抜けたと思うと、俺はサトルにこう勧められた。言われた通り空を見上げてみると、俺は目の前の光景に息をのんだ。

「空島だ…」
「はい。あれが私たちの村、クラウド村がある浮島『イドゥ・ウィ・シエル』です。私たちは略して『シエル島』などと呼んでますよ」

そうサトルが教えてくれたシエル島は本当に美しい島であった。下から見える岩肌からはところどころ滝が流れているが、高すぎるからだろうか、水はこの下の大地にたどり着く前にミストとなって、空へと還ってしまう。
上の方に行くと美しいほどの緑と、空の青との対比がまぶしい。
俺はその島の下に長い行列ができているのを見つけた。

「あそこが気球乗り場です、が…、昨日の今日なので流石に動いてませんね」
「それにしても、あの列はなんだ?ずいぶん長いみたいだけど…」
「あれはきっと気球に乗るのを待つ列だと思いますよ。クラウド村でとれるソラマメは朝早いうちに来ないとその日出荷分がすぐ売り切れちゃうんですよ。だから、朝早くから商人たちが買い付けに」

空島でソラマメって…。どんな味なのか少し興味あるな。

「でも、気球は動かないのになんであんなに人が並んでるんだろう?」
「ちょっと列の前に行ってみないか?どのくらい並んでるかも知りたいし」
「そうですね、それでは行ってみましょうか」

実際、列はかなり長かった。ざっと数えて気球を待っているのは100人と言ったところだろうか。俺の知らない種族の人もいて、見ているだけでワクワクが抑えられなかったのはまた別の話だが、俺たちは列の先頭に着いた。

「サトル!サトルか」
「タカ…。無事だったんだな」
「当たり前よ!と言いたいところだが、俺はラッキーだったよ。昨日は気球の番で下にいたから奴に見つからなかったんだ、命拾いしたよ」
「上の様子は…」
「いや、俺は怖くて見に行けてないよ。気球もこの調子じゃ動かせそうにないしな、それでそちらは?」
「タカヒコさん、勇者様だよ」

タカと言ったか、目の前にいる青年の目が大きく見開かれ、驚いている様子が表情を見るだけで伝わってくる。列に並んでいる商人たちもざわざわし始めた。やっぱり、この世界での勇者という立ち位置は、崇められるものなんだな。

「ゆ、勇者様!それは失礼いたしました。私は、タカ・スカイ、この村の気球交通担当です」
「俺はサイトウ・タカヒコ。タカヒコって呼んでくれ。一応勇者だけど、まだ駆け出しだ」
「…!なんと寛大なお言葉…。でも、私に勇者様の事を名前で御呼びしていただくなんて、恐れ多い事で…」

この流れ、結局やるのね…。その後、俺は頑固として俺の名前を呼ぶのを躊躇するタカをどうにか説得して、タカヒコさんと呼ばせることに成功した。

「それでタカ、気球はいつ頃動きそうだ?」
「昨日奴が村を襲った時に、気球も壊していったらしく、ご覧の有様です」

そう言いながら、タカは気球を指さした。気球はタカの言うように、ズタズタに破壊されていて、修理には時間がかかりそうだ

「困りましたね…。これでは勇者様が上に上ることができません」
「そうだな…」

流石に俺も空は飛べません…。
その時だった、一人の商人が手に持っていた書類を風にさらわれてしまい、大きな声を上げた。

「あっ!あれがないと、買い付けができない…」
「まさかお前交易許可証を飛ばしたんじゃないだろうな」
「…」
「まじかよ…」
「大変だ、勇者様、私、紙を追いかけてきますので、待っていてください」
「あぁ、大丈夫だぞ」
「大地よ、大空よ、風よ、我が心と一体となりて、我に力を与えよ。飛行魔法フライング・シエル!」

サトルがそう魔法を詠唱すると、サトルの体は浮かび上がり、あっという間に空へと羽ばたいていった。まるで鳥のように、自由に空を飛び回る様子は、どこかのファンタジー映画を見ているかのようだった。
サトルは、紙を瞬く間に捕まえ、こちらへと戻ってきた。

「はい、交易許可証です。次は風に飛ばされないようにしてくださいね」
「はい、ありがとうございました!」
「すごいな、サトル」
「いえいえ、当然のことですよ。困ったときはお互い様、この村の掟です」
「なぁ、さっきの魔法は?」
「さっきの魔法ですか?あれは『飛行魔法フライング・シエル』です。あれを詠唱することで、私たちスカイ族は空を飛ぶことができるんです」

ブルブルブルブル…。なんだかポケットがもぞもぞするんですが…。
俺は、半分期待と、半分自分、いやあのチートスキルに呆れながら、ピンポンをポケットから取り出した。

「どうしましたタカヒコさん?ピンポンなんて取り出して」
「いや、ちょっとな…」

俺は例のごとく、ピンポンに軽く触れ、ステータスを表示させた。
―――――

≪名≫       タカヒコ・サイトウ
≪職業≫      勇者
≪職業レベル≫   1
≪スキル≫     エフォータ
          魔法無詠唱展開
          魔法習得
≪スキルレベル≫  1
≪取得魔法≫      索敵魔法サーチ・オブ・エネミ―
          火鉄砲ファイアー・カラビーヌ
           草鉄砲リーフ・カラビーヌ
           飛行魔法フライング・シエル

―――――
「…勇者様、なぜ、飛行魔法を習得されておられるんですか…」
「いや、俺にもさっぱり」

さっぱり、分からないわけないですよ、エフォーターのせいですよ、全てのスカイ族の皆さんごめんなさい!
でも、たぶんこれで、空を飛ぶイメージをすれば…。
俺が、鳥になるイメージをすると、体が浮きあがった。

「魔法無詠唱!」
「無詠唱で発動するなんて聞いたことないぞ!」
「やっぱり、勇者様なんだな。すごいお方だ」

下で、列に並んでいた商人たちがざわざわしているのがわかる。無詠唱なんですよ、ごめん。

「勇者様、これで、上まで気球なしで行けるのでは?」
「あっ、確かに」

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