◯モノクローム●

黒鼠シラ

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LAP篇

第129話 顕現の玉具

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ラプのメンバーたちは、葛幸卿を追うために体制を整えていた。明と慈岳が負傷した仲間を医療室へと連れて行き、残る5人はすぐに追跡の準備を始めた。葛幸卿が大ダメージを負っているという情報から、大きな距離は移動していないだろうと予測した。

「秘宝はなんとしてでも取り返さなければいけない。あれはとんでもなく危険な物なのだから。」慈岳は医療室で明に語り始める。

「昔から人の思いは強いもので、それが原動力となって成功を掴むこともあれば、恐怖といった強い感情は悪い方へと働くことが多かった。一定数以上の恐怖や強い感情を受けることで、物や概念が顕現することができる。」
慈岳は語ると、明は息を呑んだ。

「これははるか昔の話なので、今この世に顕現した概念や物はほとんどないだろう。かつては10人前後の強い感情を抱かれるだけで顕現することができたが、武士たちはこれでは無限に湧き出る存在と戦うことはできないと考え、当時最強の無事であり、火車術使いの秤夜義宗(はかりやよしむね)が自らの命をかけて条件を変えたのだ。」

「それによって顕現のリスクはほぼ無くなった。しかし、武士が全盛期だった当時、多くの術使いが存在し、顕現が起きた場合、一定数が闇に堕ちる者もいた。彼らは『恐怖の信仰者(闇の教徒)』と呼ばれた。顕現した概念を崇拝し、極悪非道な行為を繰り返していた最悪の集団だ。」

話を聞く明は、心に重く響く恐怖と絶望感を感じた。「そんな危険なものが存在するなんて…」

「その秘宝はこの世に3つしかなかったうちの最後の一つ。宗一郎はなんとか早く壊そうとしていたが、頑丈でなかなか無理だった。あの秘宝の名は、『顕現の玉具(けんげんのぎょくぐ)』。強制的に顕現を引き起こし、それを崇拝するのとは逆に、使った者を主人として命令に絶対に従うものだ。」

「それを使われれば…葛幸卿は自らを超えるような最強の側近を作ることができるのか。」明は、状況の深刻さを改めて実感した。

「なるほど、だから宗一郎さんは毎晩あの秘宝に向かって斬撃を繰り出していたのですね。」明が質問すると、慈岳は少し驚いた様子で彼を見た。

「見ていたのか?みんなが心配しないように、さりげなくやれと言っていたのに…。」慈岳は呆れながらも、その表情には現状の絶望感が浮かんでいた。

「どうにかして、回復して戦いたい。」明の心には、強い決意が芽生えていた。彼の仲間たち、そしてすでに倒れた仲間のためにも、秘宝を取り戻さなくてはならない。その思いが彼の覚悟をより強くした。

「俺たちがやらなければ、誰がやる?秘宝を取り戻して、葛幸卿を止めるんだ。」明は仲間たちと目を合わせ、希望の声を上げた。その瞳には、再び戦うための意志が輝いていた。
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