黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

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第三章:来たる日に備えて

黒vs白、開戦

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ーーベシッ!!


「…いたぁっ!」



レンが、まさに勅令しようとした、その時。


突然後ろから現れた人物に、レンは頭を叩かれて。


その勅令は、途中でストップされた。





「なーに勝手に勅令しようとしてんだ。

よく見ろよ。あいつ、探してた”禁色”だろ?


お前、バカか?

”禁色”ごと、攻撃しようとしてんじゃねーよ。」


レンを叩いたのは、

レンと同じ真っ白の隊服に身を包んだ、
ガラの悪そうな、金髪で、ツンツンと派手な髪型の男。

たぶん、20歳ちょっと位だ。




「…すみません。つい、カッとなって…。」


レンは、ハッと我に返った表情をして、
そのままゆっくりと、突き出していた右腕を下げた。






「ったく。

チェリーナ隊長からの頼みだし?
ポイント稼ぎで引き受けたのは良いけど…

これじゃ、新人教育どころか、
自分の感情も制御できない、ただのガキのお守りじゃねーか。」


レンの謝罪を聞いても、

派手男は、イライラしたまましゃべり続ける。



「ま、

”禁色”は見つかったし、結果オーライってことにするか。

レン、お前は邪魔だから、下がって頭でも冷やしてろ。

俺がソッコーで終わらせてやる。」





レンに向けて、シッシッっと、

手で、下がるように指示を出して。



派手男はそのまま、

俺とシオンに向かって、歩き始めた。








「それ以上、近付くな!」


俺は、ひとまず大声で警告する。



派手男は、俺の警告を聞いて

ムスッとした表情のまま、
4メートル位離れた所で止まった。



「あと一歩でも近付いたら…

問答無用で、チカラを使わせてもらう。」



(俺のチカラ…戦闘には、向かないけど…。)



内心、不安に思いながら。


俺は、悟られないように堂々と、

ハッタリの脅しをかけてやった。



…んだけど。


派手男は、全然こたえてない様子で、

緊張感のない口調のまま、ヘラヘラと返事をする。



「いやー。なんか、嫌われてんな。


ご存知、我々は…

正義の味方、ホワイトノーブルですよ?」


そう言って笑う派手男は、


さっきまでの、
イラッとした表情から、コロッと変化していて。


まるで別人みたいな、爽やかな笑顔と、口調。



「”禁色”の…シオン君、だったね。

私達の組織は、君を…


君の隣の、コートの下に真っ黒の隊服を着た
【黒の悪魔】の組織の魔の手から、保護するために来たんだ。


我々と一緒に、来てくれるね?」




そう言って微笑む、派手男の周りには…




【”禁色”ってだけで…
監禁されんだから、こいつも可哀想だな。】

【俺は褒美が貰えればそれでいいけど。】

【今後は”家族も一緒に監禁”だったな。】

【こいつが手に入れば、黒の悪魔復活も、すぐか?】



明らかに、ホワイトノーブルの

”闇の部分”について、書かれた付箋が、舞っていた。






「こいつ…”知ってる側”だ…!」


俺は、情報たっぷりの付箋を読むのも後回しにして


(今は…狙われているシオンを、絶対に守る!)



繋いでいた手を離し、シオンより一歩前に出て。


俺の背後に、シオンを隠すように押し込んだ。







「俺が、”知ってる側”…?


ま、何のことか知らねーけど。

【黒の悪魔】を捕まえろって指示は、”まだ”出てないからな。

お前は、今回はスルーだ。」




そう言って、派手男は…



慣れた手つきで、左腕を前に突き出した。



「勅令するーーナナ、滑り寄れ。」






ーーヒュンッ!!



「ちっ!!!」

流れるような勅令に、反応が追いつかなくて。




反射的に、背後のシオンをかばいながら

2人して、その場にうずくまることしかできなかった。




それに、

目では追えなかったけど…



明らかに、”何か”が

俺とシオン目がけて、迫ってくるのを感じた。







「それでガードしたつもりか?

俺のナナからは、逃げられねーよ。」



派手男の、冷やかすような声が聞こえた、



その時…



「行っちゃダメ!!!」



俺とシオンの後方から、

ミチカの、叫ぶような声が聞こえた。








「ぐっ!!!」


ミチカの叫びのすぐ後、

すぐ近くで聞こえた、うめき声。







その声に驚いて、

うずくまっていた顔をあげると…



「叔父さん!ツカサ叔父さんっ!!」



シオンの叔父さんが。


俺とシオンの目の前で、

真っ黄色の紐…いや、リボンに。


生き物のようにうねり、動くリボンに、縛りあげられていた。







「ぐっ…!くそっ…おい、そこの派手な男!


シオンは…どこにも、行かないぞ!

これ以上、シオンに近付く、な…っ!」



そう、叫びながら

シオンの叔父さんが、
真っ黄色のリボンに、どんどん縛られていく。





「だめだっ!叔父さんも、狙われてる…!」


シオンがそう叫んで、リボンに手を伸ばす。




俺も一緒になって、必死にリボンを解こうとするけど


「くっそ!なんだこれ!」


俺たちの手は、

絡まっていくリボンに、何の影響も与えられなかった。






「急に出てくんなよなー。

ま、”禁色”の家族っぽいし?このまま連れて帰るか。」



そう、面倒くさそうに話す派手男の周りには

派手な、真っ黄色のモヤが溢れていて。



その中心には…

真っ黄色の、手乗りサイズのヘビが、1匹。


空中を泳いでるみたいに、漂っていた。




「あれが、あいつのオーバー…!」


そのヘビを、よく見てみると…



金色の、リボンが。

可愛らしく、蝶々結びで、
ヘビの身体を着飾っているみたいに、結ばれていた。






「おい、新人。

こいつ、預かっとけ。」


そう言って、派手男が腕を軽く振ると





「ぐあっ!!!」


シオンの叔父さんは、大きな悲鳴をあげて



「ツカサ叔父さんっ!!!」


シオンの叫びも虚しく。


リボンに縛られたまま、
ぐったりと動かなくなった身体は、


引っ張られるように空中を動き、
派手男の後ろにいた、レンの隣の地面に横たえられた。





「ちょっとチカラ強めて、気絶させといたから。

これなら新人でも、監視できんだろ?

俺って優しー。

じゃ、”禁色”を捕まえるまで、ちゃんと見張っとけよ。」





派手男はそう言って。

改めて、俺とシオンの目の前に立つ。







「大人しく…は、捕まってくれない感じ?」


「…覚悟しろ。」



シオンは、いつもの無表情からは想像もつかないほど

眉間にシワを寄せて、派手男を睨みつけてつぶやいた。




そして、


「ヨウ…お願いがある。

叔父さんのこと…任せたい。

ヨウのチカラなら…レンを、説得できる。


俺は…この金髪を…気絶、させたい。」



シオンは、
派手男から目をそらさないまま、
俺に向かって、ハッキリとつぶやいた。





「シオン…!

分かった。叔父さんは、俺に任せろ。

んで…その金髪は、お前に任せる!

思いっきり気絶させろよ!



ミチカ!
お前は、大先生を迎えに行け!」



「…うん、気絶させる。」

「分かったわ!」





こうして…

シオンvs派手男

俺vsレン




ブラックアビスvsホワイトノーブルの戦いが、始まった。
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