黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

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第三章:来たる日に備えて

”禁色”の少年

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(ここに、俺と同じ”禁色”が…。

ひどい目に、あってるらしいし、
早く見つけて、助けてあげたいな。)


はやる気持ちを抑えて。

一応初めてくる場所だから、
黒の隊服をコートで隠して歩く。


ホワイトノーブルは、
まだ表立って戦う気は無いみたいだけど…

さすがに、こんなところで
ヤツラに見つかるのは避けたかった。



そんなこんなで、自分でも少し怪しいなと思いながら
コートの前をピッタリと閉めて、周囲を警戒して歩く。



太陽もすっかり落ちて、
薄暗くなった村のメインストリートを歩きながら、
小道の先の空き地に、目を向けた…その時。



「…あっ!」



メインストリートから少し脇にそれた、その場所に…

5、6人の子ども…って言っても、俺と同じ歳くらいの…少年たちが。



輪になって、1人の少年を取り囲んでいるのが見えた。



「情報通りの、珍しい薄紫色の髪の毛…!たぶん、あいつだ!」


今まさに、少年たちの輪の中心にいる人物こそ…

俺たち特色隊が保護するよう命じられた、”禁色”の発現者だと、俺は直感した。






『ホワイトノーブルは、間違いなく…

”禁色”の発現者を集めて、
”黒の悪魔”のチカラを、世に放とうとしています。』


任務を受けた時の、サクヤ隊長の言葉を思い出す。


『どのように”禁色”を使うつもりなのかは、残念ながら分かっていません。

しかしヤツラが今も、”禁色”を探し回り、
秘密裏に本部へ拉致・監禁していることは確かです。

我々は、ホワイトノーブルより先に”禁色”を見つけ、
その人達に事情を説明し、保護する使命があるのです。


そして、今回の”特色隊”の初任務は、まさにそれです!


ヨウ君に出会ったことで、極めて薄い”禁色”もあることを知ってから、
”禁色”のカラーズの、捜索の幅を広げてみたんです。

そしたら!
ある村に、極端に薄い”禁色”のカラーズをもつ少年がいることが分かりました。

その少年を、ホワイトノーブルより先に見つけ、保護してください。

その少年の特徴は~…。』



(うん!あの時サクヤ隊長の言ってた通りだ!)



メインストリートから、薄暗い小道に入って、
さっきより近くで、空き地にいるその少年を見てみた。



俺より少し大人っぽい顔立ち。事前情報の『16歳』と一致する。

あとは髪の色も、やっぱり珍しい薄紫色だし、あとは…


あれだけの人数に囲まれていても、表情1つ変えていない。

これも『無表情』っていう、事前情報通りだった。




「声、かけるか?でも…。」



そう、実は…

見つけたらまず、本人に接触するのは大先生だと決まっていた。



なぜなら大先生は、
触れれば相手の体内のカラーズを読み取ることができる体質の持ち主。

つまり、どんなに薄いカラーズでも、
大先生が触れば、確実に”禁色”かどうか、判明する。


もし俺が先に接触して…
例えば信じて貰えず逃げられたり、嘘をつかれたりしたら面倒だから。


大先生が、最初に”挨拶”で握手をして、
そこでホンモノかどうか、瞬時に判断する…という、任務遂行に向けた作戦だった。





(思ったより、すぐ見つかっちゃったな…。

大先生達との約束の時間まで、まだ30分はあるぞ…。)



俺はひとまず、声をかけるのはやめて。


空き地の様子がよく見える、近くの木によじ登り、
様子を伺いながら、青々と茂る葉っぱの中に身を隠した。




空き地の少年たちは、何か話をしているみたいだけど…


「なんであんなに…取り囲まれてるんだ?」



確か、事前情報では…



『”禁色”の少年は、
【黒の誕生】で家族を失い、その後親戚のいるこの村へ。


ただ、その親戚の叔父ははろくでもない人物で、常に酒浸り。

少年に暴力を振るうこともしばしば…。』




だったはず。



叔父から酷い扱いを受けている、って聞いてたけど…



「この状況は…まさか…!」


そう思った時には、木から勢いよく降りて、空き地に向かって駆け出していた。






「いい加減、何とか言ったらどうなんだよ!」

「そんなボゾボソ喋られても、聞こえねぇよ!」

「澄ました顔しやがって…!」

「この前みたいに、”偶然”こんな外れの空き地に
大人がくると思うなよ!」


近付いてみてハッキリと聞こえた、少年たちの暴言。


そして、1番ガタイの良い少年が、
”禁色”の少年に向けて、拳を振り上げた、その時…



「シオン!危ないっ!!!」


ちょうど空き地に到着した俺は、
そのデカい少年の横っ腹に、体当たりをお見舞いした。



「いってぇ!!」

倒れる少年と、それに駆け寄る残りの少年たち。


(うん!
いくらデカくても、無警戒の横からの力には弱いよな。)


俺は結果に満足して、背後を振り返り


「大丈夫かっ?」

上がる息を抑えながら、
今まさに、殴られそうになっていた

”シオン・ツーリー”に、声をかけた。





シオンは相変わらず無表情のままだったけど…

よく見たら、一応目が少し大きく見開いていたから、
驚いていないわけでもないらしい。



そして、俺に向かって、ゆっくりと口を開く。




「俺は…

叔父さんのこと、嫌いじゃないから。

でも、ヨウの言うことも…分かるよ。」


俺の目を、まっすぐ見て。

シオンは、小さい声だけど、ハッキリとそう言った。




「はっ…?な、んで…俺の名前…?」



俺がシオンを知っているのは、ブラックアビスからの情報があったからだ。



じゃあ、いきなり俺の名前を呼んだ、コイツは一体…?


(それに…何だって?叔父さんのことなんて俺、質問してないぞ?)




そんな、混乱する頭を整理する暇もなく



「くそっ!!

お前ら2人とも、ただじゃおかねぇ!!」


さっきふっ飛ばした大きな少年が、
赤いマントに興奮する闘牛のように。

まさに、俺たちに向かって突進してこようとしていた。




「ひとまずここは…


…逃げるぞ!!!」


俺は、シオンの手を掴んで。

一目散に空き地を出て、
目についた狭い路地に、足を踏み入れていった。
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