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間一章 ガルムドゲルンの日々

#07 楽しみな日々へと(SIDE:ティシャ)

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□■□■□





 友人たちやお姉さまたちとの楽しい昼食も終わり、今は食後のデザート─昨日の内にウェナお姉さまと用意していたミルールのプリン─とエマお姉さまたちが入れてくれたアエットをみなさまでいただいています。
 みなさまにこやかに食べているところを見ると、作ったかいがありました…うれしいです。

「美味しいわね、これ。ティシャちゃんが作ったんだって?」

「あ、はい。ウェナお姉さまとごいっしょにですが…」

「あら、そうなの。ウェナと一緒に…ね。どう?ウェナはちゃんとやってる?」

「はい、ウェナお姉さまにはいつもお世話になっております、いろいろ教えていただきまして」

「いやぁー、それほどでもないよぉー」

「調子に乗らないのウェナ。でもそう、ウェナでも役に立ってるのね」

「もちろんですっ、わたくしのおししょうさまの内のお一人ですので」

 ウェナお姉さまの姉であるジィナお姉さまは、ウェナお姉さまがこの家でみなさまと仲よくできているのかお気になされているようです。
 ウェナお姉さまはいつも明るく楽しそうで、それにいつもわたくしにやさしく料理のことを教えてくださいます。
 なのでジィナお姉さまがご心配するようなことはなにもないと思うのです。

「ティシャ、今度うちに帰って父さんと母さんにご飯作ってやれよ。絶対喜ぶぞ」

「そうですね、もう少し上手になったらうかがうことにします。お父さまとお母さまにもそう伝えておいてもらえますか」

「そっか、わかった」

 ディル兄さまがこんなことを言うなんて…あ、さてはわたくしのごきげんとりですね。
 実を言うとわたくし、ディル兄さまがナオトお兄さまへ勝手に勝負をいどんだことをあまりよく思っておりません。
 まぁ、ナオトお兄さまがこてんぱんにしてくれたので少し気ははれたのですが、その後がいけませんっ。
 あろうことかディル兄さま、ナオトお兄さまから剣をもらったのですよっ!
 わたくしだってまだナオトお兄さまにプレゼントしてもらったことなどなかったのに、なぜディル兄さまがわたくしより先に貰っているのですか!と…。

 コホンっ、少し取り乱してしまいました。
 こんなことを考えてしまうのははしたないとは思うのですが、たまに表に出してディル兄さまにあたってしまいます…わたくしもまだまだ子供だということですね…こんなことではナオトお兄さまにきらわれてしまうかもしれません、気を付けなければ。

「おいティシャ、その時は俺もいいか?」

「スペ兄さまもですか?ええ、かまいませんけど」

「ならオレっちも行くや。いいっしょ?」

「ロッサもですか。わかりました、ではその時にはここにいるみなさまをご招待いたしますよ」


「わたしたちもいいの?ティシャ」
「ぃぃの?ティシャぉねぇちゃん」


「ええ、トウカもヒミカもぜひ。カティもウォルもですね。まぁまだまだ先の話ではありますが」

 スペ兄さまをはじめ、ロッサまでわたくしの料理を、と言うのでそれなら今日のようにみなさまをお招きすることにしました。
 まだまだ覚えることはたくさんありますので、今すぐにというわけにはまいりません。
 おししょうさまであるシータお姉さま、ウェナお姉さま、リズお姉さまにみとめてもらえる日まで努力あるのみです。

「どれくらいー先なのー?」

「そうですね…シータお姉さまからおすみ付きをいただけたらですかね」

「それは大変かもよぉ?ティシャちゃん」

「大丈夫です、ウェナお姉さまもリズお姉さまもおりますしっ」

「そっかー、ならもうちょっとわたしも頑張らないとっ!」

「はいっ、よろしくおねがいしますね、ウェナお姉さま」

「まっかせてーっ!」

 シータお姉さまがおいそがしいので、ウェナお姉さまとリズお姉さまに教わることが多いのですが、お二人とも料理がとても上手なので、おししょうさまとしてまったく不満はありません。
 どんどん教わってうでをみがいて、そしてナオトお兄さまやみなさまによろこんでもらえるようがんばりますっ。

「なぁ、姉ちゃんもここで修行したらいいんじゃないの?」

「えっ、わたしもいいの?」

「にーちゃんもいるし、その方がいいんだろ?姉ちゃんは」

「それはそうだけど…ナオトさんがいいって言うか…」

 ウォルからミルお姉さまへステキな提案がありました。
 なんとミルお姉さまもここでわたくしと同じように修行をすると言うのです…今もエマお姉さまをはじめ、キャルお姉さま、チェルお姉さま、そしてコロネも一緒にウェナお姉さまたちの指導を受けているのですが、さらにミルお姉さままでご一緒できるとは…とてもすばらしい考えかと思いますっ。

「なにー?ミルお姉ちゃんもいっしょに住むのー?」

「え?えっと……一緒に住めたらいいなぁ、って…」

「セヴァルさーんっ!」

「畏まりました。お部屋はどちらになさいますか?一階は主に私達使用人が多いのですが」

 ウェナお姉さまの一声でなぜか決まりのようです、セヴァルがもう部屋の案内をしているので…。
 一緒にですとヒナリィの言う通り、ここに住みながらのほうがわたくしもよいとは思います。
 それに…ナオトお兄さまもおそらくよろこぶでしょう、お姉さまたちに囲まれてるナオトお兄さまは本当にうれしそうに、楽しそうにしていますから。

「えっ?ちょ、ちょっと待ってっ!?そんな簡単に決めていいの?ナオトの意見は……」

「なんだウェナ、それでいいのか?」

「あー、うん。この三人なら何も問題無いかなーって。ねー、ファルさんっ」

「ええ、そうですね。恐らく問題無いかと」

「ナオトお兄さまならお気になさらなくてもよいのではなくて?むしろよろこぶかと思いますわよ」

「フラウ様の仰る通りかと。私共も歓迎致します」

 ファルお姉さま、エマお姉さま、それにフラウもわたくしと同じようでした。
 この三人のお姉さま方ならナオトお兄さまも文句の付けようがないでしょう、三人ともおきれいでかわいらしいお姉さま方ですし。

「ジィナ様は生花店を営んでいるとお聞きしましたが」

「え、えぇ。実家が花屋なのよ」

「でしたら我が家の庭の面倒を見ていただけないかと。いかがでしょうか」

「私とキャム、コロネだけでは中々手が回らなくて」

「あ、あのっ。わたしにいろいろ教えてくれると大変助かるのですっ」

 ジィナお姉さまはお花屋さんとのことで、我が家のお庭のお世話を、とキャムお姉さまとチェルお姉さまが提案されてます。
 これもまたいいお話なのではないかと…コロネもやる気を出しているようです、あまりがんばりすぎなければいいのですが…少しだけ心配になります、コロネはがんばり屋さんですから。

「ジィナ、これは決まりじゃないか?」

「そ、そう…ね。そこまで言ってくれるのなら…私もお世話になろうかしら」

「よし、セヴァルって言ったか」

「はい、シャリー様」

「アタシも含めて三人、よろしく頼む」

「畏まりました、ではそのように。お部屋はお好きな所で構わないとナオト様から了承を貰っていますので、どうぞご自由にお選びください。荷物などありましたら運搬の手配もいたしますので、私かエマにでもお伝え願います」

「悪いな、よろしく」

 どうやらほぼ決まったようです、三人とも我が家に住むことが。
 これでまたにぎやかに、楽しくなりそうでわたくしもワクワクしてきてしまいます。

「やー、お姉ちゃんも来ちゃったかぁ、やっぱり」

「どういうこと?ウェナ」

「え?いやぁ、ほら、私がここに住むって言った時、何となくお姉ちゃんも来そうだなーって思ってたんだよねー。正直わたしとかリズっちゃん見て羨ましいとか思ってたでしょー。違う?」

「………そ、そんなことないわよ?」

「今更だな、ジィナ」

「……もうっ。ええ、そうよっ、羨ましいと思ったわよ!なんなら今日来たらもっと羨ましいと思ったわよっ!」

「そっかそっかー!うんうん、これでもっと楽しくなりそーっ!」

「ウェナ、アタシもいるんだぞ?」

「もっちろん分かってるよーっ。でもこの家ではわたしが先輩だからねっ、そこんとこ忘れないようにっ!」

「チッ…まぁ最初は我慢してやる……」

 ウェナお姉さまとジィナお姉さま、そしてシャリーお姉さまは本当に仲が良さそうで、見ているだけでこちらまで楽しくなってきます。
 わたくしもお姉さま方ともっと仲良くなれるようがんばっていかなければ…お姉さま方はみなさまおやさしいのでそれほど心配はしていないのですが、それに甘えないようにするという意味でがんばっていきます。

「えっへへー」

「…?どうしたのです?ヒナリィ。いきなり笑いだしたりして……」

 と、何やらヒナリィが急に笑いだしました…その笑い方はあまりいい感じはしないのですが。
 いつものいたずらを企んでいる時のような…。

「えっとねーっ、みんなビックリさせるよーっ!せーのっ!はいっ!!」


 シュンっ!


「お、なんだ、みんなで美味しそうな物食べてるじゃないか」


『『『『『っ!?』』』』』


『『『ナ、ナオト(さん)(様)っ!?』』』
「「お兄さんっ!?」「「ナオトお兄さまっ!?」」」
「わーっ!ナオトお兄ちゃんだーっ!?」


『『『『『………と、誰???』』』』』


「うっひゃーっ!シータちゃん達が言ってた通り、ホント可愛い娘美人な娘がいっぱいなのさー!!」

「ナーくん?そのお姉ちゃんはだれー?」

 な、なんと目の前にナオトお兄さまがっ!?それと…お会いしたことのない方が……。
 転移されて来たのでしょうが、いきなり目の前に現れるとさすがにみなさまおどろいています、わたくしも当然ふくめて。

「えっと…」

「やぁやぁみんな!はじめましてなのさーっ!メイはメイガースラックミース!ヴェルドグライア公国出身のドワーフさっ!メイって呼んでくれると嬉しいのさーっ!」

 と、ナオトお兄さまと一緒に来られた方がごあいさつをしてくださいました…とても元気なドワーフの方らしいのですが、やはりドワーフということで身体はわたくしやヒナリィと同じくらいのお姉さまです…。

「えっとぉ…お兄さん??」

「あー、まぁ、つまり……そういうことで………」

「シータちゃん達も勿論知ってるのさー!というわけで、今日からメイもお世話になるのさーっ!みんなよろしくーなーのさーっ!!」

 どうやらメイお姉さまもこの家に住むらしいのです…シータお姉さま方もご存知とのこと。
 これはますますにぎやかになりそうな予感です…とてもいい意味で、ですよ?もちろん。

 それはそれとしてヒナリィはまたやってくれましたね……おそらく一人でナオトお兄さまへ念話したのでしょうが…まったく、ナオトお兄さまもお忙しい身だというのに、わがままがすぎるのではっ。
 まぁでも大変うれしいのは本当のことなので…今回だけはゆるしてさしあげますっ、よくやりましたヒナリィっ!

「いや、ごめんないきなり。ひぃに呼ばれたとあっちゃ、来ないわけにはいかないからさ。それとメイの事もあって丁度良かったかな、と」

「ナオトお兄さま…その、大丈夫なのですか…?」

「ん?あぁ、あっちはシータ達もいるし大丈夫だよ。それにそろそろ顔出して来いとも言われたしね」

「ナーくーんっ!」

 ヒナリィが早速ナオトお兄さまに抱きついて、そのまま抱きかかえられています…もうっ!こういう時のヒナリィは本当にズルいと思うのです…わたくしだって、わたくしだって…っ!

「相変わらず元気だな、ひぃは。で?ティシャは来てくれないのか…?」

「え…あっ!はいっ!」

 ナオトお兄さまがわたくしを呼んでくれましたっ。
 うれしくて、はしたないと思いつつもかけ寄ってしまいました…っ!すぐにナオトお兄さまが抱きかかえくれて…あぁ、ここは本当に落ち着きます……わたくしの一番大好きな場所なのですっ!

「ナオトお兄さま…っ」

 もうたまらずナオトお兄さまにギュッとしがみついてしまいました…みなさまが見ているというのも忘れて。


「よう兄さん、邪魔してるぞ」
「久しぶりね、ナオト」
「ナオトさん、お久しぶりですっ」


「シャリーにジィナ…それにミルも来てたのか。久しぶり、珍しいな」

「ナーくんあのねー?」

「ん?」

「シャーお姉ちゃんもジィナお姉ちゃんもミルお姉ちゃんも一緒に住むってーっ」

 三人のお姉さま方がナオトお兄さまとごあいさつしたあと、わたくしの正面、ナオトお兄さまの右腕に抱きかかえられたままのヒナリィが、先ほど決まったことをナオトお兄さまに伝えました。
 先ほどわたくしたちをおどろかせたお返しにナオトお兄さまにもおどろいてもらいましょう、ふふっ。

「はい???」

「…というわけだ兄さん。見返り確かに受け取ったぞ」

「え、あっ…そういうことか……。いや、うん、シャリーはそれで分かったけど、じゃあジィナとミルは…?」


「私は庭師として、ね」
「わたしはお料理修行ですっ。弟子入りしました!」


「そ、そうなのか……」

 ふふっ、ナオトお兄さまもおどろいて…というか、少しポカンとした感じでした。
 どうやら成功のようですね。

「なーんにも問題ないよねっ、お兄さんっ!」

「いや、まぁ、みんながいいなら……」

「やはりナオト様でしたね…ふふっ」

「っていうかファル、その姿……」

「あ、はい。ヒナリィ様からこのままでいてほしいとのことでしたので……」

「わぉ!ファル?はサキュバスなのかー!」

「あの、メイ様も大丈夫なのでしょうか…?」

「ん!なにがー?キレイで美人なのさーっ!」

「………///」

 ナオトお兄さまもみなさまがよければとおっしゃってくれましたので、これでもう完全に決定したようです。
 今日だけで四人のお姉さま方がわが家に住むこととなりました。
 そしてファルお姉さまを見て嬉しそうにするナオトお兄さま…近くで見ているのでゆるんでいるお顔がはっきりとわかります。
 サキュバス姿のファルお姉さまはそれはもうお美しいですからね。
 メイお姉さまもファルお姉さまの本当のお姿をほめてらっしゃいます、わたくしも…というか、ここにいるみなさまがそう思っているのではないかと。

「兄さん、顔がニヤけてるぞ」

「っ!?いやっ、これは……」

「別にいいじゃない、気に入ってるんでしょ?美人だものね」

「うっ…ま、まぁ、その通りなんだけど……」

「もー、そこは正直に「ファル、素敵だぜ」くらい言ってもいいのにぃ」

「こ、こんな大勢の前ではちょっと……。そ、それより!初めましての子がいるなぁー!」

 お姉さま方にいじられて話をそらしてしまいました。
 ナオトお兄さまの照れたお顔もまたいいものです、しかもこんなに近くで見られるとは…うれしすぎますっ。

「んとねー、わたしとティシャの友だちだよーっ」

「ナオトお兄さまと初めてお会いするのは…トウカとヒミカ、それにロッサとスペ兄さまでしょうか」

「そっか、ティシャとひぃの友達なのか。初めまして、漂流者で冒険者のナオトです。みんなよろしくね」


「初めまして、燈花と言います。こっちは妹の氷見華です。あの、ナオト兄さん、お母さん…優里香を助けてくれてありがとうございました」
「ぉにぃちゃん、ぁりがとぅ、ござぃましたぁ」


「ああ、二人が優里香さんの…。うん、気にしなくても大丈夫だよ。お母さんは元気?」

「はい、ギルドでがんばってます」

「そっか。優里香さん、今はギルドで人気の受付嬢だからなぁ。あ、そうだ、後で顔出しに行こうかな」

「いいんじゃないー?リズっちゃんもいるしねーっ。それにぃー…むっふっふっー」

「何だよウェナ、その含み笑いは…」

「んーんっ!なんでもなーいっ、エヘッ」

「気持ち悪いわ、ウェナ」
「気持ち悪いゆーなっ!」

「プッ、あははっ!シャリー?とウェナ?は仲がいいのさーっ」

「おいメイ、ずっと穴蔵暮らしで目がおかしくなってるのか…?」

「ま、シャーはこう言ってるけどメイの言う通りだかんねーっ」

「…………チッ」


「ナオト兄、オレっちはロッサ、ロッサルーミラ・アス・ガイアルドルヴだよっ、ティシャやヒナリィとは生まれた時からの友だちだぜっ」

「俺はロッサの兄でスペリアルヴリッグ・アス・ガイアルドルヴ、スペでいいぜ。ナオト兄の話はディルから聞いてる。今度俺とも手合わせしてくれよなっ!」

「ナオト、俺もあれから大分腕を上げたぞっ。そろそろまた手合わせしてくれよっ!」

「ロッサにスペはひぃ達と同じ貴族なのか。うん、よろしく。手合わせか…よし、いいぞ。後でやろうか、そこの庭ででも」


「「よっしゃっ!」」


 初めてナオトお兄さまがお会いしたトウカ、ヒミカ、それにロッサとスペ兄さまがごあいさつをしました…そしてさり気なく手合わせの約束など……ディル兄さままで。
 でもいいです、またこてんぱんにされるところをさらしてもらいましょう、それにナオトお兄さまのかっこいいところがまた見られるのなら願ってもないことです…ふふっ。
 あとメイお姉さまはなじまれるのが早いようですね…シャリーお姉さまとウェナお姉さまのやり取りに入っていかれています。
 わたくしもメイお姉さまと早くなじめるよう、いっぱいお話をいたしましょう。

 こうしてステキな休日をみなさまと過ごすことができました…ナオトお兄さまが来てくれて本当にうれしかったです。
 またすぐにシータお姉さまたちの所へ戻られるとのことですが、今日だけはいっぱい甘えることをおゆるしください…次にお会いできる時までにはもっと成長してナオトお兄さまにふさわしい女性になれるよう努力はおしみませんので。

 これからの日々がますます楽しみになった一日なのでした。



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