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第五章 姫達の郷帰りと今代の勇者達

#33 放っておけない質

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「………わたし、は……もう…マスター、から…離れ、られ…ない……身体…だか、ら………。……身も…心、も……全て…マス、ター……の………もの、なの…………」


 …………んん?あれ?ちょっとリオさん、その言い方はどうなんですかっ?
 変な誤解招きそうなんですがっ。


「…うわぁ……これまたスゴいねぇ………」
「奴隷扱いなんですか?酷いですね」
「ちょっとナオトっ、あなたリーオルに何したのよッ!?」
「………ふぅ…(フルフルっ」
「これはちょっとヒくにゃぁ……」
「リーオルちゃんが可哀想っちゅっ」


 ほらやっぱりぃっ!いや待って、君らが思うような扱いは何一つやってませんからっ!
 ちょっと不安になってた俺は一体なんなんでしょうかねっ!?

「そりゃまぁ離れられるわきゃねーよなぁ、あんなの知っちまったらよぉ」

「あれはね…見てるこっちも丸分かりだし」

「ウチらには分からへんけど、リオにとっては格別なんやろなぁ」

「あんなぁ~いい笑顔ぉ見ちゃったらぁねぇ~」

「いやいやいやっ!その、俺がリオをそうしましたみたいな言い方やめてくれるっ!?アレはリオにとって必要なことなんだからどうしようもないだろっ!」

「だからその、アレってなんにゃ?」

「うっ……それ、は…そのー……」

 やっぱりこの話題に戻ってきた…なんで?
 今のこの面子には全く関係ない話題なんじゃないですかねっ?
 君らのこれからを話してたはずなのにっ!

「アレっていうのは魔力補充のことなんだけど…リーオル、あなたがそこまで言う程いいの…?」

「魔力補充?竜人って魔力補充しなきゃダメなの?」

「リオはちょっと特殊なの…。竜人の姿なんだけど種族的には魔人種ってことになってるから、魔力が必要なんだよね」

「そういえば…兄さんがそれっぽいこと言ってた気が。ラビィを庇って瀕死の状態の時に何かした後、種族が変わったとかなんとかって」

「それだな。上手い具合に魔石を取り込めたんで、こうなっちまってるってワケだ」

「なるほどねー、だから魔力を補充しなきゃいけなくなったんだ。そんで?それとリーオルの今の状態にどんな関係があるの?」

「………魔力、補充…は……ここ…から……して、もらう……の…………」

 うぉーいリオさんっ!やっぱりそうしちゃうんですねっ!
 俺が思ってたのと寸分違わずだよそれっ!頬染めて胸持ち上げてぇ!
 あ、いや…ドヤ顔してリオと一緒になってそれを持ち上げてるイアは想定外だった…って、お前も何やってんの!?


「「「「「………」」」」」


「おいおい…オメーどんだけテクニシャンなんだよ……それだけで虜にしちまうとか」

「テク…って、だから違うっ!みんなが想像してるようなことはしてないからっ!誓って!」

「でもー、触ってるんだよねぇ?それ」

「触っ…てる、けどっ、そうしないとダメだって、リオが……」

「なに狼狽えてんだよナオト。いーじゃねーか、して欲しいっつってんのはこっちなんだしよ。なっ?リオ」

「……(コクコクっ………。……もう…これ、して…くれな、い…と………生きて…いけ、ない…の………」

「……リーオルにそこまで言わせるなんて…。あなたコウキやケンゴ以上なのね、魔力が」

「あ、いや「……そう、なの………」……あの「やっぱりね。じゃあどうしてナオトが勇者じゃないのかしら?」……だから「あー、それな。ナオトは手違いでこっちの世界に来たヤツだからなぁ」………」

 …喋らせてくれない…。
 魔力がどうこうなんてリオにしか分からないだろうし…ステータス上おかしな事になってるから、多分他の人とは何かしら違いはあるんじゃないか、とは思うけど。
 それと俺はイレギュラー…エクリィのミスでこっちに来たんだから、勇者みたいにそんな大層な使命も無いし。
 強いて言うならエクリィの暇潰し用観賞物にされてるか…今となってはアイツもメンバーになっちゃってるから別にいいんだけど。

「……だ、から………もう…一緒に、は……行け、ない…の……。………ごめん、ね…………」

「リーオルがそれでいいなら別に謝ることなんてないんだけど…。元々これはボクたちの役目なんだしさ。まっ、おにぃ達に出来てボクたちに出来ないとかあり得ないからなんとかなるだろーしっ」

「そうね、攻瑠美の言う通りよ。兄さん達に遅れを取るとか考えられないから」


『『『………』』』


 えーっと…なに?君らお兄さん達と仲悪いの?
 あ、いや、単に対抗意識燃やしてるだけか…。
 でもなぁ…簡単そうに言うけどやっぱり大変だと思うぞ?魔王を倒して世界を救うなんて。
 けどそう考えると攻輝と堅護はよくやれたよな…もしかしたらその二人の妹なんだから、案外すんなりいけたりもするのか…?

「本当は私も付いていってあげたいんだけど、あの頃ほどの力はもう無いのよね……」

「大丈夫ですよ。先代は先代で役目は終わってるんでしょうし、今代の私たちに任せてもらえれば」

「そーそー、ボクたちがビシッとキメてきてあげるよっ」

「言ってることは頼もしいんやけど…やっぱり一筋縄じゃいかないんちゃうかな……」

「チュチュ達相手に苦戦してるようじゃ、まだダメっちゅよね……」

 あー、んー……これもうダメかな。
 姫達も俺と同じように思ってるみたいだし…。
 こうして関わっちゃって、はいそれじゃあとよろしく、ってワケにはいかないよなぁ…。

「…一つさ、提案があるんだけど……」

「ふふっ、ナオちゃん~。当ててぇあげようかぁ~?」

「ナオトさんならそう言い出すんじゃないかと思ってましたっ」

「え…なんで分かった?」

「やって、ナオやもんなぁ」

「だな。ま、ナオトの好きにすりゃいいぜっ」

「……マスター、の……思い…の、まま……に………」

 姫達とリオには何故かバレていたらしい…俺ってそんなに分かりやすいのかな?
 自分に力があって何かしら助けになれるんだったらそうしてあげたいって思うのは、別におかしくはないよな…。
 向こうの世界じゃこんなの物語でとしか考えられないから軽く思いがちだけど、今のこの世界では割と本気で重責なんだろうし。
 皆はそうしようとしてる俺に黙って付いてきてくれるみたいだ…後でちゃんと皆の了解取ろうと思ってたんだけど、全くその必要はなく俺のしたいようにしていいって。
 何も言わずに分かって認めて付いてきてくれるとか、どんだけできた嫁達なんだ…。

「どんにゃ提案にゃ?」

「あー、うん、ペルもチュチュも不安そうだから、少しでも手助けしてあげられないかなって。俺達でよければ修行とか付き合うよ」

「えっ、ホントっちゅかっ?」

「それはかなり嬉しい申し出だけど…お願いしてもいいのかしら」

「ええ。彼女達とは同郷ですし、こちらには魔王討伐経験者のリオもいます。それに…」

「こーゆーのはほっとけねぇタチだかんな、ナオトはよ。もちろんアタイらも協力すんぜ」

「そういうこっちゃ。こっちも冒険者やし、そこそこ相手にはなると思うで?」

 やっぱりバレてる、俺の思ってること…アーネの言う通りだし。
 こうやって知り合っちゃったからには見て見ぬふりは出来ないんだよな…俺。
 でもこれ、昔の…それこそ今の身体の歳くらいの話だよな、何にでも首突っ込みたがるって。
 周りも顧みず小さな親切大きなお世話だって思われようが。
 家庭持ってガキ共が大きくなるにつれ、他人と関わるのが億劫になっていって一人が楽って思ってたけど、こっちに来てからそれは止めようって、今度はちゃんと人と関わっていこうって決めたのはいいけど、ここまで戻るものなのか?

 あぁ、そうか…これ、皆と一緒に居るようになったからか…なんだかんだ温かくて、冷める暇もない関係で。
 だからこうやって積極的に関わろうって強く思えるようになってきたのか…。


「ボクたちってそんなに頼りなさそうに見えるかなぁ?やっぱり…」

「これでも割と自信はあるんですけどね。兄さん達に話も聞いてたし」

「いや、二人が頼りないってわけじゃないよ、勇者として召喚されたんだからそれなりの力は持ってると思うし。だけどほら、ペルやチュチュが不安がってるから、ちょっとでも安心出来るようになれば…」

「っつーのはまぁ建前なんだけどなっ」

「可愛いぃ娘はぁ~放ってぇおけないぃ~んだよぉねぇ~?」

「ナオトさん、また増えちゃいますよ?」

「ウチらは別に構へんけどなっ」

「……また…賑や、か…に……なる、ね…………」

「ちょっ、何言ってんのっ!?勝手に建前とか言わないでくれるっ!?本音!本音だからちゃんとっ!!」

 何言い出すんだ皆はっ、「可愛い娘には目がないんだからなーナオトは」みたいに決め付けてないかそれっ!
 そりゃ、俺だって男なんだから少しは思うところもあるけど今回は無いよっ!
 大変なことだろうなって心底思ってるから言ってるんだって!
 折角さっきいい感じで皆が居るから、なんて思ってたのが水の泡だよっ!


「えへへ…ボクたち可愛いんだってー護璃っ」

「そ、そんなお世辞本気に取らないでよ攻瑠美…」

「そういうクルも満更じゃなさそうっチュよ?」

「にゃーも可愛い?可愛い?」

「ハァ…これはあれね、成るべくして成ったってことねー」

「そうみたいね…。これ、お願いしたの早まったかしら…?」

「おいおいナオトさんよぉ…オメーこんだけ綺麗ドコロ揃えといてまだ足りねぇってのかよ」

「だから違うって!あぁもうっアーネっ!いらんこと言うなよっこの流れでっ!」

「あー、ワリぃワリぃ。ちと調子にノリ過ぎたわ、クハっ」

 それ全然悪いと思ってないだろっ!これどう考えてもいくら俺が気を付けようと皆が増やそうとしてるとしか思えないんだがっ!
 いやホント待って、勇者はマジ洒落にならないと思うんですけどっ!そこんとこ分かってるのか皆っ!

「まぁまぁ、そこは今後の成り行きってことでとりあえず置いておいて、どう?わたし達の手伝いとか要らないかな?」

「要らなくないっチュ!大歓迎っちゅよ!」

「にゃーも賛成にゃっ!助かるにゃーっ」

「それじゃぁ~決まりかなぁ~。私もぉ支援~頑張るよぉ~。回復はぁ~任せてぇねぇ~」

「なんかゴメンねー…ボクたちのために……」

「気にすることあらへんて。こうして知り合ったんや、協力出来ることならさせてもらうて」

「……わたし、も………協力、する…よ………」

「ありがとうございます、それじゃ遠慮なく。よろしくお願いします」

「はい、じゃあ決まりみたいだしあとは私が引き継ぐわね、ジェリル」

「そうね、仲間も加えてもらえるんだからお願いするわ」

「んじゃ早速俺らの国に招待するぜ。お嬢、戻りは急ぎじゃなくてもいいんだから酷使すんのはヤメとけよ。嫌われちまうぜ?精霊達によ」

「しないわよっ!それにちゃんと謝ったし!」

「へいへい、そーゆーことにしときますかぁ」

 ……凄く納得いかない纏まり方した…。
 なんかもう始まる前からやる気削がれた感が…アップダウン激しすぎて。
 とは言っても何とか力になってあげたいってのは本心なので、付いていきますけどね。
 次はエルフの国か…どんな感じなんだろ?
 やっぱり木の上とかに家があったりするんだろうか。
 あと、仲間になってくれるっていう子達も気になるところではある。
 とにかく行くと決めたからにはしっかりやることやろう。

 そうそう、こんだけワイワイ話してた中、ラナの膝の上でイアみたいに余計な事もせず、狼だけど借りてきた猫のように黙って大人しくしていたラン、お前には後でご褒美をあげよう、うん。



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