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第四章 皇都グラウデリアへ
#21 強引な猿娘
しおりを挟むモリーが更新作業に行ってる間、ここのギルドに用事があるはずのリズに、それを済ませないのか聞いてみた。
「そういやリズ、クリス女史に頼まれてた仕事済まさなくていいのか?」
「あー、うん、別に明日でもいいかなーって。多分提出するだけじゃなくて報告もしなきゃだと思うし、そうすると時間掛かっちゃうから」
そっか、ただ提出するだけじゃなくて説明求められたりするかもしれないのか。
特に今回は防衛戦の報告書もあるって言ってたし、そうなる確率は高いよな。
けど、明日は明日でまたブリュナ様と約束しちゃったしな…どうなるか分からないから先に終わらせた方がいいような気もする。
「それなんだけどさ、明日昼前くらいにまたブリュナ様と約束しちゃったんだよね…ここで待っててくれって言われて」
「ありゃ、そうなの?だったら今の内に片付けちゃった方がいいかなー?」
「うん、その方がいいと思う」
「ん、分かったー。じゃあちょっと提出してくるねー。時間掛かるかもだけど、待っててくれる?」
「あぁ、もちろん。こっちは気にしないで行っといで」
リズは別の受付嬢に話を通してそのままカウンター内に入れてもらい、奥の方へ消えて行った。
本部のお偉いさんに会うんだろうけど、リズは特に緊張とかしてない感じだった…ちょっと羨ましい。
俺なら間違い無く緊張しちまうからな…。
その後モリーが更新作業から戻って来てまたグダグダ言ってたけど、これ以上はホント受付の邪魔になるから無理矢理退散した。
窓口離れる時、「うっきー!覚えておきなさいよぉっ!」とか、どこぞの悪党の捨て台詞みたいなのを俺達に向かって叫んでたけど。
ちなみに報酬は依頼主─ゲシュト様から直接受け取るようになってたみたい。
指名なうえ口頭でお願いされてたもんだから、依頼書よく読んでなかった…。
あと道中で倒してきた魔物の解体とか魔石の買い取りは、ガルムドゲルンに戻ってからすることにした…何となくモリーとのやり取りだけでごちそうさまって感じになっちゃったので。
受付窓口を離れた後、リズを待たなきゃいけないから待合所にでも座って待とうかと思ったら、アーネが、
「どうせ待つなら酒場の方行かねぇか?」
って言い出した。
別に酒場でもいいけど、アーネのそれは飲む気満々ってことじゃないのか?
「別にいいけど、もしかして飲むつもりか?」
「ん?ダメか?」
「いや、まぁダメじゃないけど…」
「なら決まりだなっ。酒場行こうぜ!」
アーネの提案にこれといって反対意見も無かったから酒場行きが決定、皆揃って酒場へ移動した。
席に着いて早々アーネが全員分の酒を注文して唐突に酒盛りが始まった…名目は当然皇都初来訪。
リズが戻ってくるまで皇都で何をするか、どこに行きたいかあれこれ予定を立てたりして、結局ワイワイ騒いでしまった。
まんまとアーネにノセられた感じだけど、皆が楽しそうだからいいや、俺も楽しいしな。
リズが戻って来てからも暫く盛り上がってたら、勤務が終わったんであろうモリーが乱入してきて、誰の断りもなく一緒に飲み始めた…まぁ、別に構わないんだけどね。
「アンタたち、いつもこんななの?」
「あー、ナオトとパーティー組んでからはこんな感じだなっ」
「そうね、ナオトさんが来てからよね、こうして飲めるようになったのは」
「こうやってぇ~皇都までぇ来れちゃったぁしねぇ~、ふふっ」
「ふーん…。で、そっちのアンタも漂流者なんでしょ?」
お、珍しく弘史に興味がある獣人?ってことになるのかな?でもなぁ…ラナとは反り合わないんだよなぁ、なんせ犬猿だし。
「あぁ、そーだぜっ。なぁモリーちゃん、ガルムドゲルン来ないか?俺の専属受付嬢になってくんない?今丁度居ないんだよねぇ…どっかの誰かさんに取られちゃって」
「どっかの誰かさんて…まぁ、結果的に取っちゃったのは事実だけど」
「違うよっ、ワタシがヒロシを見限ったのよっ!あんな扱いするんだからっ」
「お子ちゃまなのが悪いんだよっ」
「またそーやって言うっ!」
弘史とリズも反り合わないなぁ…けどまぁリズはもう俺の専属だし、我慢して弘史の相手することも無いだろうからな、これからは。
「んー…ヒロシって言ったっけ?ちょっとこっち来てっ」
「おっ、なになに?」
ん?弘史を連れてくケモミミっ娘がいた?腕掴んで引っ張っていったぞ…。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「ヒロシ、アンタ確かハイゴールドランクよねっ?」
「ん?あぁ、そーだぜ。それが?」
「なら大丈夫ね。アンタのパーティーにアタシを入れなさいっ」
「へ?どーゆーこと?だってモリーちゃん、受付嬢…」
「になる前ちょっと冒険者もやってたのよ。ランクはハイシルバーだけどね。だからアタシをパーティーに入れなさいって言ってるのよっ」
「えっと…マジ?」
「冗談でこんなこと言わないわよっ」
「あ、もしかして…ラナちゃんが冒険者になっちゃったから?」
「そうよっ!あのナオトってやつのせいで勝負出来なくなっちゃったんだからっ」
「そこまで勝負にこだわってんのか…。んー、まぁ、俺としては入れてやってもいいんだけど、一つだけ条件がある」
「…なによっ」
「俺がしたい時にモフモフさせて欲しい」
「モフモフって…なに、アンタこんなのが好きなの?アタシ猿人族だからラナ達みたいにモフモフしてないけど」
「いや、十分だって!どんなのでもケモミミとか尻尾とか大好物なんだよっ!それ許してくれるんなら是非俺のパーティーに来て欲しいっ!」
「……仕方が無いわね…。それでラナと勝負出来るんならいいわよっ」
「マジっ!?よっしゃーっ!!やっべ、チョー嬉しいっ!!」
「じゃあそれでよろしく頼むわよっ。アタシが受付嬢の内にパーティー更新しちゃうから、他のメンバーのギルドカード今持ってきてちょうだいっ」
「あぁ!分かったっ!」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
何やら弘史が急いで戻って来て知美ちゃんとフラムからギルドカードをひったくって、またモリーの所へ戻っていった…二人ともびっくりした顔してる。
「二人とも、何をそんなに驚いてるんだ?」
「え、えっと……」
「…ヒロシに付いてくる獣人がいたことに、か。この場合は」
「「「「えっ?」」」「はぁ?」」
「ちょっと、それってもしかしなくてもモリーってことよね?」
「はは、はい…。パ、パーティー申請すす、するって、わ、私たちのギギ、ギルドカード持ってっちゃいまし、た……」
マジか…いくら何でもとは思ってたけど、そこまでラナとの勝負に拘ってるのか…。
ヒロシとパーティー組めるランクの冒険者ってところにも驚きだけど。
ラナと全く同じ道なぞってるのか?そこまでいくとちょっとコワいわ…ラナとは離れてるのにどうやって知ったのかと。
「ほんま無茶苦茶やなぁ、モリーは。ラナが絡むと突拍子もないことばっかりしよる」
「…まぁ、でも、考えようによっちゃこれで弘史も落ち着くんじゃないか?」
「だ、だといいんです、けど……」
「ただ、パーティーが強化されたのは素直に喜ばしいんだがな。あとは…上手くやっていければ問題は無い」
「そこはどうだろうなぁ…。昔っからラナが側にいるとあんな感じだし、結構苦労すると思うぜ?」
俺からも見た感じそう思うんだけど、でもそこは弘史が意外と上手くやりそうだ、とも思ったり。
あんなんでも一応漂流者だし、何よりケモミミへの執着心があるからなぁ。
ケモミミなら何でもいいっぽいしな、モリーのってシータ達みたいに如何にもケモミミですって感じじゃないし…サルだから。
「とりあえず、仲間が増えたってのは良い事だと思うし、二人が戻って来たら歓迎してやるか。何だかんだまたラナに突っ掛かってくるだろうけど」
「わたしは別に気にしてないから大丈夫ですよ。モリーが一方的にわたしの事敵視してるだけですから」
「そうなのか。だが、ラナには悪いがそこを使わせてもらえば上手く制御出来そうな気がする。構わないか?」
「フラムや知美ちゃんが楽になるなら、構わないよ。わたしに遠慮なんて必要無いから」
「あ、ありがとうございます、ラナさん」
フラムなら確かに上手く誘導出来そうな気がする。
後は弘史の暴走だけど、そっちは知美ちゃん任せかな、是非頑張ってもらいたい。
そんな方針でやっていこうと話がまとまった辺りでニコニコした弘史と、不敵な笑みを浮かべたモリーが戻って来てそのまま歓迎会に突入。
相変わらずモリーはラナに食って掛かってたけど、ラナはといえば暖簾に腕押し柳に風、ホントに気にしてないみたいで傍から見るとモリーの完全な独り相撲になってた…。
そんなモリーなんだけど、よく見るとなんだか活き活きしてるっていうか、ラナに向かっていける事が嬉しいみたいに見えるんだけど、それは気のせいなんだろうか…?
これさ、こんなんだけど回り回ってラナの事好きなんじゃないかとさえ思えてきた。
まぁ、ほとんど相手にされてないっていう残念な結果なんですが。
結局皇都に着いたその日はこの飲み会で終わってしまった。
宿も取ってないっていうのに、結構な時間まで飲み食いして、この人数だったけど何とか飛び込みで宿も見つかり、皇都観光はまた明日以降ってことに。
宿の部屋割はちょっと揉めたけど。
グループ的に7人と4人(何故かモリーも来た。住んでる所あるにも関わらず)で、7人纏めて泊まれるような部屋は流石に飛び込みじゃ取れなかった…そりゃそうだろうな。
はじめ6人部屋に無理矢理7人でって無茶苦茶言い出した娘がいたんだけど、当然そんな無理は通らず最終的には6人部屋に俺のメンバー達が、4人部屋に弘史のパーティーメンバーが、そして俺と弘史が二人部屋ということで落ち着いた。
何が悲しくて弘史と一緒の部屋にならなきゃいけないんだ、と一瞬凹んだけど、部屋が取れただけマシだってことでそこは諦めて許容したよ。
弘史はパーティーメンバーと一緒の部屋で、ってつもりだったみたいだけど、何故か追い出されて俺より凹んでましたが。
ま、コイツとはいろいろあったし、割と気に入ってたりもするからいいんだけどな、気兼ねなく言ったり言われたり、案外悪くないって思い始めてるとこもあるし。
たまには野郎だけで、ってのもアリってことで。
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