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第四章 皇都グラウデリアへ
#08 ようこそガルムドゲルン公爵家へ
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フィルさんとショー、クリス女史に見送られて、俺達はガルムドゲルン公爵家のかなり大きめな門前まで辿り着いた…のはいいんだけど……
「「「………」」」
……俺と弘史、知美ちゃんは唖然としています、少し見上げながら。
いや、この街に初めて来た時、遠くの方にデカい西洋風の城みたいなのがあるなぁ…なんて漠然と思ってたけど、そりゃそうですよね、領主が住んでるとこ以外あり得ないですよね。
え、今からここに入るの?絶対場違いでしょ、俺達。
「何呆けたツラ晒してんだよ、漂流者組は」
「え、いや、ここ…で、間違い無い…んだよ…な…?」
「そうや。間違い無くここがガルムドゲルン公爵家やで?」
「…家が城とか、やっぱ異世界なんだな……」
「も、元いたせせ、世界でも、ちゅ中世ヨーロッパ辺りではそ、そうでしたよ…ね?」
「いや、そりゃそうだろうけどよ…実際住んでるの見るのはやっぱ違ぇだろ…」
弘史の言う事も分かるわ…こういうとこに実際住んでるとか、物語の中でくらいしか知らないって…。
と、呆然としてたところに城の方から走って来る娘が一人。
あれは…ひぃ、か?
「ナーくんっ!!」
門番がひぃに気付いて、ひぃが門へ辿り着く前に開けてくれたおかげで、門を素通りして俺にほぼタックルに近い感じで抱きついて来た。
さっきのリズと同じで、ちっちゃいから余裕で受け止められたけど。
「おっ!ひぃ、元気そうだな。良かったっ」
そのまま抱き上げて、これもまたさっきのリズと同じく頬を擦り合わせて再会を喜んだ。
「わたしもティシャも元気だよーっ!ナーくんのおかげでっ!」
カティちゃんに聞いてた通り、本当に元気そうだ。
あの時…二人を救い出して別れた後から少しだけ心配してたけど、そんな必要は無かったっぽい。
ホント良かった…この笑顔が失われなくて。
「お姉ちゃん達も来てくれてありがとうっ!」
「元気そうでよかったぜっ、ヒナリィ」
「うん、ほんまに。また会えて嬉しいわっ」
「うんうん~、ヒナちゃんのぉ元気そうなぁ姿ぁ見たらぁ~、お姉ちゃんもぉ安心しちゃったよぉ~。ふふっ」
姫達も少しは気になってたんだろう、ひぃの元気そうな顔を見てホッとした感じになってた。
ひぃとの再会を喜んでいると、城の方からまた小さい娘が二人やってくるのが見えた。
片方はティシャだってのは分かったけど、もう一人は誰だろ?
「あっ、ティシャー!フラウー!遅いよぉーっ!」
俺に抱っこされてたひぃも二人がやって来るのに気が付いたみたいで、手を振りながら二人を呼んでた。
フラウっていうと確か…ブリュナ様の妹だったよな?
二人はひぃと違って走ったりはせずお嬢様っぽく歩いて来た。
まぁ、気持ち足早だったけど。
「ヒナリィったら、そんな走っていくなんておぎょうぎが悪いでしょう」
「まったくよ、ヒナリィ。もう少しお上品になさいな」
二人はヒナリィに向かって注意しつつ俺達の前まで来たあと、可愛らしいカーテシーで挨拶してきた。
「ナオトお兄さま、シータお姉さま、マールお姉さま、アーネお姉さま、またお会いできてうれしいです」
「みなさま、ごきげんよう。ようこそガルムドゲルン公爵家へ。かんげいいたしますわ」
「ティシャも元気そうで良かったよ」
「はい、あの時は本当にありがとうございました」
「お話は中でゆっくりと。いつまでもこんな所では失礼でしてよ。さぁみなさま、どうぞ我が家へ」
「えっと…本当に俺達なんかが中に入っても…?」
「もちろんですわ。お父さまがおさそいしたのですから。さぁ、行きましょう」
そう言って俺達を先導していくようにフラウは城に向かって歩き出した。
それに続いて俺達全員付いていったんだけど…歩く度に近付いてくる城に圧倒された。
「…やっぱりどう考えても場違いだよな…俺達」
「冒険者風情が来るような所じゃねぇってのは確かだよなぁ…」
「で、でもほほ、本物のお、お城なんて、か、感動です、よ…」
「ナオ達のいた世界にも城くらいあったんやろ?」
「うーん…まぁ、あることはあるんだけど…俺達がいた国の城はちょっと違うんだよなぁ…。それに歴史的遺産だったから、住んでる人は居なかったんだよ」
「ふーん、そうなんだー。だからここに来てそんな感じになってるってわけねー」
日本の城は実際に見たことあったけど、西洋の城は写真とかテレビでしか見たことなかったからな…日本出たことなかったし、俺。
「歴史的遺産ということは、ヒロシ達がいた時代には城自体不要だったということか?」
「俺らがいた時代は一応平和だったからな…こっちみたいに魔物がいるわけでもねぇし、俺達の国は戦争もしてなかったしな」
「マジか…そりゃ信じられねぇくらい平和じゃねーか…」
「あ、そっかー、ナーくんってひょーりゅーしゃなんだよねー」
「そうそう、だからこういうお城みたいな家が珍しくてね」
ひぃが思い出したように俺の事を漂流者だって言ってきた。
確か俺、名乗った時に漂流者って言ったよな…?忘れてた?それとも漂流者っぽくないと思われてた?
「ヒナリィ、それよりいいかげんにナオトお兄さまから降りなさいってば。今日はおきゃくさまなんだから」
「そんなこと言ってー、ティシャだってしてもらいたいくせにー」
「わっ、わたくしは、そ、そんな…」
門前でひぃを抱っこしたまま歩いて来たから特に気にはしてなかったけど、そうだよな、あの時はティシャもずっと抱っこしてたもんな。
「ティシャ、ほら、おいで」
「え、あ…。いえ、わたくしは…」
「遠慮なんかしなくていいよ、ほら」
ひぃを片腕に抱き直して屈んで、もう片方の腕を広げてみせた。
一瞬戸惑いを見せたけど、やっぱりしてほしかったんだろう、遠慮しがちに俺の腕の届く範囲に入ってきた。
サッと片手ですくい上げるようにティシャを腕の中に収めて立ち上がったら…ティシャも俺の頭にぎゅって抱きついて来た。
「あ、ありがとうございます…ナオトお兄さま」
「どういたしまして」
「あはっ、あの時とおんなじだねーっ」
「おーおー、随分懐かれてんのなぁ、尚斗。やっぱロ「違うって言ってるだろっ」……あーハイハイ」
「な、尚斗さんってここ、子供の扱いに、な、慣れてるんです、ね」
「慣れてるっていうか、純粋に子供が好きなんだよ。可愛いし、ね」
でも向こうの世界じゃこんなことしてたら弘史の言う通り、犯罪者扱いされる可能性が高いんだよな…ホントただ子供が好きなだけなんだけど。
こうして抱っこして喜んでくれるとか、それだけで嬉しいんだけどなぁ。
「あー、うん、さっきワタシを可愛がってくれたのがよぉーく分かったよー。にひっ」
「だからアタイは言っただろーがっ、リズが一番そーゆーことやっちゃダメなんだってよっ」
「うん、アーネが言ったこと、分かったわ…。でも、ナオトさんって本当嬉しそうに子供のこと可愛がるんですね…」
「いや、デレデレし過ぎだっての。何だよその締りのねぇ顔」
「弘史…お前だってな、ケモミミっ娘見てる時はこういう顔してるんだって分かってるのか?そうだよな?知美ちゃん、フラム」
「ナオトの言う通りだな」
「そ、そうです、ね」
「あー、アタイらに声掛けてきた時もそーだったなぁ」
「「せやったなぁ」「うんうん~」「そうでしたね」」
「げ、マジか…」
まぁ、可愛いもの見てデレデレするのって自覚するの難しいとは思うんだけどね。
今も自分ではそんなにデレデレしてるつもり全く無いけど、周りからはそう見えてるみたいだし。
二人を抱っこしてご満悦になりながら城の玄関まで辿り着くと、見たことのある執事のおじさんがドアを開けてくれた。
「皆様、ようこそお越しくださいました。どうぞお入りください」
「あ、セバスさん」
「ナオト様、皆様、またお会い出来て光栄です。その節は大変お世話になりました」
「いえ、そんな。お元気そうで何よりですよ」
「怪我のぉ方もぉ~大丈夫そうでぇ安心しましたぁ~」
「はい、マール様のおかげでこうして無事職務を果たす事が出来ております。さあ、どうぞ中へ皆様」
セバスさんも元気そうで良かった。
確かティシャの家…グリュムセリナ侯爵家の執事だったはずだけど、ティシャが来てるから一緒に来てくれたってことかな?
セバスさんに勧められて城内に入ると…ガルムドゲルン公爵家、グリュムセリナ侯爵家、リリエンノルン伯爵家の皆様が勢揃いで出迎えてくれた。
…ここまで美男美女揃いだとホントに場違い感がハンパない…俺だけ……。
「あら~、あらあらあら~。ヒナったらもう~、何をやっているのかしら~」
「ティシャ、貴女もですよ。お客様にそのような事を…」
「あ、いえ、これは俺がしたくてしてる事なので…すみません。今降ろし「やーっ!ダメっ!」…えっと……」
多分二人の母親だろう方達が抱っこされてるひぃとティシャを見て少し驚いた顔をしてた。
まさか自分の娘が抱っこされてるとは思いもしなかったんだろうな…って、そりゃ当然か、親からしたら俺は見ず知らずの人だし。
だからすぐ降ろそうとしたら、ひぃが駄々をこねて、何気にティシャも俺の頭にしがみつけてた腕にギュッと力を入れてきて拒んでる感じみたいだったから、どうしたらいいか分からなくなった…。
「ハッハッハッ。随分と懐いておるではないか、二人共。構わん構わん、さぁそのまま入って来たまえ。もうそろそろ昼時だ、皆で食卓を囲みながら話すとしよう。挨拶もそこでいいだろう」
ゲシュト様の一声でこのまま全員食堂へ向かうことに…さすがは領主様、有無を言わさずしかも豪快、細かい事は気にしないっぽい。
ただ、二人の両親と思われる人達は、俺にちょっと申し訳なさそうな顔を見せてたんだけど、こっちの方が申し訳ないことしてるよな…他所様の娘を勝手に抱き上げてるわけですし…すみません。
それでも二人はこれがいいみたいで降りようとは全然しなかった。
こんなに懐かれるとは思いもしなかったけど、嬉しいことに変わりはないのです、二人共可愛いからね。
そうして歩き始めながら、城内を眺めてみたんだけど…無駄に広いわぁ、どこもかしこも。
今食堂に向かって歩いてる廊下とか、全員横一列に歩いても大丈夫なんじゃないか、これ。
あと天井も高いし。
ただ壁とかはもっと豪奢な感じかと思ってたけど、意外と質素というか壁の素材そのままって感じだった。
まぁそれでもしっかり彫り物がされてて十分豪華だとは思いますが。
他の皆もキョロキョロ辺りを見回したりして、上京したての田舎者丸出しって感じだった…特に弘史と知美ちゃん、あと俺もだけどね。
結構な人数でゾロゾロ歩いて食堂に着いて中に入ったら…食堂じゃなかった。
どう見てもホールですよね、ここ。
ど真ん中に今居る全員が座れる席と長テーブルが置いてあるだけ。
え、普段からここで食事してるんですか?
広いにもほどがあるんじゃないですかね…。
とりあえず全員席を勧められたから適当に座った。
流石に二人を抱っこしながらはちょっと気が引けたから一旦降ろして家族が居る方の席に大人しく座ってもらったよ…降ろす時かなり残念そうな顔してたけど。
さて、これからご挨拶ですか…やっぱりこう改まると緊張するなぁ。
何事も無く進んでくれればいいけど。
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