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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン

#36 リオのお食事

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―・―・―・―・―・―・―・―





 俺と皆は周りの目も気にせず一目散にメルさんの宿に帰ってきた…宵の口でもあり辺りではまだそれなりの人が出歩いてたり、店先に臨時の席を出して酒盛りをして騒いでた。
 まぁ、日は落ちてるし昼間ほど目立ちはしなかったんだろうな、と思っておこう。

 宿に着くなり全員で姫達の部屋に同行させられて、部屋に入ったら入ったですぐベッドに座らされた…いったいホントに何が始まるんだ…ちょっと怖くなってきたぞ……。


「ふぅ…よしっ。ここなら問題ねぇだろ」

「えっと…どういうこと?」

「んー、まぁ、あれよ?人前じゃ流石にちょっとねーってこと」

「……?魔力の補充が?なんで?」

「それは…今から分かるんやないかなぁ……」

「…ナオトさんがどんな反応するのか凄く気になりますけどね……」

「リーちゃん~お待たせぇ~。ここならぁいいよぉ~」

「………(コクっ……。……マ、スター……よろし、く………」

 そう言ってリオがレザーアーマーをカチャカチャと外した後、ベッドの端に腰掛けてた俺の膝の上に座った…翼が俺に当たって邪魔にならないよう目一杯広げて。

 え、なに、これ必要なことなの?


「………えーっと……なに?どうすればいいの?」

 俺に乗ったリオが片手ずつで俺の手を掴んで、それを徐ろに自分の胸に当てた。


 ふにょん


 …一瞬思考停止した後、その感覚に焦ってすぐさま離そうとしたら、リオががっちり押さえ付けててピクリともしなかった…なんでそんなに力強いのっ!?

「ちょっ、リオ!何やって……」

「何かねー、そこから魔力を補充してもらうみたいよ?ほらっ、みんなで見ててあげるからやっちゃってー、にししっ」

「はぁ!?ちょっ、リオ、ホントにっ!?」

「………(コクっ……。………魔石、に……一番…近い……とこ、ろ……だ、から………」

「やっぱりぃ~そうだったんだぁねぇ~」

「何となくそうやろなぁとは思っとったけど…」

「ほらほらナオトっ、リオちゃんお腹空かせて待ってるよーっ」

「…何でそんなに嬉しそうなんだよっ、リズは…」

「そっ、そうよっ!あんなの、ナオトさんが触ったら…触ったらぁ……ふぐぅ………」

「ちょっとラナっ、何で泣くのさっ!リオちゃんのお食事ってだけでしょ!何を想像してるんだか、まったく…」

 周りが何やら盛り上がってる間も、俺の両手の平にはもう何十年と触れていなかった柔らかくて温かい感触が伝わってきているんですが…。
 まぁ、それ以外にも太腿に乗っかっている桃も柔らかくて温かいものを当然伝えてきてるわけですけれどもっ。

 いや、しかし…リオの胸は転移する時の背中越しの感触でしか知らなかったけど、こうして手の平で触れてみると、ホントに凄いわ…見た目通り手に収まりきらない。
 今はリオが自分で俺の手を胸に当てて押さえ付けてるけど、広げた手の平が埋まってるし…こんなん元の世界でも知らないわ。
 気抜くと手の平と指が勝手に動き出しそうだから早くこの状況を何とかしないと…辛うじて皆が居てくれるから俺の分身も沈黙を保ってるけど、このままこの状態が続くと高確率で目覚めてしまうだろうと俺の理性がアラートを鳴らしてる…。

「リ、リオ、この状態で、魔力注げばいいのか…?」

「………(コクっ……。……マスター、の……頂戴………」

「わ、分かった…それじゃ、いくぞ…?」

「………あ……。……少し、ずつ……で…………」

「え、あぁ、ゆっくり注げばいいのね」

「………(コクっ…………」

「了解…。おかしな感じとかしたらすぐ言ってくれよ」

 はぁぁ…それじゃやりますか……指に力は込めないようにして手の平に集中すればいいんだけど、結構難しくないか?これ…。
 手の平に集中したら感触が…あ、いや、俺から魔力流すことだけに集中すればいいのか、よし、それじゃ心を無にして…。

「あ、ナオトの手が光ってきた。ふーん、ああやって魔力注ぐんだー」

「ドラゴンのリオに注いでた時もあんな感じやったな」

「そうそう。んでドラゴンのまま泣いちまってたよなぁ…ってリオっ!?」

「あっ…リオっ、どうしたのっ!?どこか痛いの…っ!?」

 俺の膝の上に座ってるから、俺からはリオの顔は見えないんだけど、どうやらドラゴンの時と同じように泣いているんじゃないだろうか。
 別に痛いとかそういうわけではないと思うけど、もしかして注ぐ勢いあり過ぎたかな?

「リオ、大丈夫?もっとゆっくり…か?」

「……(フルフルっ………。………これ、で……い、い…………」

「そ、そう…。じゃあこのまま続ける…な?」

「………(コクっ…。……お願、い…………」

 とりあえず、このままで良いらしいからこんな感じで続けることに。
 再び無心に…。

「ふふっ、大丈夫ぅだよぉねぇ~。リーちゃんはぁ~嬉しいんだよぉねぇ~」

「あ、えっ…そ、そうなの…?」

「うん、何かそんな感じするねー。どうなの?リオちゃん?」

「……(コクっ………。………温かく、て……優し、くて………嬉、しく…なる、の……………」


 そう言ったリオは、自分の胸に押し当てている俺の手に、少しだけ力を込めた。


「「「「「っ!?」」」」」



 無心ってそう簡単になれるわけないよね、分かってましたけど。
 眼を瞑ると逆に手の平の感触に集中しそうだったから開けたままだったんだけど、リオの頭と翼の隙間から見えた皆が一瞬驚いた顔をした後、一斉に喜びだした。


「…み、見た…?今の……」

「あぁ…ハッキリ見たぜ…っ」

「ウチもや…」

「リーちゃん…初めてぇ…笑ってくれたぁ……」

「すっごく素敵な笑顔よっ!リオちゃんっ!」

 え、リオが…笑った…だと……。
 今までほぼ無表情だったあのリオが…?
 ちょっとそんなレアな事象を見逃すとかあり得なくないかっ!?
 俺からは見えないんですけどっ!あーっ!もったいないぃぃ!!って思いっ切り心を乱したら手に力が入ってしまったらしい…。


 むにゅ


「あっ…ふぁぁっ………」

「っ!?ごっ、ごめんリオっ!」

 と、謝りつつも手は未だにリオが押さえ付けてるから、離そうとしても離すことが出来ないんですっ。

「ナ、ナオトさんっ!何してるんですかっ!?」

「いやっ!わざとじゃないからっ!っていうか今のはみんなのせいだからっ!」

「なしてウチらのせいなん?」

「リオの笑顔なんて、俺も見たいに決まってるだろっ!ズルいぞ、みんなっ!」

「ふっふーん、羨ましい?いやぁーもうホントキレイな笑顔だったよーっ、にししっ」

 この幼女(偽)は…容赦ないな俺に対してっ。
 そんなの羨ましいに決まってるだろーがっ!

「あふぁ……マ…マス、ター………んンッ…!……」

 リズのせいで益々力を入れてしまったらしく、またリオから艶めかしい声が漏れてしまった…。

「あ、おいナオトっ!ちゃんと集中しろよっ!」

「無茶言うなよ…っ」

「これ、ウチらがいなかったら間違いなくそーゆー事になっとるやろなぁ…」

「や、やっぱり…そう、だよね……」

「まーでも別に普通でしょ?何か問題あるの?」


「「「「………」」」」


「さぁーみんな、今なに想像したか言ってごらんー?ねっ?」


「「「「!?!?」」」」


 鬼かこの幼女(偽)は…俺にまで想像させてどうするんだよっこの状況でっ!
 止めろよっ今ので覚醒しそうになったわっ!

「なっ、何も想像なんてしてねーよっ!!」

「ふぇぇ……」

「なななんてこと聞くのよっリズっ!!」

「そっ、そうやっ!そんなんするわけないやろっ!!」

「あれぇー?なんでー?シータちゃんから振ってきてラナも同意してたのにー。嘘はいけないなぁーウ・ソ・はっ。にししっ」

 お願いしますもう止めてくださいリズさん。
 皆も頬染めるの止めてもらえませんかねっ!
 ある意味拷問なんですけどっ!

 と、耐えながら魔力を注いでいたら、ドラゴンのリオに注いだ時のように靄が漏れ出してきたのが見えた…あ、これで終わりだっ、さあリオ早く俺の手を離してくれっ!

「リオっ、もうお腹いっぱいだよなっ!早く俺の手を…」

「………(フルフルっ……。………もう、ちょっと……だ、け…………」

「なんでっ!?」

「………温、かくて……気持ち、い…い……から…………」

「ごめんちょっとマジ勘弁してくださいっ!」

 無理っ、これ以上はホント…いくら皆がいるからって、俺のこの水に流せる紙防御の理性がっ、理性がぁっ!

「ナオトが焦ってるとこ見るの楽しいーっ、にひっ」

「いいから誰かリオを止めてくれって!」

「リーちゃん~、ナオちゃんがぁ困ってるからぁ~お終いにぃしようねぇ~」

「……………(コクっ………。………分、かっ……た…………」

 あーっ、マールお姉様ありがとうございますっ!
 頼れるお姉ちゃんの一言でリオが俺の手の拘束を緩めた瞬間、一気にその胸から引き離した。
 両手が使えるようになったから、リオの腰を掴んで俺の膝の上からも退かせた。

 …決して名残惜しいとか思ってない、思ってないからなっ!

「……これ、魔力補充する度こうしなきゃダメなの、か…?」

「んー、まぁそうなるよねぇー」

「ナオトさんっ、リオと二人きりでやるのは駄目ですからねっ!」

「いやっ、そうじゃなくて!補充するだけなら魔石に近くなくても良くないかっ!?」

「そーかもしんねーけど、本人の希望だしなぁ」

「そこんとこどうなん?リオ」

「…………他の…とこ、ろ…は……上、手く…食べ、られな…い………の……………」

「え、でもドラゴンの時は鱗に触れてやったぞ…?」

「………あの姿、なら……どこ、から…でも………食べら、れ…る……よ…………」

 あーそうなのか…。
 んー…食事の度にドラゴンへ変化って…まぁ、手間だよなぁ……。
 これは俺が耐えるしかないのかぁ…全く耐えられる自信がありません、どうしよう…。

 次までに何かいい方法を皆にも考えてもらうとして、とりあえず今回は何とか終わったってことで良しとしよう、うん。

「ちょっと次の食事までに何かいい方法ないか、みんな考えてくれる…?」

「あ?別に今のでいいじゃねーか」

「いやだから俺が持たないんだって…精神的に……」

「せやかてこれが一番いい方法なんやろ…?」

「うん、ナオト…耐えてっ」

「マジかぁ…やっぱりそれしかない…?」

「………マスター、の……好き、なよう…に………して、いい……よ…………」

「好きなようにって…そんなこと言われたらもっと耐えられなくなるって」

 間違い無く揉みしだいてしまうのは確定的に明らかです。
 俺のこの手が黙っていられる訳が無いっ。

「まぁ、ワタシ達がいるんだから大丈夫でしょ。とりあえずお疲れさまっ!」

「……マス、ター……ご馳、走…さま…………」
 
「あ、うん。いや、こっちこそご馳走さまなんだけど…」

 何となく手の平にまだ感触が残ってるような…。
 自分の手を見て指を動かしてみたら、スゴくイヤらしい手付きになってた…これ、自分でもひくわ…。

「ナオトさん…手付きがイヤらしいんですけど」

「え、あっ!いやっ、これは、違くて…っ」

「やっぱり、大きい方が、いいんです…ね……ふぐぅ………」

「いやっ、大きさとか関係ないからっ!あーもー!感触!感触がよかったのっ!」

「なんや、ハッキリ言うたなぁ…ナオトはん」

「まぁでもあれを耐えるってとこがナオトだよねー、そこがいいんだけどっ。にひっ」

「他の男ならなぁ…特に漂流者は……ってな」

「だからぁ~、みんなぁナオちゃんがぁ~いいんだよねぇ~?」

「………マスター、は…上手……なの…………」

「何がっ!?」

 無表情なんだけど頬だけ染めるって、多分これもレアなんじゃないかと思うけど、そんなレアを引くつもりは毛頭ありませんでしたっ。
 上手って触り方のことじゃないよなっ!?魔力の補充の仕方だよなっ、なっ!?

「……………全、部………………」

「全部ってなにっ!?」

「リオ、そんなに良かったんかよ…」

「……(コクコクっ………」

「あー、これはもう第二回メンバー会議開催決定かなぁー。ねぇ、ここ6人部屋とかないの?」

「それは…流石にちょっとメルはんに迷惑掛かるわ……」

「だよねー。まぁしょーがないかぁ」

 メンバー会議…しかも第二回て、さっきのギルド酒場で話してた時には既にメンバーって確定させてたのかよ…まぁ、結果的にそうなってたんですけど。

「さて、と。リオの飯は終わったけどアタイらすぐ酒場出て来ちまったからなぁ…ちと飲み足りねぇんだけど」

「そうだねぇ~、ゆっくりぃ~食事がぁしたいかなぁ~」

「ほな、ここの食堂で改めて飲み直そかっ」

「いいねぇー、賛成ーっ」

「リオはもうお腹いっぱいだと思うけど…付き合ってくれるかな?いい?」

「………(コクっ……。………お酒、は……別腹…………」

 お酒が別腹って…そこは甘いものじゃないのか?まぁ、リオはお酒の味知らなかったからなぁ…。

「うっし!んじゃ行こうぜっ!」


「「「「おーっ!」」」「はぁ~いっ」「………ぉー…………」」


 皆元気ね…俺はかなり耐久減ったよ…精神の。
 こんなんでこれから先、ホントに上手くやっていけるんだろうか、俺……。


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