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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン

#25 ガルムドゲルン防衛戦・中盤

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 よしっ、アコ、状況はどうなってる?


[冒険者側、目立った損害無し。防衛隊側、大盾部隊に一部決壊の可能性有り]


 了解、冒険者側は今のところ問題なさそうだから防衛隊側メインでいくかっ。
 
 中央で大立ち回りしてる弘史、烈、蘭子の近くに戻って来てた俺は、そこから左翼防衛隊側へ瞬時に移動した。

 来てみると、大盾が前面で敵を抑え、盾と盾の隙間から槍で攻撃、大盾を飛び越えてくるファングウルフやブレードタイガーは、隙間から攻撃している槍の更に後ろで待ち構えていた槍で撃ち落とし、そこで倒しきれなかった魔物を剣部隊で確実にトドメを刺すっていう戦法みたいだった。

 ただ、獣型の魔物を相手にしていた最初の内は上手くハマってたっぽいけど、後続の人型が来てからは大盾で抑えられなくなったらしく、一部押され気味というか決壊しかかってる。

 抜けられるとマズいから、まずはそこの魔物をどうにかしないとっ。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「ぐっ…くそっ……敵の勢いが、強過ぎる…っ」

「うっ、だ、駄目だ…もう、保た…ない……」

「踏ん張れっ!ここで崩れたら…立て直せなくなる…っ」


「「…っ!?」」


「何、だ…?急に、勢いが……」

「ほ、本当だ…弱くなってる……これなら何とか…っ!」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 崩れ掛けそうになってた所まで魔物を刀剣で薙ぎ払いながら到達、辺りの魔物を一掃出来るような技を…っ。

(絶・乱瞑舞 裏技乱舞〔合戦あいおのき〕っ!)

 大盾を巻き込まない位置取りで、刀剣旋風技を出した。
 文字通り刀剣を左右に広げて独楽のように回転しながら魔物を斬り裂いていったんだけど、結構な勢いで回ってるから、ホントにつむじ風っぽいのまで巻き上がってる。
 こんなに回ってたら絶対酔うだろって思ってたけど、そこはやっぱり安定のチート、っていうか闇護膜ダルクヴァルド様様でした、どうやってこんな三半規管の異常を取り除いてるのかさっぱり分かんないけど。

 次々とつむじ風に巻き込まれていく魔物がバタバタと倒されていき、そこでやっと異変に気付いたらしく魔物達の勢いが若干緩くなった。
 
 大盾に張り付いてる獣型は防衛隊の皆で何とかなりそうだから、後続の人型を減らすべきだと思って技を解除し、普通に刀剣での無双に切り替えた。

 ゴブリンやコボルトみたいな小型はともかく、大型のオークやオーガは大盾でも防ぐのは大変だろうから、出来るだけ大型の魔物を優先して倒していこう。

 大型でも大体一刀で斬り捨て、一突きで魔石を砕いて、瞬時に倒していく…魔物の動きがよく見えるし、身体も思い通りに動く。
 異世界に来たってだけで、どうしてこんなことが出来るようになったのかなんて、それもさっぱり分からないけど、出来ちゃうんだからやってやる!って気にもなる。

 どれくらいの時間そうやって無双してたのか、辺りを見るとあらかた大型の魔物は居なくなっていた。
 これだけ倒せば大丈夫じゃないか?と思って防衛隊の方をチラッと見たら、大分持ち直したらしく崩れ掛けてた所も無くなってて一安心ってところか。


[左翼側魔物総数はほぼ防衛隊と同数まで減少。冒険者側で一部問題発生]


 問題って、マズいのか?


[魔物側にマジックユーザー(邪霊魔法イビレイザー)が存在した模様。グールおよびスケルトンが大量発生]


 え、ちょっ、それはマズいだろっ!ただでさえ数で押されてんのに更に増えてるとかっ!


[現在リーオルエレミネアが応戦中]


 リオが?とにかくそっち行くわっ!

 ここはもう防衛隊に任せて今度は右翼の冒険者側に瞬影動フラッシェーダムーンを繋いで慌ててリオの元へ向かったら──


「………〔セイクリッド…シャイン〕…………」


 ──リオが無双してた。

 パァァァって光った瞬間、グールやスケルトンが跡形も無く消えてくんだもん、結構な数が。
 ただ、それでもまだ湧いてくるみたいでキリがない感じになってるっぽい。
 邪霊魔法で召喚してるんだろうけど、それにしたって湧き方がえげつない。
 消えてったすぐ側から同じくらいの数がまた湧いてくるって…無限ループじゃないかそれ。
 いくらリオが強いからって、流石に対処が追っ付かなくなっちまう。

「リオっ、悪いけどもうちょい頑張ってっ!元を潰してくるからっ」

「………(コクコクっ……。………〔セイクリッド…シャイン〕……」

 喋ってる暇もないくらい神聖魔法連発してるリオを横目に、召喚をしてる魔物はどこにいるのかマップで探してみたら…[ゴブリンシャーマン]ってコメントボックスが数十体分固まって表示されてた。
 そんだけいりゃ無限湧きっぽくもなるわなっ!

 一足飛びでそこに向かったら、ゴブリンシャーマンを守る様な感じで人型の魔物─ホブゴブリンやハイコボルト、ハイオークなんかの上位種っぽいやつらが壁を作ってた。
 なんでこんなに統率取れてるのかホントに不思議だ…やっぱり操ってる感じなのか?

 なんて思いつつさっき防衛隊側で大型の魔物を相手にしてた時と同じ様に無双しようかと考えたけど、リオのためにも手早く片付けようってことで魔物の壁ごと纏めて吹き飛ばすことにした。

(刹・迅闘舞 表技迅舞〔嵐翼ストームウィング〕っ!)

 左右の刀剣を翼に見立てて肩上辺りで広げ、両方一気に前方へ勢いよく振り切る。
 当然目の前には何も無かったから空振りなんだけど、振り切った所から暴風が巻き起こり、それが前へ進むにつれどんどん大きくなって竜巻に変わり、壁を作ってた魔物達がその竜巻に巻き込まれて次々と空中高く舞い上がっていく。
 その竜巻が進む勢いは収まらず、魔物の壁に守られていたゴブリンシャーマンをも飲み込んでいき、竜巻の中の魔物達は消滅していった。

 ただ、壁の異変に気が付いた一部のゴブリンシャーマンが難を逃れていたから全滅させることは出来ず、生き残りを追い掛けて殲滅しようと突進しかけたら…


[冒険者側の一部が上位種の集団に強襲されて─]


 …って、それはマズいっ!こっちは全滅とまではいかなかったけど、ある程度減らせたからもう少しだけリオに頑張ってもらうしかないかっ!?


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「おいっ!コイツら上位種だっ!新米は下がれっ!!」

「くっ!この数の上位種は俺達でもキッツいぜっ!」

「ヤバイヤバイヤバイっ!クッソこんな所でやられてたまるかってんだっ!!」


 ドガッ!


「ぐわぁっ!…うぅ……畜、生が……。俺は…ここ、まで……か………」


 ゴアアアァァァアア!


「やめろぉぉっ!クソがっ邪魔すんじゃねぇぇ!!」

「……すまん…後は……頼ん、だ………」

「バッカ野郎ぉっ!諦めてんじゃねぇぇっ!!」


 パァァァッッンン!!




「「……………は?」」


「なんだっ!?おいっ、何でいきなり敵が弾けるんだっ!?」


 パァァァァッン!パァァァッン!!


「…あ……これ、助かっ、た……のか…?……」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


──前線中央、後衛組


 バシュッ!…バシュッ!!バシュッ!!!


「……ねぇ…それ、ズルくない…?こっちは原始的な弓使ってるのに……」

「…こっちも異世界らしく魔法使ってるんですけどね……近代兵器とか全くこの世界にそぐわないじゃないですか…」

「…うふっ……うふふふっ………カノンちゃん……素敵ぃ……溢れてきちゃう…いろいろと……。アハッ!アハハハハッ!!」


「「……ト、トリガーハッピー………」」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


[─いましたが、鎮圧を確認]


 んっ?鎮圧されたって…大丈夫だってこと?え、何で?


[大河知美による援護狙撃です]


 あぁ!黒猫カノンちゃんが変身した狙撃銃かっ。
 やるなぁ知美ちゃん、それなら任せても大丈夫か。
 よし、んじゃこっちに集中するかっ、早くリオを楽にさせてあげたいからなっ!

 壁になってた魔物達もまだ少し残ってたから、そいつらも排除しつつ散り散りになったゴブリンシャーマン達を各個撃破していき、残敵の殲滅をマップ上で確認した後すぐにリオの元に戻った。

 戻った時、残っていたグールやスケルトンが綺麗に消滅していったタイミングだった…リオもどうやら無事らしい。

「リオっ、大丈夫かっ?」

「………(コクっ……。……大丈、夫………少、し…魔力……が、減った……だけ………」

「そっか。うん、ありがとな。魔力は後でいくらでも補充してやるから」

「……ん…。………楽し、み…に……し、てる…………」

「…?楽しみ?魔力の補充が?」

「………(フルフルっ……。……何で、も…ない……こっち、の…話………」

「そ、そう…。じゃあこのまま回復支援よろしく…って、そういやマールは?」

「………あっ、ち……」

 って、リオがマールのいる方を指差したからそっち向いてみたら、冒険者側前線から少し後方に下がったところで負傷者の回復をしてるみたいだった。

「そこそこな人数いるな…リオもマール手伝ってあげてくれる?」

「………(コクっ……。……行って、く…る………」

「よろしくっ」

 リオは俺の指示通りマールの所へ、俺はサラッと辺りを見回してヤバそうな所が無いか確認した。
 さっき上位種に強襲されてた所はもう立て直したみたいで冒険者達が善戦してる、勢いもこっちの方が上っぽい。
 知美ちゃんがこれほど優秀だとは思ってもみなかった…かなり嬉しい誤算だ。

 魔物達も大分駆逐されてきたと思うんだけど、今どんな感じだ?アコ。


[魔物総数:3827体]


 うん、かなり討伐したな…このままの勢いでいければ何とかなりそうだ、なんて油断してる時に限って予想外な事起こるんだよなぁ大抵。
 まぁ、亀も残ってるし終わってないんだから気を抜くのはまだまだ先だよな、うっし、もう一踏ん張りするか!って思った矢先、今の今まで何の動きも見せてなかった亀がいきなり、


「グォォォォォォオオオ!!」


 って戦闘開始した時と同じ様に吼え出した。
 その咆哮が合図だったんだろう…巨大な亀の背中から、大量の何かが空に向かって飛び出してきた……。


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