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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン

#23 開戦直前

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 俺と弘史、知美ちゃん、それに烈華絢蘭の合わせて7人の漂流者達は部隊の先頭に立って魔物を待ち構えていた。
 魔物が来る方角には森があって、魔物自体の姿はまだ目視出来ていないけど、もうすぐそこまで迫っているのは間違いなかった…森の向こう側に物見が確認したっていう土煙が時折巻き上がっているのだけは目に見えているし、ドスンッ、ドスンッっていう音と振動もはっきりと伝わってきてる。
 ただ、その土煙と音と振動だけじゃどんな魔物なのかは全く判別がつかない。
 マップ上でコメントボックスが付いてるから名称だけは分かるんだけど…なぁアコ、これ名称表示されたやつのステータスとか見れない?


[対象:フォートレスタートルのステータスを簡易表示]

【ステータス(簡易)】
《識別》
 個体名:フォートレスタートル
 種族 :四獣種(堅亀族)
 属性 :地
     闇
 位階 :23
 体力 :2516/2534
 魔力 :1368/1379
 状態 :同化・倦怠
《技能》
 固有 :同化幻体
 物理 :堅亀闘術
 魔法 :四獣魔法
 補助 :搭載運搬
     物理耐性強化
     地耐性
     地属性強化


 …何じゃこりゃ。
 亀?あ、いや、それより固有スキルの同化幻体ってやつ…もしかして姿見えないようにしてるんじゃないのか?
 つまり周囲と同化してる…光学迷彩みたいなやつ?だから足音とか振動しか分からなかったってこと?
 まぁでも、ぶっちゃけこの足音と振動で相当デカいヤツだって何となく予想出来るから、適当に魔法打ち込めば見えるようになるんじゃないかな、と思ったり。
 早めに姿見せるようにした方がいいよな…見えないまま踏み潰されるとか洒落にならないし。
 どうしようか…何かそういう幻術系打ち消すような技とか魔法俺考えてたっけな…?えーっと……。


[闇黒魔法・幻滅殺イルゼキルイン(笑):対象に掛かっている肉体的・精神的状態効果のみを全て昏き闇の力により滅殺する]


 ……あー、うん…教えてくれるのはありがたいんだけど、俺の黒歴史を暴かれてくみたいでなんか複雑…。
 それに相変わらず意味分からんし…効果だけ滅殺って…しかも都合良すぎだろ、それ……中二時代の俺、ホントイタいわー。
 と、とりあえず、ありがとうアコ、使ってみるわ…ここから届くと思う?


[範囲外です。有効範囲は半径10メートル圏内]


 意外と狭い…かなり接近しないとダメってことか。
 そうだな…一先ずこういうヤツがいるってことだけだけでもフィルさんに伝えておくか。
 開戦したらまずソイツの姿だけ晒しておくかな…皆ビビって戦意失くしちゃう?でも見えてないと危ないよな、どんな攻撃してくるか分からない方がマズいと思うし。
 まぁ、俺達漂流者が相手することになるだろうし、そこは皆の気合いで何とかしてもらおう。

「弘史、ちょっとギルマスの所に行ってくるわ。伝えておきたい事があるから」

「オッケ、とっとと行って戻ってこいよ」

「了解」

 弘史に一言残し持ち場を離れてフィルさんの所へ。
 フィルさんも先頭で指揮を取るみたいだからそんなに離れたところにはいない、俺達のちょっと後方に陣取ってる。

「フィルさん、ちょっと伝えておきたい事が」

「ふむ、何か分かったことでも?」

「はい、あの足音と振動の元が分かりました」

「それは…本当かな?」

「ええ、フォートレスタートルっていう魔物です」

「フォ、フォートレス、タートル……だと………」

 どうやらフィルさんは知ってるっぽい。
 だったら姿とか分かってるかな?

「まさか…いやっ、そうかっ!魔王の仕業かっ…」

「何か知ってるんですか?」

「直接見たわけではないのだが、その名前の魔物は確か巨大な亀に似た魔物で、相当昔に封印されたとギルドで管理している古い文献に記載があったはず…。それが今こうして現れたということは、誰かがその封印を解いたということなのだろう」

「…それが魔王の仕業だと」

「ああ、それなら辻褄が合う…」

 マジか…いよいよ魔王ってやつの存在が真実味を帯びてきたな…。
 いや、でもマップ上魔王っぽい表示はなかったから、居たとしてもこの戦場には来てないんじゃないか?
 とりあえず勇者の真似事だけは回避出来るはず。
 まぁ、巨大亀の相手は避けられないだろうけど、俺だけで相手をしなくて済むならそれでいいか。

「俺のスキルでは魔王は確認出来なかったので、多分この戦場には居ないと思います。なので、その巨大な亀の相手は俺達漂流者で受け持ちますよ」

「それは助かるが…君達7人だけで大丈夫なのかね?」

「まぁ、何とかなる、というか何とかしますよ。それで、今は姿を隠してるみたいなので戦闘が始まったらすぐそれを解除しようと思ってるんですけど、大丈夫ですかね?いきなり巨大な魔物が目の前に現れて混乱したりしないかちょっと心配で…それで相談に来ました」

「そんなことが可能なのかね?」

「あ、はい、そういう魔法が使えるので…」

「そうか…それでいきなり現れると確かに混乱するかもしれないな…。分かった、全員に伝えておこう」

「すみません、よろしくお願いします…って何かフィルさんにお願いしてばっかりですね、俺…」

「気にすることはないよ、これも私の仕事の内だからね。それにこちらの方が君達漂流者に頼らせてもらってるのだから」

「ありがとうございます。期待に…あ、いや、ガルムドゲルンに住む皆のために頑張りますよ」

「ああ、よろしく頼むよ」


 と、巨大亀のことについてフィルさんと話してる間に魔物の一部が森を抜けてきた。
 ちょっと急ぎ目に先頭の定位置へ戻ってから森の方を注視してみた。
 まだ遠目だから黒点にしか見えなくてどんな魔物か判別付かないけど…アーネだったら見分けられるかな?
 けど、いくらアーネでも今は後方のマジックユーザー隊の近くにいるはずだから、まだ判別は無理か。

「戻ってきたか。敵さんのお出ましみたいだぜ」

「みたいだな。そうそう、皆にも言っとかないと。今は見えてないけどこの足音と振動の持ち主、相当デカいみたいだからビビらないように」

 この場で先陣を切る皆に巨大亀のことを伝えておかないとな、俺達が慌ててちゃ洒落にならないし。

「デカいって…どんくらいだよ?」

「…分からんけど、デカいとしか」

「何ですかそれは…情報は正確に伝えてもらえませんか」

「いや、だから今は見えないし、どれくらいなのか判断付かないって…」

「何でそんなデカいやつが見えないのー?」

「多分光学迷彩みたいなスキル使って周囲と同化してるからだと思う」

「…どうして君はそんなことが分かるんだい?」

「あー、うん、さっきギルマスに聞いたから。そういうスキルを持った巨大な亀が昔いたんだって」

 スキルのことはアコに教えてもらったんだけどな。
 説明するのも面倒だからちょっとフィルさんのせいにした…心の中でごめんなさい、と。

「亀ですか。通りで襲来も予定通りなわけですね。その亀の速度に合わせて移動してきたのでしょう」

「だろうね。とりあえずいきなり現れても動揺しないように」

「わわ、分かりました」


 ここにいる全員と一言ずつ交わして魔物が来るのを待った。
 森を抜けてくる魔物は徐々に増えてきたけど、勢いはそんなにない。
 ゆっくり進んできてる感じ…やっぱり亀の速度に合わせてるとしか思えないな。
 足音も振動もかなり大きく感じるようになってきて、いよいよそこまで来てるってのがはっきり分かってきた。
 そろそろブチかます準備でもしておくか…。

「弘史、そろそろ出番だぞ」

「そうみたいだな。お前らも準備しとけよ」

「わざわざ言われなくても分かってますよ」

「…相変わらず可愛げがねぇ奴だな。ま、せいぜいド派手なやつ頼むぜ、ちゃんと削れるようなのをな」

「それこそ余計なお世話ですね。人のことより自分のことを気にした方がいいですよ、あなた弱そうですから」

「テメェはホント一言多いな…ハッ、弱いかどうかはその目で見てから言えや」

 俺の隣にいる弘史とその向こう側にいる烈華絢蘭のメンバーの一人、知的系イケメン、確か長門絢久だっけ、そいつとのっけから言い合いしてる…大丈夫なのかホント、これから戦うっていうのに。

「絢久、頼んだよ。僕達の力を見せて、僕達だけで大丈夫だってこと教えてあげないと」

「そうです、所詮は烏合の衆だということを教えて差し上げなさい」

「いつもみたいにババーンってやっちゃえーっ」

 相変わらずの自信で。
 でも頼もしいとか思えないのはホント何でだろう…?謎の不安感。

 ついに魔物全体が森を抜けてきた…けど、こちらに向かってくる気配が全然無い。
 まるで向こうも陣形を整えてるみたいにモゾモゾと動き回ってる。
 知性の無い魔物がそんなこと出来るわけ無いから、やっぱり統率している何者かがいるってのは確実なんだろうな。
 魔王自身は居ないみたいだけど、魔物を統率出来るような能力を持った奴がいるってことか?
 だったらソイツを真っ先に倒した方がいいような気がするんだけど…ちょっと探してみるか。
 アコ、強い魔物上位5体くらい表示出来る?


[………突出した魔物は確認出来ません。フォートレスタートルが最上位です]


 ってことは、亀が司令塔ってこと?そうすると…亀を真っ先に倒した方がいいんだろうけど、それだと他の魔物達全部冒険者と防衛隊に任せなきゃいけなくなるから無理っぽいか…ある程度減らしてからか、殲滅しちゃってからになるよな。

 あれこれ考えてる内に魔物も配置が完了したんだろう、ピタッと動きを止めて何かを待ってるような感じになってた。
 すると、多分亀の仕業だろう、この戦場全体に響き空気が震えるような咆哮を上げた。


「グォォォォォォオオオ!!」


 その咆哮に続いて魔物達が一斉に吠えながら、こちらに勢いよく向かって来た…まるで雪崩か、津波のように。


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